第02話、選択
「運命の岐路に立ち心の声に耳を傾けよ それが真の進むべき道を示してくれる」 ~ コンフュシウス
意識がぼんやりとした中、彼は徐々に目を開けた。目の前に広がるのは、果てしなく続く白い空間。何もない無機質な場所で、彼はただ中央に立っていた。
「ここは…どこ?」
彼は声を上げてみたが、その声は白い空間に吸い込まれるように消えていった。
彼はゆっくりと周りを見渡し、自分の立っている場所を確認しようとした。しかし、どこまで行っても壁や出口は見当たらない。完全な無の空間に、彼だけが存在している。
しばらくすると、遠くから微かな声が聞こえてきた。声は徐々に大きくなり、明瞭に彼の耳に届く。
「ようこそ、地球の賢者よ」
驚きのあまり彼は振り返る。しかし、声の主はどこにも見当たらない。
「私はこの空間の管理者であり、君が次に進むべき場所への案内人でもある」
彼は混乱しながらも、声に応える。
「次に進むべき場所…? ここはどこですか?」
「君が進むための中継地点。この空間は、君の過去と未来、そして真実を近づけるための場所」
彼はその言葉に驚き、自分の置かれている状況を理解し始める。死んだはずの彼が、なぜここにいるのか。そして、この白い空間が彼に何を伝えようとしているのか。
彼は、その声の持ち主の顔を見ることができなかった。だが、その声は落ち着き払っており、古の知識や経験を感じさせるものだった。
「神さまですか?」
彼は探るような声で問いかけた。
「上位存在であるが、神ではない」
とその声は答える。
彼は少し考え込んだ。このような状況、そしてこのような存在に会ったのは彼にとって初めてのことだった。
「君には2つの選択肢がある」
声は続けた。
「君は十分に知識を得た。一般的な地球人の寿命に換算すれば1500年分になる、さらなる知識を追求したいのか? それとも我々のような上位存在として、この空間で守護者となるか」
彼はしばらく黙り込んだ。自分の知識や経験を生かして新たな世界を探索することの魅力。一方、上位存在としての力や能力を持つことの誘惑。彼はこの2つの選択肢の間で揺れ動いていた。
「私は知識を追求する旅人であり続けたい」
彼は決意を固めるように答えた。
「新たな世界を探索し、その知識をさらに深めること。それが私の真の願いだ」
「それであれば、新たな世界への扉を開く」
声は言った。
「君に転生をさせるが、今さら赤ちゃんとしての経験はつらいだろう」
彼は一瞬、その意味を理解できなかった。しかし、次第に、彼には新たな人生、新たな家族、そして新たな運命が待っていることを理解する。
「君のこれまでの記憶は、新しい生命としての成長と経験を邪魔しないよう、魂の奥底に封じておく」
と上位存在は続けた。
「転生先の世界で君が15歳になる年に、特別なイニシエーションが行われる。その時『賢者』としてのギフトとともに、君の今の記憶も統合されることとなる」
彼はその言葉を受け入れ、新たな世界での彼の人生がどのように展開するのかを期待していた。新しい家族、友人、そして冒険。彼はそれらすべてを経験する。
そしてその日が来ると彼の中に眠っていた『賢者』のギフトと、彼の今世の記憶が蘇るだろう。