#5 影を見つめるもの
【前回までのあらすじ】
牙隈岼果の父が殺害された「ミライパーク事件」にて、実行犯である殺し屋・ジャレッド・ローチと面会する機会を得た一判。能力を用いて、依頼人との取引で対価となった用途不明の金具を入手した。その後、笠井希理花の父・皆幸と面談した際に彼を追及。皆幸は自分がジャレッドを逮捕に至らせた匿名の通報者の正体であり、事件当時はジャレッド本来の標的であったと告白した。
「あっ!先生、こっちこっち!」
週末、「青蓮ミライパーク」。岼果はこちらへあどけなくてを大きく振ってみせる。
「あまり声出さないでくれる?例の発見現場になったエリアだけ回って、すぐ帰るつもりだから」
「そんな!お父さん、殺されてから移動されたって話ですよね?本当の殺害場所がどこなのかはっきりさせる為にも、色々と回らないと」
「……そういうのも、あまり大きな声で言わないこと。君だって困るだろ」
一判は他のアトラクションに見向きもせず、岼果を連れてすぐに観覧車のエリアへと向かう。
時刻は夕方で、事件当時の状況に合わせた。長蛇の列だったので、アトラクションの全貌が窺える位置からその様子を確認することができた。
下調べによれば、ゴンドラの台数が45台、高さは100m弱と比較的大規模だ。ミライパーク自体が市街地の中に位置し、かつて一判が赴任した小学校や岼果の実家とも近いので、その存在感の強さは一判も身をもって保証するところではある。こうして見上げることでジャレッドの犯行が一般人に可能な範疇を超えていることも再確認できた。
「デートには最高のタイミングですから、混んでますね。まあミライパークの観覧車はイルミネーションが特徴ですから、それが綺麗に見える夜がベストなんですけどね」
「いや、イルミネーションが見たいなら乗ったら見辛くなるだけでしょ」
「あはは……。未婚が出てますよ、先生……」
軽口を叩きつつも既に点灯された観覧車のライトアップに注目していると、イルミネーションのパターンが3分で1セットであることに気付いた。
イルミネーションのプログラムとして特徴的なのは、不規則な開始演出だろう。言うまでもなくイルミネーションのLEDライトが取り付けられているのは各ゴンドラと架台の頂点を結ぶスポークだが、各スポーク単位のLEDライトで描かれた線がそれぞれ故障でもしたかのように細かく点滅や変色をばらばらに行う数秒間が存在する。
その後は毎回適当な位置から時計回りで順に点灯された後に、直感的に鮮やかな演出が3分弱続き、5秒ほど消灯された後にまた同じ開始演出で1セットが繰り返される。
ずっとイルミネーションを睨み付けていると順番はすぐに回ってきて、一判は岼果と観覧車のゴンドラに同乗した。
「ぱっと見たところでは、変なところはないね。それでさ……悪いけど、この空間を事件当時に見立てて、何が起こったのか説明できる?」
「……はい。でも、もう話せることもあまりないんですけどね。席はちょうどこんな感じでした。私と先生が向かい合わせになって、乗降口から入って左が私」
そこで一判は、先日の面談での笠井皆幸が最後に語っていた証言を思い出した。
彼が「編綴コード」の一端に触れて間もなく、目が眩むほどの額での取引を提示されたという。その場所がまさにミライパークの観覧車。乗るゴンドラすらも指定があったらしいが、皆幸はそれを間違えたことで難を逃れたという。
『私が実際に目撃していたのは彼が逃走する姿だけです。侵入した様子は全くなかった』
つまり、ゴンドラから脱出する様子は目撃されていても、侵入する姿は目撃されていない。警察の捜査でも、席の下に設置されていた収納スペースの鍵を予め盗みだし、その中に潜伏していたのだとか――。
「観覧車のゴンドラに、備品を入れておく物置きか……」
確かに、岼果の膝の下は金属板で塞がっていて、取り付けられた鍵穴が確認できる。一判の方の足元は穴が空いていて、通気口になっているようだ。犯行には催涙ガスが使われたが、その即効性を考えても、効力がこの程度の換気によって損なわれることはないだろう。
「そんなに変ですか?清掃用とか、停止した場合の救助とか大変ですし」
「……世界中の観覧車を見たことがないから分からないけど、あまり見かけないと思うな。まあ合理的かもしれないね。遠隔で解除できる電子ロックなら、だけど」
「ああ……確かに誰のためにもなりませんもんね、スタッフの行けない場に鍵付きで収納があっても。とはいえ誰でも開けて見られるようにするのも夢がないし」
「少なくとも乗客は外ばかりでこんなところに目を向けないし、あえて違和感を抱くことはないだろうね」
「じゃあ、実際に持ち上げてみたら何が入ってるんでしょうか?設計ミスで取り付けちゃったから何も入ってないとか?」
「何かしら入ってはいると思うけど、設計した時点で本来の意図は物置きになかったと睨んでる。事前に調べたけど、ミライパークの観覧車がトラブルで停止したことは今のところない。逆に考えるんだ、必要のないものならなぜここにあるのか?何のための鍵穴なのか?」
「……先生、分かるんですか?」
「そうだな――じゃあもう1回乗り直そうか」
「ええ?どうして?」
「まあね。外に出て確かめたいことがあってさ」
1周した後に2人は少し距離をとって、観覧車の全体を今一度見つめる。一判はスマートフォンを取り出して、開始してからのパターンを複数回撮影した。
やはり気になるのは冒頭の点滅・変色だ。
ただ一判が予想した通り、一斉に点滅したり変色したりするのはスポーク1本ずつではなく、各ゴンドラを支えるスポークごと。
もう一度観覧車へ乗る頃には日が更に落ちてきて、市街地の中に位置するミライパークは、上空から街の夜景を臨んでいる。
「わざわざ何人かに列を譲ってまでこのゴンドラに乗りましたけど、ここである必要があるんですか?」
「ああ」
そう言ってから、一判は岼果にも分かるように彼女の膝の下へ視線を落とす。
「多分だけど今、この鍵穴の先に『編綴コード』が在る」
「え!?」
岼果は席の中央にあった鍵穴を避けるようにして横に移動したあと、身を乗り出してそれを覗き込んだ。
どうやら、本気で驚いているらしい。
「ここに、どうして?事件があったのは確かですけど、ここ自体は普通のテーマパークですよね」
「ただし『青蓮ミライパーク』、青蓮グループ傘下のね。この予想の根拠になったのは、どうしてこんな事件が起こったのか。厳密に言えば、決行に至ったのかというところだよ」
「こんな事件、というと?」
「観覧車のゴンドラ内で殺人が起こる、センセーショナル極まりない事件概要のことだよ。牙隈さんの前でこんな言い方をして申し訳ないけど、その場の犯行計画に関しては結果的に未解決事件になりかけるほどの成功を収めた。……まあ、ターゲットは取り違えていたみたいだけどね」
「……え?」
岼果は鍵穴に正対して旋毛を見せつけていた頭を、反射的にこちらへ向ける。目を丸くしている。
「取り違えていたって……?お父さんが?」
「まず間違いないよ。君のお父さん、牙隈兆史が殺し屋を雇われてまで殺害されるような関わりは見つかっていない。そう証言した人も出てきたから」
「そう、だったんですか……」
――「突然のことでどう受け取っていいかわからない」、ね。
存外に希薄な反応を示した岼果の一挙手一投足に、一判は目を凝らしていた。
席に戻り、景色の映る窓へもたれかかる岼果だったが、視線はこちらに向いていないようだった。
「――そう。落ち込むのも無理はない。君とは正真正銘、既に関係のない話なんだよ。牙隈さん」
そう一判が口にすると岼果は面食らった様子で、こちらへ目を向け直した。
「あの、私そこまで態度に出てましたか?」
「出ていないよ、全くね。大方、受けたショックをこちらへ見せないよう無反応に徹するしかなくて、それに近く会話の流れに合った態度を演じたってところかな」
「出ていないなら、なんでそこまで……」
「だからこそ気付いた、それだけだよ。俺はね、教師人生において牙隈岼果という生徒がトラウマだったんだ」
岼果は慌てて俯く。真っ直ぐに宣告された衝撃もあってか、哀切のままに見開かせた目を隠そうとしたのだろう。
「ごめんね、でも当時からそうなんだ。同じく小学生の同級生からどう映ったかはともかく、事件前の君と、事件後しばらくしてから学校に出て来た君は明らかに違った。払拭できない悲しみや苦悩がありながらそれを抱え込んで明るく取り繕い、一足、二足も早く大人にさせてしまった。自分は担任として、抱え込んだそれを共有して支えることはできなかったのかってね。とにかくその違いを見ているからこそ、俺は君が何か負の感情を抱えつつもそれを押し殺している態度なら見抜くことができる」
一判が彼女の反応を待ったことで、1分ほど静寂が続いた。
岼果は深呼吸して夜景の方を漫然と眺めていたが、やがて首を横に向けたまま呟いた。
「……そっか。隠し事できないんですね、先生には」
一判の方を向き直した頃には、岼果の表情は普段通り、彼女らしい温和な微笑みに戻っていた。
「トラウマって聞いた時は正直泣きそうになりましたけど、そういう意味なら。むしろなんだか安心です、そこまで理解してくれる人が近くにいるってことですよね」
一判は特に返事をしなかった。それは岼果へ何かを訴えようとしているのではなくて、個人的な信条――つまるところ、教育者としての性なのかもしれないと思った。
「話を戻すね。犯行計画の話だけど、プロを雇ってようやく成立しうるものだろ?しかもこんな目立つ場所でだなんて、条件的にはメリットが全くない選択だ」
「それは、確かに」
笠井皆幸の入手経路は通常と異なっているという証言がある。その後日わざわざミライパークに呼び出されたことを踏まえると、ミライパークでの殺人に意味があったということは間違いないだろう。
「これはあえて見せつけるための殺人だったと思うんだよ。この事件そのものが暗号として機能するようにね」
「あえて、見せつける?誰に?」
「これまでのところほとんど近づけていない『編綴コード』だ、おそらく知っている人間も少なければ、その間で情報を共有する手段も限定されているんだろう。実際の入手場所で殺すことで、それら一部の人間に『編綴コード』が流出した、と警告を出したんじゃないかってね」
「だからミライパークの観覧車に『編綴コード』がある、と。それで、どうしてここに?」
「観覧車は2重のセキュリティになってるんだ。ひとつはこのゴンドラを特定するまで。暗号はイルミネーションの法則だった」
違和感は皆幸の証言に端を発する。
外部の人間である限り、普通は一目見たところで回転しているゴンドラごとの違いを確認することができないが、この観覧車は側面に大きく号車番号が振られていて、判別することができる。
それ自体も妙な気がしたが、さらに皆幸がそれを間違えたということだ。
勘違いならそれまでだが、原因があるのだとすれば、皆幸が「編綴コード」を得た一方でそれを理解していなかったという特殊な状況にあるはずだ、と一判は考える。もしそうであるなら、入手手段ひとつにつけても共通言語が存在していて、観覧車に隠されている秘密を解読できなかったことが皆幸を死から逃れさせたと予想することもできる。
「各ゴンドラに記されてる号車番号だけど、これは表向きのものだね。暗号的にゴンドラごとの区別を付けたのは冒頭にあった点滅と変色――あれがモールス信号だった。点滅が“トン”、変色が“ツー”でね」
「暗号で、モールス信号ですか?こんな目立つのにそれじゃ、簡単に見抜かれそうですけど……」
「確かに目立つけど、テンポが相当早いからね。俺も動画をスローで見てやっと解読できる程度だし、中身も数字で統一されてるとはいえ、一見意味を伴っていない。言った通り、これはただの号車番号。『01』から必ず2桁で『45』まで欠番なく振られていたけど、順不同なんだ。当然表向きのものとは一致しない。これもカムフラージュになってる」
「番号だけとなると、どうやってこのゴンドラを選ぶんですか?」
「ヒントになったのは開始演出の次、一度消灯したあと時計回りの順でぐるりと点灯する演出だった。イルミネーションのプログラムは1セット3分に見えるけど、ここだけ点灯の始まる位置が定まっていなかった。他は全く変わらなかったのにだ。これの何が変か分かる?」
「観覧車の1周する時間はもっと長いですもんね。確かに他が全く同じなら矛盾してるのかも……」
「うん。イルミネーションのプログラムが座標的な意味で固定されてるのかLEDライトの部位として固定されてるのか、ここだけ異なってるんだ。それで複数回撮影してみて分かったんだけど、点灯が始まるライトは必ず『27号車』に繋がったスポークに付いているものだった。アルファベットが全部で26種類だから、この27はアルファベットに変換させるための示唆だ」
「点灯の始まる27の後、時計回りでそれを読むってことですか?」
「その通り。順番に21、14、12、15、3、11、40。変換すると“UNLOCK40”となった。これを踏まえて表記されてる号車番号と照らし合わせて、今は正式な40号車に乗ってるってこと」
「なるほど……。わざわざ正式な号車番号をゴンドラにプリントしてあるのに、そこまで遠回りさせるなんて」
「イルミネーションを暗号にすれば、その内容次第で位置を日替わりにできるからだと思う。英単語部分も毎回『UNLOCK』とは限らないかもね。それなら場所で見当をつけられずに済む」
「それにしても、もしそうならミライパークの従業員がみんな『編綴コード』に関わってたってことですか?」
「いや、そうじゃない。この鍵穴と物置きはダミーで、本命はカラクリになってるんだよ。そこでこれ」
一判は先日ジャレッドから奪取した“部品”を取り出す。
「この部品がもうひとつのセキュリティを突破する鍵だ」
思った通り、ちょうど外枠と筒の直径は一致する。鍵穴を覆うように部品を被せ、隙間へと挿し込んだ。
「先端の凸凹がしっかりと嵌まる角度がある。そうしてこれを回すと――」
物置として手前に引く引き戸ではない。金属板がスライドして、何か機械の基盤のようなものが露わになった。
「お、おお!」
岼果が後ろで声を漏らす。
「ポートが空いているみたいだ。ここに端子を接続すればその『編綴コード』が得られるってことかな」
「……どうしますか?」
「うーん、もし逆探知されたらまずい。人から注意も受けているし、これ以上はひとまず止めておくよ。今はパソコン持ってきてないし」
「じゃあ、これで終わりですね。観覧車だけじゃ名残惜しいですけど」
「ああ。そういえば俺、これ降りたらトイレ行くから。外で待っててよ」
それからミライパークを後にした2人は、最寄り駅の改札前で足を止める。帰り道が被らないこともないが、流石に電車まで同乗するわけにはいかない、と一判が提案したことで別れの時間は訪れた。
「あの、これからどうするんですか?」
「事件そのものの全貌が見えていないからね、それさえ分かれば告発の用意は整う。危険な『編綴コード』は最後ってこと」
「そうですか。何かお手伝い出来ることがあれば良いんですけど……」
「いや、誘ってくれただけで十分だよ。お陰で得られたものは多かった」
「そんなこと言わないでください!」
人混みの中ささやかに行われていた会話だったが、岼果はそこで僅かに声を張って、こちらへにじり寄る。視線を彼女の腰の横まで落とすと、両手に握り拳が作られているのが分かる。
「私も役に立ちたいです……。帰宅しても調査はしているんでしょ?せめて大詰めの今夜くらいは、私も先生のお宅で……」
――別の日でも良かったけど。
心の内で呟きつつ、一判は覚悟を決める。岼果へ首を振って見せた。
「ああ、そう。まあ付いて来なよ。どうせ言っても聞かないことは分かる」
「本当ですか!?」
「電車は別車両ね、流石に。君もその方がいいでしょ」
「はい!ありがとうございます!」
岼果は一度深く頭を下げる。それを戻したときの表情からは、屈託のない“安堵”という印象を受けた。
一判は自宅の最寄り駅で岼果と合流し、人の流れを出来る限り避けて家路につく。
しかしそれは、決してアイドル・牙隈岼果への配慮を目的とした行動ではなかった。
自宅へと近づいたところで、一判は足を止める。
「ちょっといい?」
「はい、何ですか?」
――ここならば人気もない。
途中で解散せずここまで岼果がついて来たことは、一判からすれば好都合だった。
「牙隈さん、どうして嘘を吐いているの?」
「何のことですか?」
「……返し、早いな」
岼果の何気ない返事に合わせてはいけない。
一判は一呼吸して会話の調子を整える。
「気付いてからはずっと思っていたけど、牙隈さんは演技の才能があるみたいだね。普通の人なら勘違いかな、とも思ってしまうかも」
ここまで言っても、岼果の顔つきからは深刻さがまるで表れてこない。
「今俺、嘘つきの生徒を持っていてさ。どれだけ論理的に嘘を暴いても一向に反省しないんだよ。そういう子には躍起にならず、罪悪感を煽って自白させるのがいいと気付くんだろうね。いつからか、無意識ながら態度を冷たくしたんだよ。君にもそうだったと思うけど、まだ自白はしてもらえないのかな」
「いや、何の嘘か言ってもらわないことには――」
「俺が、気付かないわけないだろ?デート相手風に格好つけて言えば、『悲しみの孕んだ君の表情を、俺は絶対に見逃さない』。さっきも言ったけど、君は俺の“トラウマ”なんだから」
岼果からは何の反論もない。思えば、一判の中にあった岼果への――事件への執着に関しては数日前、彼女の方から先に言及してきたことだ。それが最初に感じた明確な違和感だろう。
『分かるでしょう?』
あの言葉はいくら強引な一面のある彼女といえど、計画性すら感じさせる図々しさが感じられてならなかった。
「……ひとつひとつ挙げ連ねた方が良いなら、そうさせてもらう。まずは昨日の君の証言。犯人の影が真っ暗な空中に消えた――と言ったよね。今日犯行時間と同時刻に乗ってみたけど、イルミネーションの影響で真っ暗とは言い難かった。さっきトイレに行く振りをしてスタッフに確認を取ったけど、5年前から光量や点灯時間の変更はなかったと聞いた」
「今は6月でしょう?事件は9月でした、同じ時刻とはいえ、今回よりも日は短かったと思います」
「それは通じないよ。もう一度観覧車に乗り直したのは、『編綴コード』の為だけだと思ってる?」
そこまで言うと、初めて岼果は鼻白む様子を表情に出した。
「そして、犯行の手順との矛盾はどう説明する?犯人は席の下で息を潜めていたという話だったけど、犯行時と同じと語った君の席の位置はその上。鍵を開けて持ち上げないと犯人が出てこれないのなら、君の存在が邪魔になる。……逮捕の決め手は目撃証言と、拘束されたジャレッド・ローチが犯行を全面的に認めたこと、はっきり言ってこの2点以上の証拠はないんだ。例えば席の話だと、犯人の手口からして計画的なものだった以上、牙隈さんが席を離れることに限って偶発性な要因に頼るとは考えづらい。少なくとも牙隈さんの助力があったということにもなる――」
次の瞬間、片眼の視界がフラッシュで白く覆われる。
すぐに2人は光源の方を向く。そこにいたのが誰か――暗闇で朧げだったが、見覚えのある顔と声ですぐに分かった。
「どうもご無沙汰してます、『日刊大宝』です。特ダネ、頂きに来ましたよ」
カメラを構える渥美寧は、普段通りの作り笑いをこちらへ振る舞ってきた。




