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6:ニンジャの人気はすごいんじゃ

 困惑する僕に構わず、レイア様は「聞くより見る方が早いわ」と僕の家に行く事を決めてしまった。こうなるともう何を言ってもレイア様は聞かないから諦めるしかない。

 家には誰もいないはずだけど、万が一に備えて一応ミャルには着替えてもらう事にした。


 手伝いのためにミカーリさんがミャルに付いて行ったけど、最初は警戒されていた事を考えると凄い進歩だなと改めて思う。ミャルの部屋で二人きりになっても、もうミカーリさんの翼を狙ったりはしないという信頼関係が出来たって事だから。

 ……いや、大丈夫だよね? 羽だらけになって帰ってきたりしないよね?


「どうかニャ?」


「似合ってますわよ」


「ウン、ちゃんと耳も尻尾も隠れてるナ」


「か、可愛い……」


 心配は杞憂に終わり、ミカーリさんは元気に戻ってきた。良かった。


 そして先ほど話していた通り、サロペットにキャップも被ってきたミャルは想像以上に可愛かった。

 いつもはスカート姿ばかり見ていたし、全体的にフワフワとした女性らしいファッションが多かった。それらももちろん似合っていたけれど、こういうボーイッシュな感じもすごく似合う。

 ミャルは何を着ても似合うのかもしれない。もっと色んな姿を見てみたいな。


「さあ、準備も出来たし行きますわよ」


「結局どうやって行くニャ?」


「それは見てのお楽しみでしてよ」


 うっかり見惚れていた僕を置き去りにして、さっさと歩き出したレイア様たちを僕も慌てて追いかける。


 向かったのは、なぜか屋敷の地下にあるワインセラーだった。このお屋敷には小さな頃から出入りさせてもらっているけれど、まさか地下まであるなんて知らなかったから驚いた。


 ワインセラーなんてわざわざこんな地下に作らなくても、どこでも使いやすい好きな場所に出来るはずなのにと思ったけれど、考えてみたらここはちょうど食事室の下あたりなんだよね。しかもただの食事室じゃなくて、接待用の特別な部屋の真下だ。どう考えても使いやすい。

 その上、昔ながらの石壁や木組みに似せた装飾までされてあるから、もしかしたら単にワインを置いてるだけじゃなくて、接待時に客を楽しませるためにもあるのかもしれない。


 ……なんて思っていたら、レイア様が意味深な笑みを浮かべてボコボコした石壁に手を触れた。


「ここにはね、ちょっとした仕掛けがあるのよ」


 ――ゴゴゴゴ


 と、ちょっとわざとらしいぐらいの音を立ててワインの並ぶ棚の一部がスライドし、めちゃくちゃ近代的かつ直線的な明るい通路が現れる。


「すごいニャ! 動いたニャ!」


「ホゥ、よく出来てるナ」


「モシカシテ、コレが話に聞くニンジャ屋敷というものか?」


「ニンジャ! ニャーもそのお話この前見たニャ! 煙でドロンでカッコよかったニャ! こんニャおうちに住んでたんだニャ」


 ミャルたちは興奮して喜んでいるけれど、僕としてはそれどころじゃない。

 真っ直ぐに続く道の向きは、どう考えても僕の家の方角なんだが⁉︎


「まさかこれ、うちの地下まで繋がってるとか言わないよね?」


「そうよ。隠し通路になってるの」


「いやいや、初耳なんだけど⁉︎」


 こんな通路があるなら、雨の日も風の日も毎日レイア様の屋敷まで歩いてきていた僕の苦労は何だったんだろうか。


「それはそうでしょうね。わたくしも知ったのは先日だもの」


 何でもこの通路、僕の家の半地下にあるガレージまで繋がっているらしい。

 しかも僕の家が建てられた時からすでにあったそうで、他国や異星の大統領や首相、王族などなど、超VIPな人たちとレイア様のお父さんが秘密裏に会合する際に使用しているそうだ。


 お屋敷にはパパラッチが張ってたりするけれど、隣にある僕の家はそこまで注目される事はない。

 西宝院グループCEOの専属秘書の家だとは知られているけれど、お屋敷と違って盗撮防止のセキュリティシールドもないから、覗く気になればすぐに見れると基本的にノーマークなんだ。

 それを逆手に取って、僕の家まで父さんの車でやって来ては、通路を使って誰にも知られずVIPな方々を屋敷に招いていたらしい。


 おもてなしの雰囲気作りのために出口はワインセラーにして、上の食事室で会食をしつつ親睦を深め、後の商談がうまく行くように接待する。

 さっきのミカーリさんみたいに、お客さんには忍者屋敷みたいだと好評だそうだ。


 そしてそんな隠し通路の存在を、ミャルをホームステイさせるにあたり、万が一にもパパラッチ等に知られた時の緊急脱出通路として、レイア様は教えられてたんだとか。


 言われてみれば、今日はガレージに入っちゃいけないとか言われた日が過去に何度かあったような?

 でもガレージには僕らのオモチャとかも昔は置いてあったのに、そんな凄い人たちが何度も通ってたとか血の気が引くんだが。


「これってもしかしてうちの母さんも知ってたりするの?」


「ええ、知ってるそうよ。時々おばさまの再現料理をお客様に出したりもするんですって。いいバイトだって、おばさまも毎回喜んで手伝ってくれるらしいわ」


 嘘だろ、大統領とかめっちゃ偉い人にまで母さんの料理食べられてるの⁉︎

 僕の家は平凡なサラリーマン家庭だと思っていたけれど、実は平凡なのは僕だけなのかもしれない。ショックだ。


「レイアちゃん、もう入っていいニャ?」


「ええ、構わなくてよ。ほら、中村も行くわよ」


 あまりの衝撃に打ちのめされても、立ち止まることは許されないらしい。

 僕はため息を堪えて、渋々みんなと通路へ入った。

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