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最終章

僕は居間に戻ってくつろいでいたのだけれども、やっぱりあの戦争を終わらせることが出来なかったことを反省していた。彼が辞めれば終わるだろう、といった単純な話ではなかったことを思い知らされた。


 ではもう一つ、中東でやっている戦争で、何とか貢献できないだろうかと思った。もう僕の意識は国際ボランティアだった。どうしたら人道状況が改善されるのか、どうすれば食料や医療が行き届くのかといった課題に解決する道筋を付けたいと思った。


 しかし前の経験で、攻撃している側のトップに転生しても、上手くいかないことを学んだ。


結局様々な事情で、現状を続けなければいけないのだろう。ならば攻撃を受けているテロ組織と言われているメンバーのトップに転生したとしても、一緒だろう。だったら、そもそもその背景にある宗教的対立を消滅させることで解消できるのなら、紀元前の教祖にまで転生すれば良いのかとも考えたが、タイムマシンの法則では、過去にさかのぼっても現在には影響がないわけだから、やっぱり現状は解決できない。

せっかくこの呪文を覚えたのだが、何て無力なんだろうと僕は思った。


「でも……」


 現状は変えられないと考えていたが、バブルの頃に株取引をして、僕の通帳には数千万円の残高が積みあがっていたではないか。


「これは矛盾している。だったら何か方法があるに違いない」


 それで考え着いたのは、世界の歴史は変えられないが、自分自身の現状とか未来は変えることが出来るのかもしれないということだった。自分自身の現状とか未来を変えることであの戦争を終わらせるには、何かやり方があるかもしれない。


 そう考えて、これは最早呪文の世界ではないことに気付いた。


 現生の僕が変わっていって、そして何か行動を起こしていけば、未来は変えることが出来る。そんな当たり前のことを、今まで転生とかで誤魔化してきた自分が情けなくなった。


 でも何かをしなければいけないんだろう。


 そう思っていた時、わずかな地震の揺れを感じた。


 震度2くらいの揺れだったから大したことは無いと思ったがテレビをつけてみると、ある地方では震度7と速報されていた。震度7と言えば、阪神淡路大震災や東北での大震災に匹敵する規模だ。


 僕はテレビを見続けた。すぐさま火事の映像が飛び込んでくる。すさまじい災害の映像が次々と報じられてきた。


 僕は翌日、ファミレスの職場の上司に炊き出しのボランティアの提案を思い切って提案し、本社でもその提案が了承され、僕がリーダーとなって実現した。


 僕は転生するのではなく、現生のまま被災地に入り、持ち込んだ食材で避難所の方々に温かい食事を提供することが出来た。


「ありがとうね」


 お年寄りの言葉に、僕は今まで何をしてきたのかと、思わざるを得なかった。


 これからの未来を変えるには、過去や他人に転生するのではなく、結局自分自身が変われなければいけないという当たり前のことに、ようやく気付いたのだった。


 僕はそれから呪文を封印し、現生で真面目に過ごすことにした。妻とも大切な時を過ごし、子どももすくすくと成長している。被災地でのボランティア活動の実施で僕の会社内での評価も高まり、最早転生する必要もなくなっていた。


 しかし時々、平成時代の女性アイドルに転生し、ペンライトを振りかざしながらキャーキャーともてはやされるのは、やっぱりやめられないかな……。


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― 新着の感想 ―
[一言] あらゆる状況を描き、読者に主人公の追体験をさせるのは得意技ですね。 今作も普段の日常では到底あり得ない経験を、これでもかと言わんばかりに味わわせてくれます。 私のような凡人には思いもつかな…
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