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第30話 文化祭明けの教室で

 文化祭が終わり、新しい一週間が始まった。月曜日の朝、1年2組の教室は賑やかな笑い声で溢れていた。みんな文化祭の余韻を引きずりながら、思い思いに話題を楽しんでいる。


「昨日の片付け、地味に疲れたけど、めっちゃ楽しかったな!」


「お化け屋敷、大成功だったよね!」


 俺は教科書を広げながらその様子を聞き流していたが、隣の席の榊原がニヤリと笑いながら肩を叩いてきた。


「杉村、お前、文化祭の英雄だな! あの音響の調整、まじで神がかってたぞ。」


「そんな大したことじゃないよ。」


「謙虚だな~。でもさ、次はどうすんだ? 橘と仲良いみたいだけど、好きなの?」


 唐突な質問に俺は固まった。榊原はその反応にさらに笑みを深める。


「マジか、やっぱりそうか! でも気をつけろよ。橘、撃墜王って呼ばれてるからな。告白して成功するやつなんていないって噂だぜ。」


「撃墜王……?」


 紗月にそんな二つ名があるなんて、初めて知った。驚きと同時に、心の中に妙な焦りが生まれる。


「ま、応援してるぜ、杉村。」


 榊原はひらひらと手を振りながら、笑いながら席を立った。俺はなんとも言えない気持ちで、机の上の教科書に視線を戻した。


 昼休み。弁当を持って空き教室に向かうと、紗月と結衣が待っていた。文化祭以来、3人で一緒に昼食を取るのが自然な流れになっている。


「悠人、これ見て!」


 紗月が差し出したのは、文化祭で撮られた写真だった。飾り付けをしているクラスメイトたちの楽しそうな姿が写っている。


「この瞬間、めっちゃ楽しかったよね!」


「ほんとだな。みんな笑顔だし、いい写真だ。」


 二人で写真を見ながら話していると、結衣がニヤリと笑って茶化してきた。


「悠人君、なんか嬉しそうじゃん。紗月との写真だから?」


「別にそんなことないだろ!」


 俺が慌てて否定すると、紗月は結衣の肩を軽く叩いて抗議していた。


「もう、結衣! 変なこと言わないでよ!」


 そんな軽口を交わしながら、弁当を広げると、自然と次の話題が浮かんできた。


「そういえば、そろそろ定期考査だよね。」


 紗月がため息をつきながら言う。


「まだ全然勉強してないんだよね。悠人、ちゃんとやってる?」


「いや、やらなきゃとは思ってるんだけど……。」


 俺が曖昧に答えると、結衣が提案してきた。


「じゃあさ、勉強会しようよ。みんなでやれば効率いいじゃん!」


「それはいいな。どこでやるか考えないとな。」


「放課後にファミレスとかどう? 飲み物も自由だし、気楽にやれるよね。」


 紗月が提案すると、結衣も「それいいね!」と賛同する。俺も自然とその提案に頷いていた。


「じゃあ、日にち決めて連絡するね!」


 紗月が嬉しそうに言う。その笑顔を見て、俺もどこか気持ちが温かくなるのを感じた。


 放課後、教室ではクラスメイトたちが雑談を交わしながら、それぞれの時間を過ごしている。榊原が大きな声で冗談を飛ばし、佐藤がそれに突っ込む様子が微笑ましかった。


「杉村、お前、次の定期考査でいい点取ったら橘に告白するってのはどうだ?」


「勝手に決めるな!」


 榊原の茶化しに、教室中が笑い声に包まれた。そんな日常の光景が、少しずつ心地よく感じられるようになった自分がいる。



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