表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/46

桜散花~Eternal cherry blossom

蓬火~old would 第二章


 トモミが御伽の家にやってきて数日が経過していた。

 御伽は小説の締め切りに追われ、ほとんど不眠不休で執筆作業にかかっている。そんな日々がもう三日ほど続いている。トモミを退屈させるのには十分すぎる時間であった。

「ふぁ・・・」

 欠伸をし、どこかに出かけようかと居間のコタツから這い出る。しかし、一度入ってしまえば二度と出られない魔力を持った文明の利器。もう少しだけ、ともう一度その中に入り込んだ。

「文明っていうのは嫌なものね。人間を堕落させてしまうわ」

 ミカンを手に取り、すっかり妖の雰囲気をなくしている彼女はまさしく現代にいる堕落した人間そのものであった。

 幸せそうににっこりと微笑んだ。そして、コタツに突っ伏してそのまま昼寝でもしようとする。四百年の封印から脱出した彼女にはこれ以上ないくらいの幸せだった。

 だがそうして堕落しているのは自分の本来やるべきことではないことを思い出す。人と妖の共存の道を探すのが自分のやるべきことだと思い出し、思い切ってコタツから離れる。

「よし、やるわ、よ・・・」

 しかしコタツの魔力。

「ええい。この私を捕らえようなど無駄よっ!」

 部屋の中は肌寒い。それ故にコタツの魔力はすさまじいのである。

「う、うううう・・・・」

 そしてしばらくして御伽の仕事は終わった。御伽が居間に出ると、コタツはすっかり片付いていた。

「あれ、コタツしまったんですか?」

「ええ。もう必要ないわ」

 もうすぐ春ですもの。トモミはそう言って、いまだ若干の未練があるコタツを想う。首を横に振ってそれを振り払うと、トモミは立ち上がった。

「さて、と。仕事は終わったのでしょう? じゃあ、妖の研究、始めましょうか」




もう一度あの人と、この桜を見たかった

ねえ、どうしてあなたは死んでしまったの?

私は、こんなにもあなたを愛しているのに

どうして、帰ってきてくれないの?

ああ、そうだ

帰ってきてくれないなら、私が逝けばいい

この桜と共に、私も、その世界に参りましょう


ねえ、知ってる?

美しい桜の木の下には、死体が埋まってるって話



 桜散花~Eternal cherry blossom


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ