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5:魅惑のニャー

 僕たち地球人が獣人系と呼んでいる異星人には、大きく分けて二つの種類がある。


 一つが人型と呼ばれる、耳や尻尾、足や手、羽根だけなど、体の一部に獣の姿を残しているが僕ら地球人に似た姿のもの。

 もう一つが獣型と呼ばれる、獣そのままの姿で二足歩行をしている、もしくは四足歩行だけど知能が高く文明を築いていて会話も出来るものだ。


 そしてここからがややこしいんだけど、異星人のこの形態は一概に種族ごとに統一されているとはいえない。

 例えば幼年期は獣型だけど成人になると人型に変態するとか、獣型と人型を自由に変化出来るとか、男女で形態が分かれてるとか……とにかく獣人系と一口に言っても色んな種類の異星人がいるんだ。

 百年前ならどこのファンタジーかっていわれるような話だけど、これが二十二世紀の現実なんだよ。うん。


 つまり何を言いたいかというと、どうやらUMYAたちは獣型と人型が混合しているらしいという事と、やってきた留学生は獣型だったという事。

 だから人型の猫娘を想像していた男子は「そっち⁉︎」と驚いたわけで、ぬいぐるみなどの影響で獣型を好む傾向にある女子たちは「可愛い」と叫んだわけだ。


 で、僕はどっちかというと。


「か……可愛っ……‼︎」


 猫アレルギーではあるが、僕は無類の猫好きだ。想像していたのは人型だったけど、獣型でも何も問題ないむしろ好き。何なら事前に心の準備が出来ていなかったから余計に可愛いが刺さりまくった。

 どうにか女子のようにキャーと歓声を上げるのは堪えられたけれど、その可愛さに悶絶している。


 なんだあれ、めっちゃもふもふだぞ!

 きゅるるんとした丸い目に、白と黒のグラデーションが美しい長めの毛並み。ふわふわの尻尾がスカートの後ろから垂れていて、お顔の模様はハチワレ。

 これどっかで見たことあるなって思ったけど、アレだ。ラグドールにめちゃくちゃ似てる!


 二足歩行のラグドールが、女子の制服着てるんだ!

 みんなの歓声やら悲鳴やらにビックリして、尻尾がボンって膨らんだ所なんか見せられたら鼻血出そうになるんだけど⁉︎

 いやこれ本当に出てないよな? マスクしてるとはいえ限りなく透明だから鼻血なんて出したら即見えちゃうんだけど、大丈夫だよな?


「みなさん、静粛に! 留学生が驚いてますわ」


 レイア様がさっと立ち上がり一喝すると、騒めきは一気に静まった。

 そのままレイア様に促されて留学生は山本先生の隣に立った。


「こちらが留学生のミャルさんです。みなさん、落ち着いて話を聞くように。ではミャルさん、どうぞ」


 ミャルという名前らしいUMYAの女の子は、緊張した面持ちでペコリと頭を下げた。


「は、初めましてニャ! ムォフモフォ星からやって来たミャルウリィヤ・ミュルミヤウォルですニャ! ミャルと呼んでくださいニャ。よろしくお願いしますニャ!」


「か、可愛い〜〜!」


 落ち着けと言われて、これが落ち着いていられるか! 女子はもちろんのこと、僕だけじゃなく、さっきはガッカリしていたはずの男たち含めてクラス中が一瞬でメロメロだ!


 モフモフ星からやって来たってしか聞こえなかったぞ! 名前めっちゃ長いし噛みそうだから呼び方短くしてもらえたのは助かるとして、語尾にニャって何だよ、おい!


 本人がそう言いたくて言ってるわけじゃなくて、全宇連から渡された音声通訳システムの都合でそうなってるだけなんだろうけど、ニャはヤバイだろ! あざとすぎる!

 聞き慣れた合成音声すら可愛く聞こえてくるぐらいだぞ!

 誰だこの通訳システム開発したの。絶対地球人だろ、ツボ抑えすぎ! よくやった、もっとやれ!


「ミャルさんの席は教室の後ろ、中村君の隣の席になります。学校では中村君が世話係になりますからね。何かあれば彼に相談してください。中村君、ミャルさんをよろしくね」


「は、はい!」


 危ない危ない。すっかり興奮して我を忘れてしまった。山本先生の言葉で我に返り、僕は慌てて立ち上がる。


 みんなにガン見されてビクビクしつつも、ミャルさんが僕の所に近づいてきた。鞄を握ってる手までもふもふのまん丸だ。可愛い、可愛い。


 ハッ、いかんダメだそうじゃない! 僕は世話係、僕は世話係。落ち着いて接しないと、不審がられてしまう! よだれとか垂れてないよな? 鼻血も大丈夫だよな?

 ほら、レイア様も心なしか冷ややかな目で僕を睨んでるじゃないか。平常心、平常心だ!


「初めまして、中村雪成です。気軽に中村って呼んでくれたらいいから、一年間よろしくね。困ったことがあれば何でも言って。とりあえず座ろうか」


「ありがとニャ。ニャーの事もミャルって呼んでニャ。よろしくお願いしますニャ」


 椅子を引いてあげると、ホッとしたようにミャルさん、いや、ミャルは言った。


 自分のこと、ニャーだって! ニャーだって!

 しかも呼び捨てで良いって言ってくれた! 可愛い、可愛い……っだー! だから違うそうじゃない、しっかりしろ! 僕は世話係、僕は世話係!


 僕がちゃんとしてないと、今もギラギラとこっちを嫉妬と羨望で睨んできている猛獣たちを抑えられないんだから! 正気を保ってミャルの穏やかな学校生活のサポートをしないと!


 とりあえずミャルを窓際の空席に座らせて、僕は未だにミャルをガン見してるクラスメイトたちから隠すようにミャルに鞄の中身を出すように言った。


 そうしているうちに、山本先生の張りのある声が通る。


「さあ、それじゃあこのままロングホームルームを始めますよ。今日は交流体育祭に向けて、出場競技の話し合いになります。もちろんミャルさんも出る事になりますから、その辺りの調整も含めて西宝院さん、よろしくね」


「ええ、承りましたわ。実行委員の方、書記をお願いね」


 学級委員長でもあるレイア様が頷いて、山本先生の代わりに教壇に立つ。


 交流体育祭とは、その名の通り生徒同士の交流を目的とした体育祭だ。

 一年を共に過ごすクラスメイトたちの仲を深めるために、毎年五月に行われている。


 これにミャルが出ると知って、みんなの顔色が変わり一斉にレイア様へと視線が集まった。

 そりゃそうだよね。うまくいけば、ミャルと一緒の競技に出れる。つまりより仲良くなれるんだから。


 うん、上手く行った。これも全部、僕らの目論見通りだ。今のうちに僕はミャルに、学園での基本的な事を教える事になる。


「制服似合ってるね。着方は分かった?」


 手元のデバイスで、レイア様のために交流体育祭の資料画像を教室スクリーンに映しつつ、ミャルに問いかける。するとミャルは、照れたように目を細めた。可愛い。


「うん、これは分かったニャ。ニャーたちの服とあまり変わらニャいから」


 ……ん? 今なんか語尾じゃない所でもニャって言わなかったか?

 まあいいか。次、次。


「鞄の使い方も大丈夫そうだね。渡された物の中で、使い方分からないのってある?」


「これとかこれとか全然分からニャいニャ。教科書とかはこっちではニャいニャ?」


 こ、これは、もしかして……!


「あのさ、ミャル。一回僕の名前呼んでもらってもいい?」


「ニャまえ? ニャカムラ君で合ってるニャ?」


 キ……キターーーーー!

 やっぱり「な」が「ニャ」になってるー!

 なんだこれ、めちゃくちゃ可愛い可愛い可愛い!


「ニャカムラ君、どうしたニャ? ニャー、間違えちゃったニャ?」


 不安げなウルウル目まで可愛いよ、どうしようこれ……じゃない! 僕は世話係、僕は世話係ぃぃい!


「ううん、何でもない。合ってるよ、大丈夫。えっと、それで教科書だったよね。教科書はこの透明な板みたいなのに全部入ってるんだ。ノートも同じだよ」


「コレに全部ニャ⁉︎」


 どうにか気合いで普通の顔に戻して説明を続ける。


 どうしよう、幸せだ。マスクと手袋もあるからか、隣にいるだけとはいえ今の所アレルギー症状も全然出てないし。

 どちらかといえば、可愛さで悶え死にしそう。いや、死ぬわけにいかないけど。こんな可愛いをあの野獣の群れに解き放つわけにはいかない。僕が守らないと! 世話係だから!


 でもちゃんと世話係続けられるのかな。いつか理性が吹き飛びそう。一番危ないのは、僕の心の中の野獣なんだよなぁ……。はぁ、頑張ろ。

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