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VGOO(ボーゴ)〜嘘の導く並行世界渡航〜  作者: 喫痄
流転・赤月颯季編
45/59

#5 蛇の尾

【前回までのあらすじ】

VR空間「イカロス」へ招集された7人は、「サク」を名乗る人物の開催するゲームに参加する。それは容姿をはじめとした個人情報を偽って参加している3人を的中させるというものだった。

2回目の指名で、颯季と同じアイドルグループに所属し対立していた夜宵埜未の正体が彼女の友人・大原星莉によるなりすましと「サク」により明かされる。

現実世界での猶予時間にて、颯季達は鯨井佳蘭の提案で通話によって互いの姿を確認する約束を取り付ける。しかし、颯季が実際に通話できた相手は佳蘭のみで、他の3人とは連絡が付かなかった。そしてその後、「ABY」には佳蘭の訃報が駆け巡る。


【ルール】

・最初の持ち点は120点。最大4回の指名ののち、最終的な獲得点数が最も高い者を勝者とする。勝者は当代から「サク」の称号と情報収集術を継承し、敗者は事前に入手されているスキャンダルを「サク」によって公開される。

・指名の際は指名人が持ち点の半分を失う。被指名人が偽物であることを的中させた場合は失った分が返還されると同時に、被指名人の持ち点から半分を獲得できる。指名は全体で1回のみ失敗が許されている。

・予想人は指名が成功か失敗かを予想する。指名成功を正解すれば正解者の中で被指名人の持ち点から半分が分配される。指名失敗を正解した場合は、指名人の支払った半分の持ち点が被指名人と正解者とで分配される。

「……さて」


 空席こそあるが、椅子の円状に囲まれた光景に変化はない。

 自身を除く3人の着席している周囲を見渡して、(ふき)()は一度首を捻った。


(くじら)()佳蘭(から)は現れていない。

 前提として、『ABY(アビー)』に流れる情報がさほど信用できるとも思えない。でも、彼女自身は作曲家としても“情報屋”としてもあくまで狭い世間で名前が知られている程度。同一の情報が相当な物量をもって、本来接点のない私達のタイムラインにまで届くという今回の事態……普通のフェイクニュースと切り捨てられるものではなさそうですね」


「あの、『サク』は召集に来なかった人は失格にするって言ってましたよね。今回の場合は――」


 すると、「サク」のモデルが仮想空間上に姿を現す。


「その点について、現在は公平性のためそれ以上の言及はできない。真相が不慮の事故であったとして、それすらも不参加と見做して処分の対象とするほど私も理不尽ではない」


「現実で『鯨井佳蘭』が生きているか死んでいるか以前に、ここに現れたのがその本物だったかどうかも分からない。問題はさらに複雑になったということ」


「仮に鯨井さんがなりすましをせず本当に死んでいたなら、当然この場には来られない。ただこの線が生きている以上、鯨井さんは生存していても易々とこの場所に来るわけにはいかないってことだよね」


 今回の情報が真実だとしても、仮想空間上の佳蘭は生きている可能性はある。いずれにしても、この情報を背景にして仮想空間に現れれば、佳蘭がなりすましを疑われるのは間違いない。


「そうだ……!今回の件、彼女が故意に“取材部”経由で『ABY』へ拡散させたってことじゃありません?」


 口を開いたのは(いわ)()(けん)()


「それは、どうして?」


 応じたのは吹田。ただ彼が率先して議論に参加したのは初めてだったからだろうか、(さつ)()にはその態度から疑念のようなものが窺えた気がした。


「当然、この方法を取れるのが彼女だけだからというのがひとつ。自分はあの人のことを知らなかったし、みんなもそうでしたよね?このご時世、そんな今まで縁の無かった人が死んだって話が耳に届くのも変な気がします。あとは昨日、『サク』が追って通知してきた追加ルール!」


「追加ルール?ああ、人数が減って指名回数も最大2回になっているので、ゲーム性のために変更する必要があるという話でしたよね」


 「サク」の提示したルールはいくつかあったが、まずはスケジュールについて。

 指名が失敗した場合はインターバルを設けずそのまま次の指名人を出すということで、何があっても本日のうちにゲームは終了する。

 そして指名人が順調になりすましを当てている今、指名人になることが勝利する上での絶対条件となっているため、最大でも2人しか存在できないその枠を争うことで議論が膠着することが見込まれる。

 そこで追加されたのが、もし今回の指名が失敗し4回目の指名へ突入する場合のルール。その場合は予想制度が撤廃されるとともに、全員が指名人となる。各々重複は避けて誰か1人を指名して正解者がその対象の得点の半分を得るが、そのほかの参加者が失点することはないというものだ。

 なお、最終の指名前に勝機を完全に断たれる者が出る可能性はあるが、これはそういった下位の参加者に対する救済措置ではないとのこと。その際は最終の指名がある前にゲームから脱落し、それがなりすましであった場合はゲームが打ち切られる。もし上位得点者の指名を成功させる場合にのみ勝利の可能性が残されている場合、その対象者への指名の優先権を他の参加者全員へ譲渡する――つまり、余り物を引かざるを得ないといった措置も追加された。


「このルールがある以上、彼女は首位だからといってゲームを静観できなくなった」


「なるほど。じゃあ、鯨井さんは自分に指名が来ることでも得点を得られる本物だ、ということですか?」


「それは……まだ分からないけど、自分的には本物寄りに見てます」


「ちなみにだけどイカロスには、この所謂メタバース空間へと直接関与することなく、それを客観的に観戦する機能が備わってる。ここはプライベート設定のされた空間だけど参加者の彼女にアクセス権はあるし、『サク』の『イカロスと組んでない』って話が本当なら、話し合いの動向は監視できる状況」

 

「まあ状況だけ見れば、わざと行方を晦ますメリットがない気はしますね」


 吹田が言う。


「もし彼女がなりすましだとしたら、残りの参加者の中に誰もなりすましがいないことを知っていることになる。

 目立った動きをして指名されるリスクを上げておいて、指名さえ逃れれば確実に得点できる予想のチャンスをみすみす見逃す意味は薄いと思います」


 これに対しては、颯季が自ら異を唱える。


「でも裏を返せば、なりすましにとって既に自力で大量の得点を得る機会はないってことですよね?できることと言えば、ミスリードでライバルの失点を狙うことくらいです。

 もしかしたら、鯨井さんがなりすましで、今回は体良く参加を放棄したかったのかも。もしそうなら、吹田さんと首位を僅差で争う今、不正解が分かり切っている指名に対して積極的なふりをしないといけない。その動きがどうしても怪しまれると考えた、とか……」


「だったら、ニュースを流した上でこの場に来ればよかったはず。自分自身が本物ならそれ自体がメリットになるし、話し合いの中で直接誘導ができる」


 惺の言葉に、吹田が頷く。


「同意です、久保田(くぼた)さん。岩見さんはああ言いましたけど、やはり本物があえてフェイクニュースを流した線は低いように思います。当然、それを踏まえた本物による仕掛けという可能性も否定はできないけど」


「本当に鯨井さんが死んでいて、物理的にこの場に来れないのか。ここに現れたのが偽物で、本当のアクシデント、あるいは鯨井さん自らの仕掛けで情報が流れたからこの場に来ないのか……」


 思案する颯季だが、先ほどから視線を強く感じていた。

 それを放っていた吹田は颯季から意識されたことに気が付いたのか、ふと緊張を緩め、ひとつの質問で睥睨の代わりとした。

 

「赤月さん。君はさっき、彼女をなりすましと疑ったような言い方だったけど」


「確かに、鯨井さんがなりすましだったんじゃないかとも考えてしまいます。というか、今の選択肢の中に真実があるのなら、“本当に死んでる”なんて現実味が湧かないのもありますけど……」


「分かった――」


 そう答えた直後、吹田はその指を颯季に向かって突き立てた。


「僕は君を指名することにしよう、赤月(あかつき)颯季」


「え……!?」


 こう告げられるのは2度目だが、颯季はやはり意表を突かれていた。


「悪いけど早い者勝ちだ。言うまでもなく鯨井佳蘭なんかも怪しいから、そっちに行きたければその意思を示せばいい。でも、後出しで赤月さんを指名するのはダメですよ。

 ……ね、久保田さん」


 惺の方を一瞥すると、彼女が吹田の方を睨んでいることに気付く。

 ――惺まで、鯨井さんの話をしながら私のことを?


「あの、どうして私を指名するんですか?」


「意外なことかな?最初に話した時点で、君が嘘を吐いたのを僕は見ています。そして昨日の久保田さんの証言はまだ生きている。未だ、現実世界での君は誰からも目撃されていないんだよ」


「そんなの、今回は鯨井さん以外連絡しなかったからでしょう!」


「僕が指名しているのに、どうして僕に対してそんな嘘の吐き方をするんですか?信用を落とすだけだと思うんだけど」


 どちらにしろ予想人の動きは牽制しようがない終盤なので、颯季からすれば全く同じ感想を抱く。

 ――どうして私に嘘を言う必要があるの?――と。


「……まあいいです。それなら、私は誰も指名しなくて済みます。ここで貴方が間違ったら確実に点が入りますから」


「へえ。そんなことを言ったって、駆け引きの言葉を聞き入れるつもりはないよ」


 「なりすましには、もう指名できる参加者がいない」。それを確認した上で、吹田のこの宣言は自らへの疑いを逸らす行為に他ならないが、これはその作戦の一環と捉えられるのではないか?

 しかし、惺と岩見の2人が多少の沈黙を経ても一向にそれを破ろうとしないことから、今その疑惑へ目を向ける意味がないことは明らかだ。

 ここで勝負が決する可能性すらあるにも関わらず、2人は対抗して勝負をかけようとしない――恐らくは、失敗が許されている状況の今、この指名についての結論なしに勝負ができないという“確信”があるということだろう。

 

 しかし、それはあまりにも妙だ。


 

「異論がないようであれば、指名に移らせてもらおう」


「サク」が姿を見せて、前回までと同様の投票へと移る。


 しかし、この期に及んでこの予想で意表の突かれるような結果は訪れない。


「予想では、2人とも“赤月颯季は本物”、と」


 これは純粋な推理ではない。ここで吹田が正解するようならば彼の勝利で幕は閉じられるだけなので、彼が不正解の場合に利を得ようというだけの動きだ。


「なお鯨井佳蘭については公平性を重んじ、結果如何を問わず予想を不正解とする。したがって、この回の得点に変動はない」



「では、発表に移ろう。『キラキラ研究所』所属、赤月颯季は――」


 一息吐いて、彼女は目を閉じる。

 


「『アラクネスキン』を使用していない。吹田(ゆい)()のベットした得点はそのまま剥奪とする」


「何だって……!?」


 吹田は立ち上がった。拳には思わず力が入っているらしい。


 颯季は何も語らない。

 当然「サク」の言う通り、颯季に「アラクネスキン」で他人になりすました覚えはなかった。ゲーム上、願ってもみない幸運で得点を伸ばすことに成功したことになる。

 今回釈然としないのはどちらかというと周囲の動きだったが、これに対する反応もやはり複雑に見て取れた。特に惺は――勝利の目が繋がったことに対する安堵が最も大きいことに変わりはないようだが――無表情な彼女にして、動揺があることを彼女自身隠そうともしていない。

 まるで、“現実世界で会っていない”という昨日の証言が真実を語っていたかのように。


 やがて、「サク」が全員の目の前へ、更新後の得点表を表示させる。

 首位は変わらず、鯨井佳蘭の215ポイント。

 意外にもそれに続くのが、ここまで外さずに正解の分配点を得ている岩見絢吾で、206ポイント。

 その次に赤月颯季が位置し、171ポイント。

 久保田(オウ)(しずか)が、151ポイント。

 今回指名を失敗させた吹田惟都は、最下位の95ポイントまでに落ち込んだ。


「事前に通達した通り、ここからは変更後のルールを適用する。今回の場合、久保田王惺は吹田惟都、吹田惟都は鯨井佳蘭以外の全員が、これから指名対象として的中させたところで勝利条件を達成できない。よってこれらを避けた動きから意中の指名が重複すると思われるが、その場合は高得点者に優先権がある」


「ふ、それなら事実上僕は敗北確定ってことだな。鯨井さんがいつ現れるか分からないし、捲るなら今だと思ったんだけど……」


 吹田はその場で項垂れて、彼女が昨日まで座っていた席へと目をやる。


「結局、鯨井佳蘭はまだ現れる気配もない。功を焦りすぎたかな」


「まさか、本当に死んだんですかね……」


「なんなら、今回のゲームが動機となって起きた他殺という可能性も頭にいれるべき。妙に情報が流れ過ぎているところも、その犯人による戦略上の工作と言っても説明がつく」


「そんな、そんなはずないよ!」


 惺の発言の意味を理解してから、自身の言葉が口を衝いて出るまで――今回に限っては、ここまでの意識的な逡巡はなかった。


「……颯季?」


「吹田さん、貴方に謝るつもりはないけど……多分、私が鯨井さんのことを偽物っぽく言うのが疑わしく見えたんでしょう?

 確かにそうです。でもそれって、ただあの人が死んでるだなんて話を受け入れたくなかったってだけで……」


「……そこまで悲観してくてもいい」


 怪訝そうな表情からして、佳蘭に肩を叩かれた惺も少なからず理解を示しているようだ。

 その胸中が颯季と同じならば、あのときの佳蘭に感じられたのは、彼女の心からのやるせなさ。“誠意”にすら感じられたそれを他人である2人に向けた彼女については、惺もどんな形であれ信用したい考えを捨て去れないのだろう。


「颯季が自分で言ってたことだって一理あると思う。まだ、フェイクニュースの可能性が高いはず」


「でも他殺のことを考えたら、その可能性が少し低くなった気がするから」


「何故?」


「だって、あの人は『サク』からルールが伝えられた後で私達と連絡を取ったでしょ?自分を死んだと見せかけたいのなら、この情報が流れたことを受けて動いたと思われないように、そもそも連絡はしないでおこうって考えるだろうなって」


「……何を言ってるの?あの人、通話したのは『サク』がルールを伝えてくる前だった」


「え?」


 颯季は周囲に確認を任せるが、吹田も岩見も頷いている。


「その通りです、そもそも追加ルールというのは岩見さんが言い出しただけの要素。僕達はそれ抜きでも多かれ少なかれ、彼女の工作を疑わざるを得なくなった。さっきの議論からそういう認識でしたけど」


 吹田には意気消沈を取り繕って隠す気力もないように窺えるが、淡々と話を続ける。


「それはひょっとすると初めから――情報収集力で僕がリードしていると見て、競争の指針をずらすために通話の約束をしたというのが――彼女によるミスリードだったのでは、と。本当は“自分自身のことを知っている”という、全員共通にして唯一の証拠の中から、自分の情報の分だけをゲームへ強く反映させ、参加者に対するアドバンテージに仕立て上げる作戦だったのでは、とね」



 やはり、何かがおかしい。


「鯨井佳蘭は、颯季に対してだけは時間を空けて連絡した。事実なら、確かに颯季の言ってることにも一理ある。確定とは言わないけど」


「鯨井佳蘭を殺した人物……。そうか、本人の居場所を知らないといけないから、それなりの情報が必要ですよね?となると、吹田さんがやったとか……!?」


「ど、どうしてそうなるんだ?もう僕は負けてるし、今に分かる間違いをとやかく言うつもりはありませんが……流石に人殺し呼ばわりは見過ごせませんね。

 普通に考えたらその場合は岩見さん、貴方か久保田さんかのどちらかでしょ。僕はさっき挑戦して、こうして玉砕してますから」


「それが想定外ならどうです?吹田惟都、いや、その中身がどれだけキズモノになったところで、2代目『サク』へと更に成り代われば、新たな自分に傷を持ち越すことはない。もしかして、今の“吹田惟都”だって、似たような経緯でその姿になっているのかも」


「じゃあ、貴方は僕を指名するんですか?基本的に貴方と赤月さんが決断しないと、僕と久保田さんは動けませんけど」


「え?えーっと、それはまあ……」


 苦笑いで頭を掻く岩見を見て、吹田は嘆息する。


「いい加減、自分で決めたらどうですかね。久保田さんも一応前に名乗り出てはいるし、今何もしてないのは貴方だけですよ。今は頼みの鯨井さんもいないんだから」


 吹田が意欲的でなくなった影響か、眼前で繰り広げられる協議は口論に近いものへと生産性を失っていく。

 しかし颯季はそれらの会話には耳も傾けず、ただ昨日の記憶へと意識を向けていた。


『疑うんだ』


 何故かふと思い起こされた佳蘭の言葉が動悸となって、胸を直接打っているような気がした。

 自分を最後まで疑ったら、何が残る?

 惺の言うこと、吹田の言うこと、岩見の言うこと。全てを信じてみてその共存を許したとき、導かれる真実とは何か?

 

 

 そこで、颯季は初めて自覚する。

 “これ”は、本当に動悸なのだろうか?

 確かに、この感覚が見知った“動悸”の感覚そのものであり、記憶は自分自身のものとして持っている。そして、そうあることを知っている。

 しかし、たった今の自身の体験はそれを否定していた。身体の内側のことは感覚で推し量ることしかできないが、それらは、あくまで状況に対する反応。相対的かつ、原因の要素を切り離せない不可逆なものだ。

 つまり、見知っていることこそが問題だった。今の感覚は、そういった記憶に基づいたものを“再生”しているに過ぎないということだから。

 

 

「じゃあ、最初は私から指名してもいいですか」


 颯季は一言だけ発して、周囲に静寂を与える。


「私は、鯨井佳蘭さんを『アラクネスキン』の使用者だと考えます」


「それはどうして――いや、聞く必要はもうないけど。やっぱり、彼女が死んでいないって?」


「そう……だね。でも、そういうことじゃなくて。

 私は今回の参加者の中で、一貫して証言に信用の置けない人の意見を退けて考えただけ。

 それは、『私自身』」


 これを口にしたところで、その場にいる3人のうちの誰からも納得の表情は得られていない。


「赤月さんが?まあ客観的に見たら、結構同意できる意見だけど。

 でも、それが本当かどうかを知っているのは赤月さん自身でしょ?まさか、皆を撹乱する為に嘘を吐いていたってこと?」

 

「私は嘘を吐けません。じゃあ、見たまま聞いたままを話していた私が、『偽物』だったら?」


「意味がわからない。颯季が『アラクネスキン』を使っていないのは、『サク』がもう明言したはず」


「そうだね。じゃあ、『アラクネスキン』じゃなかったら?

 ……確かに、惺達にこの違和感は伝わらないと思う。私自身だけが知っているこの能力だけは、ずっとその答えを教えてくれていたから――私という存在が本来許されている領域を」


 颯季は弱々しく微笑む。


「さっき漸く自覚できた。

 多分、私だけは偽物の世界の住人。皆から見て、この()()()()()()()()()()()()()()の、作られた存在。

 つまり自分そのものが、全部偽物だった。

 ……って言ったら、どう思うんだろうね。今も行方不明の『颯季』は。そして、星莉(せり)は」


 その時、円の中心から出現する1人に、全員の視線が集まる。


「逆だよ。疑った先に自分の姿が見えたと思うなら、そこが本物に近付く第一歩。

 ……ああ。まだまだ道の途中の、私の言葉じゃ励ましにはならないかな?」

 

 鯨井佳蘭だ。

【現在の得点】

赤月颯季  171

久保田王惺 151

夜宵埜未  失格

吹田惟都  95

岩見絢吾  206

鯨井佳蘭  215

渥美駆真  失格

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