表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

第4章

しばらく現世でのんびり暮らしていた。新宿の女の子のいる店にも飲みに行ったし、現実に金をかけて、草津温泉にも旅行した。


 確かに本人なわけであるから気分は良いが、別人に転生したって、自分の思うようにできるのだし、それほどの違和感はない。


 僕は図書館に通い始め、今まで殆ど勉強などしてこなかった日本の歴史を調べることにした。次回の転生のテーマを決めるためだ。


 僕は平安時代に目をつけた。でも紫式部とか清少納言とかの時代ではなく、平安時代末期の源平の時代だ。フランスでの戦争の経験があったから、日本の戦の時代でも問題ないだろう。鉄砲も大砲もない時代だから、いざ刀を突きつけられたらば、その場で呪文を唱えればよい。


 僕は源平合戦で活躍した源義経をイメージして呪文を唱えた。いつもの神社にわざわざ行かなくても、新宿の女の子のいるお店でやっても気軽に転生できる。戻って来た時には一時うつらうつらしていたといった感じだったから、お店から転生してもかまわないだろう。


 僕はカウンターで水割りを飲み干してから呪文を唱えた。すると僕は橋の真ん中で、大男から薙刀を振り落とされる瞬間だった。


 やばい。


 僕は瞬時に身を翻し、飛び跳ねて橋の欄干に飛び乗った。そして次の瞬間、その大男めがけて、刀のさおを振り下ろした。


「まいりました」


 その男は僕にひれ伏し、許しを請いた。


「あんまり危ないことは、しちゃ駄目だよ」


 僕は気にかけずその場を去ろうとしたが、その大男が僕の服を引っ張る。


「あなたの子分にしてください」


「子分?」


「きっとあなたは大変身分の高い方なのでしょう。私があなたの傍にいて、あなたのお役に立ちたいと思います」


「はー、そうなの? だったら付いてきたら良い」


 京都の三条大橋での出来事だった。僕は彼の申し出を断ることはせず。勝手に付いてきたら良いと思った。彼の名は弁慶というらしい。その後色々な場面で活躍してくれるみたいだから、ラッキーだった。


 僕は京都の鞍馬寺に住んでいたが、精進料理ばっかりだったので、東北で美味しい魚でも食べたいなと思って、弁慶と共に移り住んだ。山中のお寺だったが、かきやほやなどの珍味を毎日海から届けてくれ、弁慶と共に、ここで一生暮らしても良いね、とか話していた。


 しかし異母兄の頼朝が、平家打倒ということで立ち上がったという情報が届いた。


「兄上のために義経様も立ち上がらないと」


 弁慶が言う。


「まあ、憎い平家が相手だから、やるか」


 僕は兄に加勢することに決めた。そして南下して、すぐに京都に入ることが出来た。


「簡単じゃない」


 僕は弁慶と乾杯した。


 しかしあの憎い平家の奴らを掃討するために、僕は更に西へと進軍した。兵庫の鵯越では意表を突いた戦法で、平家の軍隊を壊滅する。


 フランスでの経験があったから、源平合戦程度の戦くらいなら、掌で転がすことができた。


 大砲も鉄砲もない突撃線だから、弓矢が一番効果的な武器だろう。


「与一君、あの船に乗っている女性の扇を打ち抜いてくれ」


 勝ち続けた戦の最終版、山口県の壇ノ浦で船で逃げようとしている女性が、降参のつもりなのか、扇を広げて振っている」


「はい、分かりました」


 那須与一は、彼女が降っている扇めがけて弓を話し、見事扇に的中した。しかし扇が顔の真ん中に重なっていたので、扇を振っていた彼女は絶命した。


「あー」


 隣の女性が悲鳴を上げる。一その女性は、平清盛の娘だった。


 清盛の娘は、さすがに天皇に気に入られるほど美しかった。あのマリー・アントワネットのことを思い出しながら、僕は彼女を京都まで引き連れ、大原の寺院まで送った。


 しかし転生して源義経になっているのに、なんでその数百年後のフランスのマリー・アントワネットが意識できるのだろう。僕はこの転生のシステムに、大きな疑問を抱いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ