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4:慣らしは大事

 レイア様の家での勉強会はほぼ毎日のように続いた。この夏はレイア様のプライベートビーチに行く予定があるし、そんな場所で宿題なんかしたくないから、さっさと終わらせてしまおうというわけだ。

 おかげで僕も例年にない速さで宿題が進んでいる。


 今までもレイア様と一緒に夏休みの宿題をやった事はあるけれど、その時は問題集とかのドリル系じゃなくて、自由研究やポスター作りみたいな自由度の高いものしかやらなかった。

 だから毎年僕は夏休みの最後の方まで、一人ちまちまと問題を解き続けてたんだよな。


 ところが今回は二人と一緒ということで、有難い事に分からない所を色々教えてもらいつつ順調に進められたわけだ。

 レイア様からは「こんな問題も分からないなんて情けない」と、冷たい視線と共に散々叱られたりもしたけれど、僕の実力なんてこんなものだから仕方ない。


 これじゃ、ミャルに良いところを見せるなんて到底無理な話だよな。数学なんかは僕よりミャルの方が得意だからなおさらだ。

 今まであんまり意識してこなかったけれど、自分の平凡さが悲しい。


 でもだからって、いつまでも凹んでるような僕でもない。勉強はこれからまた地道に頑張る事にして、今はとにかくミャルが安心して二学期を迎えられる下準備をしないと。


 というわけで、とりあえずまず最初にミャルの本当の姿を知る仲間を増やす事にした。


「コンニチハ、レイア様。キョウはお招きありがとう」


「久しぶりダネ。お邪魔するヨ」


「お二人とも、よくいらしたわね。どうぞこちらへいらして。中村、用意をお願いね」


「はいはい、了解」


 残るは自由課題だけとなったある日、勉強会はお休みにしてレイア様の家にミカーリさんとドリュアさんを呼んでみた。

 玄関先で出迎えたのは僕とレイア様の二人だ。いつものサロンへレイア様が二人を案内するのを見送ると、僕は二階にあるミャルの部屋へ向かった。


「ミャル、そろそろ行くよ」


「ウニャ……本当に大丈夫かニャ?」


「大丈夫だって。それにもう少ししたら結局は会う事になるんだよ?」


「それはそうニャんだけどニャ……」


 渋るミャルを宥めて僕らもサロンへ向かう。


 僕らは来週には、レイア様のプライベートビーチがある南国のリゾートへ向かうんだけど、そこには僕たちだけじゃなく料理研究部のみんなも呼ぶ事になってるんだ。

 どうせそこで会う事になるなら、その前にミカーリさんとドリュアさんには打ち明けておこうという事になった。


 宇宙人の二人は、僕ら地球人ほど猫型宇宙人に対して憧れを持っていない。

 もちろん料理研究部のみんなだってミャルとはずいぶん仲良くなっていたし、ミャルの素の姿を見ても、驚きはしても変なことは言わないと思う。

 それでもこの二人なら、彼女たち以上にすんなり受け入れられるだろう。少しでもミャルに自信を付けてもらえたら、という思いで決めたことだった。


 サプライズで明かされた僕の時とは違って、今頃はレイア様が大体の説明をしてくれているはずだ。

 それでもミャルにとっては不安みたいで、ガチガチに緊張している。


 僕に打ち明ける前もこんな感じだったんだろうか? ちょっとさすがに可哀想だなぁ。


「ミャル、階段降りれる? エレベーター使おうか?」


「ウニャ、大丈夫ニャ。ただ、ちょっと手を貸してほしいニャ」


「うん、いいよ。ゆっくりね」


 ギュッと握られた手には肉球はないけれど、僕の手と違ってめちゃくちゃ柔らかい。考えてみれば手を繋いだのは初めてなんじゃないか?

 うわ、なんかすごいドキドキしてきた。手汗かいてないかな?


 そんな場違いな事を考えているうちに、あっという間にサロンに着いた。


「レイア様、来たよ」


「お入りなさい」


 扉をノックすれば、ミャルを緊張させないためかいつも以上に穏やかなレイア様の声が返ってきた。


「ミャル、大丈夫? いくよ」


「ウニャ……、いいニャ。頑張るニャ」


 一度ギュッと力を入れて握った後にミャルは手を離した。それでもやっぱり不安なのか、縋るように僕の足に尻尾を触れさせてくる。


 うああ、可愛い。可愛いすぎる。尻尾巻きつけてくるとか、もう僕はどうしたらいいんだ!

 いや、扉を開けるだけなんだけどさ!


「ミカーリさん、ドリュアさん。ミャルだよ」


「こ、こんにちはニャ……」


「ああ、本当ダ。可愛いじゃないカ」


「イマまで大変だったね。チャント会えて嬉しいよ」


「ええと、変じゃニャいニャ?」


「ドコガだ? ナニもおかしくないよ」


「むしろ、やっぱりソウだったかとしか思わないゾ。A組は人型ばかりだったからナ」


「そうかニャ? それニャらいいんだけどニャ」


 当たり前といえば当たり前だけど、二人ともごくごく普通にミャルに話しかけてきた。

 ミャルはビックリしていたけど、すぐにホッとしてみんなの輪に加わっていった。


 尻尾が離れたのは寂しいけど、ミャルはちゃんと安心出来たみたいだから良かったよ。

 これなら来週みんなと会う時も、そこまで緊張せずに済みそうだ。


今週末は執筆時間が取れそうにないので、次話は10月3日(火)となる予定です。

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