#17 朗読劇「奏楽少女」3(媚態の悪魔)
【前回までのあらすじ】
“情報屋”サークル「メフィスト」による朗読劇の開催前、ノアは乙丸に対してその真の目的を語る。それは、「ノアの能力を利用し白紙の過去を手に入れた涼霜劉の存在を劇中で語ることで、彼を意味のある存在として改めて世間に晒す。それによって劉をノアの過去改変で直接操作できる対象へと追い詰める」というものだった。
そしてついに大学の教室で朗読劇は開幕するが、客席に劉とその配下である涼霜壮、協力者の徐羅寧までもが姿を見せる。
彼らは主演の未良のアドリブで当初の目的が達成されかけたところで行動を起こした。劉が壮を射殺し、過去改変能力「フレイム」でかつての姿・声優の吉木沙李奈として乱入させたのだ。
これを受けてノアはすぐにキャンパスを出て“般若街”アジトへ移動。ノアは居合わせている乙丸が自分の嘘によって変化し、劉の過去改変能力「フレイム」を喰らった彼の部下として翻意していることも事前に見抜いていた。ノアは「サク」としての状況を打開するSNS投稿を行うが、この際改変の対象となっている乙丸は退出を拒否。これにより乙丸は以前の状態に戻らず、引き続き劉に従うことを選択した。
朗読劇における自分の出演シーンも迫る中、ノアは急いでアジトを飛び出してキャンパスへと引き返す。
「ちょっと、2人とも……!」
未良は主人公「ハナ」として、目の前で繰り広げられる夫婦の口論に狼狽する演技を続けていた。
『俺はお前の為に生きるのではないし、お前も俺の為に生きるのではない』
未良はその一言からノアの意図を理解して朗読劇へ臨んでいた。
今回の未良の役割は、その後「サク」のアカウントから受け取ったDMの通り。目的については、「劇中で劉の存在を示唆することができれば、彼を嘘による改変の対象へと追い詰めることができるだろう」と記されていた。
今度のシーンは主人公である未良のほかに陸朗ときりかが登場しており、このうち陸朗が未良の“アドリブ”を妨害する劉の内通者である。
ノアはDMで乙丸のことにも触れていたが、そもそも伝達手段が従来通りの会談ではなかった時点で、未良は内容を読む以前から「乙丸が味方ではないこと」の予見は自ずとできていた。
ノアはキャンパス内で今回の会場を確保するにあたり、「乙丸へ『指示書』の通りに検討を命じた」という嘘を吐いたという。
乙丸にはその直前から疑念を抱いたということで、彼に覚えのないであろう情報を提示した。これを鵜呑みにするか否かで「フレイム」の記憶障害を患っているかを検証し、それが確信に至った要因だとDMには記されていた。
ただ、これらは今回未良が舞台上で考慮すべき事項、として伝えられていることだ。
少なくとも「ABY」から劇のネット配信を始める上で頼んだのが真琴であったあたり、劇の始まる段階で未だに乙丸への対処が済んでいないことは分かる。しかし実際にノアがどういった用意をしているか、そこまでは未良も聞かされていない。
『……私の演技、見ていてくださいね。ノアくんはどうでもいいと思っているかもしれないけど、私はこの劇で役者として、自分のできること全部ぶつけます。来ている人皆を圧倒して見せます』
つまり未良による開演直前のその言葉は、ノアが応えられないことも想定してなお、敢えて口にしたもの。
本気で放った、初めての図々しい要求だった。
「もういい、愛想も尽きたみたい。私たち、ここまでかもね」
ショウコがそれまでの怒声を収めて、ふと呟く。
「フン、勝手にしろよ」
タクミは吐き捨てるように返答した。
この流れで2人の絶縁が決定づけられれば、このシーンは予定通りに終了する。しかし、次のシーンには登場するノアが未だ舞台の脇へ姿を現していないことと、同じく登場する真琴がいつにも増して苛立った表情でいることを未良は横目に見て知っていた。
次のシーンでは、陸朗も壇上にいる。ノアが舞台上から直接働きかけるタイミングが一番の好機であることは間違いなく、劉側もそれを重々承知している。ノアがいなければ、どうにか不在のまま劇を進行しようと陸朗がアドリブを強行する可能性が高いということだ。それを避けるため、ここではとにかく今のシーンのまま時間を稼ぐことが必要だった。
そして、その上で最大の障害になるのが現在舞台裏に控えている客演の1人、「吉木沙李奈」だ。
未良の認識している限り、彼女は囀きりかと同様にサークル外から劇に参加している客演。今回の争いとは無関係のはずだった。
しかし先ほどのシーンを振り返ってみても、彼女が無理矢理にでも未良の勝手なアドリブを妨害しているのは明らかだ。この吉木についても、劉によって仕込まれた敵であって、自分自身の記憶は「フレイム」の効果で辻褄合わせされたものだと見做していいだろう。
――それなら。
「あの、ちょっといいですか!?」
これから絶縁へと向かっていくのみだったタクミとショウコの口論を遮る形で、ハナは叫んだ。
ノアはその様子を配信で確認しつつ、キャンパスへと車で向かっていた。
「なるほど。考えたな、未良」
ノアも元の台本を完全に記憶できているわけではないが、その展開の変化が未良の思いつきであることは明らかだった。
それは車内モニターから再生している配信の映像からも視覚的に伝わるものだった――先ほどは壇上にいなかったはずの吉木が、わざわざ登壇して再出演しているのだ。
「な、何かなハナ」
「私の入ろうと思ってる芸能事務所の2人、ショウコさんとタクミさんだよ。ものすごい夫婦喧嘩になったから、仲裁してほしいの。私はこの事務所がダメになると困る立場だから、客観的な意見は言えないでしょ?」
マイに対して、ハナは得意げな笑顔で応じる。
吉木がそれまで演出に回っていたことは確かだが、今度の未良の提案は、以前のように不都合な場面が強制的に打ち切られることはないと確信しての一手だろう。劇中の文脈からすれば、演出側による強制的な暗転はマイが連絡を受けて登壇するまでの「時間経過」と捉えられかねないからだ。
というのも、次のシーンの冒頭までタクミは登場するので、陸朗は壇上へ残らざるを得ない。そして登場しているもうひとり、きりかは先ほどノアによって「フレイム」の違和感へ気付いたため、問題なくこちらの味方として機能する。彼女が自ら舞台を離れない限り、アドリブによるシーンの継続は回避できない。この柔軟性は、視覚効果が曖昧で矛盾の生じづらい朗読劇ならではと言えるだろう。
ただ、そこまでして劉側の人間がこの朗読劇へ真面目に付き合っている今の状況はノアにとって好ましい一方で、懸念材料でもあった。
それは未良へもDMの最後に記して伝えている。中止や遅延を目論めば劉へ有利に事態が進むはずにもかかわらず、実際にそうして来ないことには理由がある、と。
ひとつ考えられるのは、単に彼の人柄が強引な手法を嫌悪しているから。そしてそれ以上に合理的なのは、「劉もまたこの場で何かを企んでいるから」、ということだ――
「お互いの話を聞く前に、まずは私が見た喧嘩の流れを話すのでもいいですか?」
未良が率先して口を開く。
「それくらいならいいでしょ?誤解があるなら後で訂正してくれればいいから」
「いいよ、2度手間だから。先に2人の主張を聞かせてくれれば」
「そうそう、せっかく呼んだんだし。そのマイちゃんに任せたらいいじゃんか」
未良へ独白で劉のことを語らせたくないのだろう、吉木沙李奈と陸朗はすかさず否定する。
――そして何より問題なのは、吉木沙李奈が依然として劉側の人間として行動していることだ。
『【独占インタビュー】吉木沙李奈決意の転身 現在は声優の仕事を全て断ち漫画家へ 影響受けた作品への思い語る』
つい先ほど投稿された「サク」の嘘では、その詳細として吉木が「魔球少女ルパン」のストーリーについて言及する内容を捏造していた。それこそが乙丸を「フレイム」の対象として選ばせた元凶であり、投稿はそれを元に戻すと同時に、吉木の過去を「フレイム」で定めたものから上書きすることに成功したはずだった。
そもそも劉が「フレイム」で改変する個人の過去というのは、世界を基準とする基本線の歴史とは乖離している。つまり最短距離の過去改変となるノアの嘘でも、基本線ごとの改変になる以上はそのバタフライ効果に対する耐性は無いに等しいはずなのだ。改変が起きる時点で、吉木自身の歴史は世界のそれと合致した正常なものへと修正されるというのがノアの見立てだった。
ただ、現に吉木の動きに変化のあった様子はない。
『編綴コード』。例の言葉が脳裏を過った。
「ちょっといい、マイ……さん」
そこで口を開いたのはショウコ。
「久しぶりだね。覚えてる?私のこと」
「何のことですか?」
「本当に分からない?私と――昔、仲が良かったってこと。記憶になくても、頭では腑に落ちる部分があるんじゃないの?」
それはきりかのアドリブに違いなく、口調こそショウコがマイへかけるものに則っているが、この言葉が完全にショウコの役柄から来るものだとは言い難い。
「私のことをどう思っているか、これだけはあなたの今の感性だけでも判断できるはず。それさえ分かれば、私は漸く踏ん切りが付くの。思い出が偽物だとして、本当に、それ以外も全部が偽物だったのか。全部が利用する材料でしかなかったのか」
「すみません。何のことだか全然分からなくって……」
きりかはめげずに吉木へアドリブを仕掛ける。
ノア達の都合を汲んでくれているのか、あるいは彼女自身が吉木との対話を望んだ結果かは分からない。ただひとつ言えるのは、今のきりかは確かに最善、あるいは次善と言える行動を取ってくれているということだ。
まず第一に、劇を無事に進行させるという意味で、ノアが到着するまでの時間稼ぎをする必要がある。ノアの退場を知っているきりかは勿論、舞台へ出ずっぱりの未良もある程度その状況は把握しているだろう。
そして、劉に協力する2人を舞台へ引きずり出した時点で、最後に必要となるのはその内の1人を沈黙させることだ。会話で進行する朗読劇である以上、2対2の現状では数的優位がない上、一方的な会話の時間を作られる。視聴者へ劉の情報を伝えるという意味では、敵2人の邪魔を無視した一方的なものでは不十分だ。
――しかし、このままじゃ堂々巡りだ。
ノアは真琴へ電話を掛けた。
「ちょっと、何してんの?早く帰ってこないと次のシーン始まるよ?」
抑え気味の声量からして、流石の彼女も次のシーンに備えて舞台の脇に控えているらしい。
「そんなことは分かってる。とにかく、俺の声が教室に届くようにスピーカーを調整して欲しい。至急だ」
ノアは語気を強める。
真琴は相変わらずぶつぶつと文句を言っているが、聞く耳を持たずに続けていると、やがて承諾して、すぐに電話の音声が直接スピーカーへと行き届くようになった。
「勿体ぶるのもいい加減にしてくれないか」
こちらのスマートフォンから加工したノアの声が教室に響き渡っていることを、音量を落とした中継動画から確認する。
「『メフィスト』諸君、この劇の目的は配信による小銭稼ぎか?まあ何にせよ、そのリークは客観的に見て、するべきではない。これが私、『サク』の考えだ」
「サク」の名が出た途端配信のチャット、そして劉によるサクラで埋め尽くされた会場も騒然とした空気に包まれる。
「ありとあらゆる情報が手元にある私でも、社会秩序を不用意に乱すような不必要なリークをしたことはない。それは1個人のプライバシーが平時人権に保護されているのと同じで、正義の為の暴露とは一線を画した行為だ」
芝居はぴたりと止まって、皆無言で音声に耳を傾けている。とはいえ、敵も味方も舞台脇の方へ目配せしているのが窺えて、おそらくは直接の要因が真琴の接続であることまでは理解できているだろう。
「これは警告だ。ここまでは静観してきたが、『メフィスト』に所属している学生の情報ならば既に掃いて捨てるほど掴んでいる。この愚行を続けるようなら、それに関するスキャンダルが私のアカウントから発信されることになるだろう。
……たとえば、今壇上にいる唯一の男性」
それを聞いて客席の視線は柏葉陸朗へ集まり、彼の表情は瞬時に硬直した。
きりかは自分にとって先輩の吉木沙李奈、あるいは幼馴染の涼霜壮として因縁のある彼に目をつけたが、その反応にいずれも手応えがないのは当然のことだ。
そもそも彼の過去は全て劉によってねじ曲げられたもの。きりかの思いの反面、性根から全てを編集されている涼霜壮の心を言葉で変えようとするのは、記憶自体が残っていないことを抜きにしても無謀だ。
だとすれば、この場面で適切な標的は彼だ。
「君はとある著名人の関係者らしいが、それ故に後ろ暗いものも多いだろう。私は、“全てを見抜いている”」
陸朗の場合は涼霜壮(吉木)と違い、劉が「フレイム」によって改変させる過去が最小限に留まっている可能性が高い。彼自身が「メフィスト」の一員として振る舞う以上、ノア達と関わる機会が多いからだ。記憶を失うにあたって事実関係は補足できたとしても、改変後の過去から慣性で現出される言動に変化があれば、警戒を生む要素となる。これは劉も考慮しているに違いない。
そして今のように劇へ割り込んで、センセーショナルな干渉を強いられている状況だと、ノアは敢えてでも「サク」として登場する他はない。現場で最も「サク」の嘘に影響されやすいのは、信仰心を明らかにしていた陸朗だ。劉の部下として「サク」とは対立しているにしても、涼霜壮と比べればいくらか可能性は高い。
「君も『メフィスト』の一員だ。私の情報収集術について思い当たる節もあるのだろうが、だからこそ分かるはずだ。この発言を疑うことの無意味さが」
陸朗は身動きせず、「サク」の宣告を一身に受け止めている。発言した通り、実際ここで陸朗から過去改変を発動できるだけの信用を得られずとも支障はない。目的は直接伝えて脅迫することで、標的ならば代用も可能だ。しかしそれを聞いた陸朗の様子を見る限りでは、改めて誰かに嘘を吐く必要もないだろう。
「アンタ……。今の、マジ?」
アナウンスを打ち切ると、すぐさま真琴が電話越しに問いかけてくる。
「陸朗の表情を見てみろよ。俺の行動がその真偽と全く関係がないことを何より証明している」
「いや、そういう話じゃなくて」
「他人に言われたことは信じないんじゃなかったのか?それに、度々関係のことで小言を言う割に、俺が今になってお前を信用して真実を言う、なんて決断を下す奴だと思えるのか?」
「は、はぁ?何その言い方――」
声を荒らげる真琴をよそに、ノアは一度車を停車させて通話を打ち切る。そしてすぐさまスマートフォンを確認した。
陸朗の過去はあの場での交渉材料であり、必ずしも知る必要があるわけではない。しかしこのときは何かの予感がして、ノアは目を通さずにいられなかった。
そしてその“記録”は、すぐに発見できた。過去改変によってノアが陸朗の情報を得た経緯は補足されて、それは第三者の証言という形で残されていた。
実際に接点ができる以前、陸朗の入学してきた数ヶ月前から存在には気付いていた。生涯忘れるはずのなかったその顔の面影を彼女が大学で見つけたのは、偶然のことだった。
それは再会であった一方で、彼女が彼の身元について知ることになるのは、それより更に後のことだった。というのも、彼女の記憶にあった彼とは顔つきはおろか、名前すらも違っているからだ。
最初の記憶は今より10年ほど前。元の彼は「足利陸朗」という名で、片親の母の体調不良を理由に現在の柏葉家で里子として育てられた。当時の陸朗は今と比べると少し暗く、近所に住んでいた彼女は放っておけないとの思いから会話する機会が増え、接していた弟のような存在だったという。厳密に言うと、彼女自身はその自負を断言せず「だったはず」と表現しているのだが、そう思うと常として彼女の根底にある人間不信がちな傾向も、性格として決定付けたのはこの陸朗との過去だと推測される。
彼女が改めて観察をして、その結果確信した彼の本質とは、「自身の意思というものの所在を病的なまでに忌避する」ということだ。確かにサークルの活動中でも、彼が特に嘘や隠し事をしたことはない。「メフィスト」の門を叩いたのが自我の発露ということに違いこそないが、その背景は自由の中で潜在意識的な直感であって、その選択を彼自身が理性的なものだと認識していない。
例えば「サク」を信奉する一方でサークルとして「サク」と対立するというスタンスは、一見すると矛盾だ。だが彼にとってそれは矛盾ではなく、「メフィスト」への参加するのは金や名声といった、これといって主義のない理由だった。
また、彼が最初の嘘――キャンパスの有名人・3年生の沖宗結乃と某経営者の不倫関係を信じなかったことからもそれは言える。彼は「メフィスト」に入ることをみずから選んだにもかかわらず、「メフィスト」で流れた噂とスキャンダル対象に対する大衆の評価をある種“フェア”に比較して、信じやすい正解へ流れたというだけだ。そこに柏葉陸朗なりのプライドと呼べるものは存在していない。
「サク」という“預言者”の存在は、そんな彼にとって都合が良いのだろう。
「この、記録は……」
文章を流し見してノアが呆然としていると、今度は覚えのない番号からの着信があって、ノアはそれに応答する。
「順調か?」
涼霜劉の太々しい声が車内に響く。
「劇の途中だろ、通話は禁止だ」
「緊急だからな。余計なことは気にするな」
「緊急、ね。……安心しろ、別に今すぐお前の命を取るつもりなんてない。命乞いなら劇が終わって、俺が「サク」のアカウントから今の内容を認めるまでの間にするので遅くない」
「ああ、分かっている。お前は世界における俺の不確かな存在を、視聴者自身の脳内で描画させることで定義しようとしている。それも、未だ俺の名や姿を明かすことすらせずに」
その理由ならばいくつかある。今回の劇の真相を知らない「メフィスト」のメンバーが既に別の形で劉の名と姿を確認しており、彼らの前で直接的な行動に出るのにはリスクが伴うから。そして、早めに対応すれば劉が改名や整形によって個人情報を変更してしまうから、といった理由だ。
劉は続ける。
「言葉の意味を履き違えているようだが、『緊急』とは俺のことではない。お前にとって緊急事態が迫っていると考えて電話したまでだ」
「俺にとって……?」
「そうだ。“預言者”のアカウントに二言がないのだとすれば、な」
「――乙丸」
言葉の意味に気がついて、ノアは呟く。
「ああ。お前は今し方『サク』の投稿で対処したつもりだろうが、たった今の奴が信用できるか否か……それはさして問題ではない。先日『サク』のアカウントは奴のリークによってハッキングされ、現に俺の手で投稿が可能な状態にある。
とはいえ、俺にはお前のように言霊で時空を操作することができない。それはお前が越智乙丸の翻意を察しつつアカウントのセキュリティに対して無警戒であった理由でもあるのだろう、個人にハッキングされることはさほど重大なトラブルでもなかった。今日、この日を除いてだがな」
「……まさか!」
「その反応、もう柏葉陸朗の過去を見たのか。急いでキャンパスに戻らなければならないという時に、なかなか勘が鋭い」
それに対し、ノアは一度舌打ちをしてから切り出す。
「全てはこの瞬間、俺の上手を行くことを見越していたのか。キャンパスで行ったあの“公開殺人”から」
「そういうことだ。手は込んでいたが、駆け引きとしてはその甲斐もあった。
あのとき殺したのは、そもそも初めからお前のかき集めた3人ではない。タイミングを見計らうことでそのように見せかけ、お前の目線をサークル内部へと向けるためのフェイクだ」
「陸朗、乙丸、或いは俺自身ですらない。それらの改変よりも前、一番最初に仕組んでいた“内通者”が行き着く先は決まっていた……お前の“身代わり”だと」
「そういうことだ。この投稿が『サク』から発信されたくないのであれば、今からでも“般若街”へ引き返してアカウントのパスワードでも変更することだな」
そこまで言うと、劉はゆっくりとその「投稿内容」を読み上げる。
「『本日メフィストの朗読劇で明かされたことは、全て事実だ。語られていた黒幕とは実名を松波夏海と言う。意外なことに、彼女は何の変哲もない京浜大学の学生だ』」
しれっと長期間更新が止まってました。週1ペース宣言は撤回しないけど、ちょっと今後も不透明なところがあるのは否定できず・・・。
途中で終わるつもりはないということでご了承ください><




