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第03話、港町

「新しい世界、新しい自己。変革の瞬間こそ、真の成長が待っている」 ~ダ・ヴィンチ

海の色は深い青、空もその青さを受け継いで絶え間なく広がっていた。陽の光が、静谧海せいひつかいの美しい港町、ポートマルテの白壁に反射し、街全体を金色に染め上げる。遠くの碇を下ろした船々が、風に吹かれて揺れ動く姿は、まるで子供たちの歌声のように、生き生きとしていた。


この美しい町には、人魚の噴水で有名な中央公園がある。

その公園から8方向に街道が伸びており、そのうち南西に向かう道沿いに、代々続く老舗の本屋「知識の泉」が立っている。白壁と青い屋根、店の前には常に新しい書物の香りが溢れ出していた。


カウンターの中には、アレーセイア・エアグナが座っていた。彼は積まれた本の中から1冊を取り出して、読んでいた。その横を、学校の帽子を取ったばかりのフィオスが入ってきた。


「父さん、僕の注文していた本はもう入荷した?」フィオスはわくわくしながらカウンターを覗き込む。


アレーセイアは微笑みながら答える。「まだ入荷していないよ。アダル海に海竜が出没しているとの話だ。西方からの船便は遅れているみたいだ」


フィオスは少し肩を落としたが、すぐに元気な顔を見せる。「それは仕方ないね」


アレーセイアは彼の頭をなでながら言った。「それより、フィオス。忘れていないだろうな?今度の日曜日はお前の儀式の日だ」


フィオスの目がキラリと光った。新しい本への興奮もさることながら、彼の心はこれからの儀式にわくわくしていた。


アラスディア王国には古くから伝わる、特別な儀式が存在する。それは、各家庭の子どもたちが15歳の歳を迎える聖クリスのクリスのミサに行われる「ギフトの儀式」である。


この儀式は、アラスディア王国の全ての教会で行われ、王国全体がこの日をとても特別なものとして祝福する。子どもたちが成人の一歩手前となるこの日、彼らは神からの特別なギフトを受け取るとされている。このギフトは、彼らのこれからの人生での役割や才能を示唆するものであり、多くの家族や友人が、その瞬間を楽しみに待つ。


しかし、ギフトの儀式には一つの大きな謎がある。すなわち、誰がどのようなギフトを受け取るかは、まったく予測することができないのだ。伝承によれば、素行が悪い子どもたちはギフトを受け取れないとも言われているが、実際にはその基準が何であるのか、誰にもわからない。神の意志とされるこの儀式は、公正であると同時に、その深淵を知る者はいない。


ギフトを受け取った子どもたちは、そのギフトによって新たな才能や能力を発見することが多い。ある子どもは音楽の才能を開花させ、別の子どもは学問に秀でるようになる。このギフトは、彼らの人生の方向性を大きく左右するものとなる。



ギフトの儀式は、アラスディア王国の文化や伝統の中で非常に大切なものとされている。この日は、新たな才能や未来を持った若者たちが、王国の中で一歩前進する日として、多くの人々にとって大切な瞬間となるのである。


フィオスは、心の中で自分が受け取るギフトについて夢想していた。

エアグナ家の代々書籍関連のギフトを授けられてきた。


記憶の巻物:

このギフトを受け取った者は、読んだ書籍や文章の内容を一度で完璧に記憶する能力を持つ。


言語の石筆:

あらゆる言語を理解し、それを書き記す能力。古今東西の言語、そして消失した言語さえも読み書きできる。


書の守護者:

書籍や文書を劣化や損傷から守る力。また、失われた文献や書物を見つけ出す直感を持つ。


物語の継承者:

あらゆる物語や伝承を心に受け継ぎ、その物語を最も効果的に伝える方法を知る能力。


知識の触媒:

書籍や文書から知識や情報を直接吸収し、それを具現化させる力。例えば、本に書かれた魔法や技術を即座に実践できる。


編纂の魔手:

あらゆる情報や知識を瞬時に整理し、新たな書籍や文献としてまとめ上げる能力。


心の図書館:

心の中に無限の書庫を持ち、そこに読んだ書籍や得た知識を保存し、必要な時に引き出すことができる。


フィオスの父アレーセイアも「書の守護者」のギフトを授かっていた。

母フロネーシスは「本の虫」文字通り本を愛する心を物語るものだった。

彼女は常に新しい本を読んでおり、その情熱はフィオスにも強く影響を与えていた。フィオスは母のように、ただ本を愛するという純粋な心で、多くの知識や物語に触れたいと願っていた。


「もちろん、家族が持っているギフトも素晴らしい。でも、僕は何になるのだろう?」

と彼は思いを2階へ上がっていくのであった。

*静谧海=広大な内海、地中海をイメージしてください

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