15. 見えないからこそ、残れました。
保護猫一杯の猫飼いさん宅には、エイズ部屋がある。
そう。猫エイズに罹ってる子達が暮らす部屋。
そこで暮らす数頭の中に、エイズ兼盲目の猫さんがいる。
全盲まではいかなくて、少しの光具合ならわかるレベル。
この猫君。前の飼い主さんが一時預かりで預けて、音信不通になった。
前の飼い主、許すまじ!なんだが、この飼い主も保護した立場。
猫を保護したけど、猫エイズだし盲目だしで逃げた…ってトコか。
この三重苦の猫君。
前の飼い主に捨てられた事で傷ついているのでは?と、気持ちを聞いてみる事に。
『猫君、こんにちは。今の生活、どうかな?
前の飼い主の事は、どう思ってる?』
『今の生活?幸せーー!!!
あのさ、普通さ、猫エイズに罹ったら、処分だよね。
引き取って貰えない。
でも!この家にはエイズ部屋があるんだよ。凄くない?
逆転の発想だよね。凄いよねー。
前の飼い主?覚えてない。ハハハ、何とも思ってない。
だってあの人は、僕がこの場所に辿り着く為のパイプ役だったから。
僕は、ココのお母さんのところに来たかった。
だから、僕をココに連れて来た所で、お役御免だった人。
あのね。僕はエイズだから、ココに居れるんだ。
普通の猫だったら、他の人とか猫カフェに行ってた。
でもエイズだから、盲目だから、この部屋に居る資格がある。
前の人が投げ出したから、お母さんの所に残れた。
僕はココに来て、やっとお母さんの猫になれた。
やったー!!最高だ!!
お母さん、ありがとう!大好きー!!
お母さん、僕は盲目だけど、ちっとも不幸じゃないよ。
ここには仲間がいて、色んな事を教えてくれる。
雨の音がすれば、雨だよと話してくれる。
ガタガタと音がすれば、今日は風が強いと説明してくれる。
目が見えなくても周りが一杯話してくれるから、退屈しない。
お母さん、僕達、病気の猫を引き取ってくれて、ありがとう。
大好きだよ!!
僕達の力は微々たるものだけど、毎日、お母さんのラッキーを祈ってる。
お母さんが僕達を守ってくれる様に、僕達もお母さんを守るよ。
お母さん、一緒に幸せになろうね!!』
前の飼い主に捨てられたのがトラウマになってるのでは?という心配は、杞憂でした。