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⒍ ペースメーカーは僕の誇り

パグ君の飼い主さんから、我が子と話をしてみたいと依頼がきた。

特別急ぐようなトラブルはありませんと。


事前打ち合わせで、パグ君に話しかける。

『今度、お母さんと一杯お話出来るからね」


『やったー!!嬉しいー!! 

 お母さん、大好きー!!!!楽しみぃ〜!!


 間に合った(ボソッ)…』


ん? 間に合った…??


コミュニケーションで、たくさんの事を聞きました。

たくさんの背景が見えました。

今回の真の依頼者は、飼い主さんではなく、13才のパグ君でした。


パグ君には、妹ちゃんがいました。

予定よりも早く、医療ミスで亡くなりました。

お母さんは悲しくて悲しくて、ずっと悲しみの中でした。

パグ君は思います。

僕が旅立ったら、お母さんは又ペットロスになってしまう。

ダメ!ダメだよ、ペットロスになっちゃ嫌だ!!

僕はこんなに幸せな気持ちなのに!

お母さんは、ペットロスになっちゃいけない。

僕は幸せで、胸張って犬界でお母さんの自慢をしたいのに。

お母さんは、僕の自慢のお母さんなのに!

皆んなに、僕のお母さんの話をするのを、楽しみにしてるのに!!

パグ君は、お母さんにペットロスになって欲しくなくて、私を呼びました。




パグ君の背景


パグ君が来る前に、チワワちゃんがいました。

チワワちゃんは、つきっきりで看病されていたけど、お母さんが目を離した隙に旅立ちました。

見送れなかった飼い主さんは、深く深く悲しみました。

けれど、チワワちゃんの意見は違います。

『自分は充分頑張った。もう寿命は越していた。お母さんの為に頑張ってた。

 お母さんの頑張っての気持ちが、私を縛り付けるから、旅立てなかった。

 だから、あの隙を狙って旅立った。』


『自分はとーっても幸せだったから、見送れなかった事を悲しんで欲しくない。』


パグ君の後に黒パグちゃんが来ました。妹ちゃんです。

妹ちゃんは、医療ミスで亡くなりました。

コレは辛い。悲しみと後悔が嵐のように押し寄せた事でしょう。

けれど、妹ちゃんは言います。

『お母さん、私はとーーーーっても!幸せだったよ。

 お母さんが、頑張れ頑張れって、沢山の愛情を注いでくれた。

 命の長さじゃ無いのよ。幸せの深さなの。

 治療内容じゃないの。治療しようとしてくれる愛情があれば、それで幸せ。

 結果は関係ないの。お母さんの頑張れの気持ちだけで、私は幸せだったの。』


『お母さん、もう悲しまないで。私はとーーーっても幸せだったから。

 幸せは命の長さじゃないよ。愛情の深さだよ。愛情一杯貰ったよ。』



パグ君が語ります。

『お母さん、僕は病気の荷物を持って1才の寿命の予定だった。

 どの飼い主さんの所に行こうかな?って探してた時、チワワちゃんが言ったんだ。

 私のお母さんの所においでよ。私のお母さんは、とーっても優しいから。

 病気を背負ってる君でも、絶対に幸せになれるよ。

 だから、僕はお母さんの所に来たんだ。1才で旅立つつもりで。


 僕が1才になる前に心不全が判って、突然死するかもって言われたね。

 それを聞いて、お母さんは僕にペースメーカーを付けてくれた!

 凄くない?!パグにペースメーカーだよ!!犬用のペースメーカー!!

 治療も大変で、費用も一杯一杯掛かった筈なんだ。

 そこまでして貰える程の愛情を、僕は貰えたんだ。

 僕はとっても幸せだよね!


 ⒍7才の頃、腸の病気になって。

 ドンドン痩せ細って2年持たないって言われて。

 そしたら又お母さんがあれこれ探して、ご飯が白いペースト状に変わったら持ち堪えた。

 お母さんは、他の子が食べてるオヤツとか食べたいのかな?って気にするけど全然欲しくない。

 だって僕のご飯は、お母さんが元気になって!って想いを込めて用意してくれたご飯だから。

 コレを超える食べ物なんて無いよ。ご飯、美味しいねぇ。


 11才になって、胆嚢の病気になって手術する事になって。

 手術中にペースメーカーが止まって逝きかけた時、妹ちゃんが言ったんだ。

 私の残ってた寿命あげるから、頑張って!って。

 僕は手術を乗り越えて13才になった。


 お母さん、ありがとう!ありがとう!!ありがとう!!!

 大好き!大好き!!大好き!!!

 僕は、とおおーーーーーーーっても!幸せだッ!!


 ねえ、お母さん。僕はこんなに幸せなんだ。

 あっちの犬界に行って、お母さんの自慢をするのを楽しみにしてる。

〈見てみて!コレ、ペースメーカーなんだ!僕のお母さんが付けてくれたんだ!!〉って、

 大きな声で周りに自慢するんだ。

 お母さん、僕が犬界でお母さん自慢をしてるのに、お母さんがペットロスで泣いてちゃ嫌だよ。

 僕が犬界で〈病気のお荷物背負って行ったけど、こんなに幸せだった!〉って胸張って言うから。

 お母さんは〈僕を、僕達を幸せにした飼い主です!〉って、胸張って笑って。

 

 お母さん、僕は今、セカンドステージに行くのを楽しみにしてる。

 病気の荷物を持ってドキドキしてた僕が、今度は逆の立場になって励ますんだ。

 見て、僕の飼い主さんはペースメーカーを付けてくれたんだ。

 君達もきっと、僕みたいに幸せになれるよ。

 優しい飼い主に会えるから、勇気を出して行っておいでって、病気の子を見送る仕事をするんだ。


 ペースメーカーは、僕の誇りなんだ。

 

 お母さん、僕は、明日かも半年先かも判らないけど、いつ旅立っても、

 たとえお母さんが傍にいない場所で、何処で旅立っても、僕は幸せだから。

 いつも今も旅立つ時も、犬界に居ても、僕はずーっとずーっと幸せだから!!』




我が子が旅立つ時は、(ゴメンナサイ〉は3回まで。

抱えきれない程の〈ありがとう〉と〈大好き〉で見送ってあげてくださいね。

飼い主の涙を、ペット達は望んでいません。

飼い主の悲しみが続くと、呪縛となり、あちらの世界から引き摺り下ろされます。

ペット達がいつ旅立とうとも、後悔のない毎日を。

旅立った我が子に、胸張れる飼い主であれ。

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