13. 養豚場の豚君、熱く語る。
こんにちは、豚です。ペットの豚ではありません。
養豚場で、絶賛飼育され中の豚です。
ああ、そこの彼方、可哀相にという哀れみの心、いらないです。
食べてゴメンね という謝罪の気持ち、それもいらないです。
何故って?
俺達は初めから、養豚の一生はそんなモノだと納得した上で今ココにいる。
そこに、謝罪も同情も必要ない。
野生動物の魂から見たら、養豚という魂の入れ物は、羨望の的、
競争率高しの〈ゴールデンシート〉なんだ。
は?何で?どこがゴールデン?と思った彼方、視野広げてみよー。
豚が可哀相だと思う彼方は、人の立場からしか見ていない。
〈養豚〉という立場は、人から見たら捕食される側。
しかし!野生動物からの養豚は、憧れの!垂涎の!
ゴールデンシートなんだな。
そもそも、この養豚という器に入ってる魂は、ほとんどの前世が野生動物。
野生っていうのは生きる事が、食べる事が、とても困難で厳しい。
俺は、前世レッサーパンダだった。厳しい冬を越せなくて餓死したよ。
隣の子は、サバンナのガゼルで、ライオンに食べられたって。
その隣の子は、ウサギで、鷹に捕まって食べられたって。
野生動物の下層、捕食される側に居た魂は、次こそは飢えない生を望む。
飢えない楽な生き方の究極なのが、養豚なんだ。
犬やペットの方がよくない?と疑問に思う彼方、
ふふん……ペットだって?ごめん被る。
ペットはなぁ、制約が多すぎるんだよ。
犬なんて更に、上下関係までかなり厳しい。
勉強なんて、ごめんだよ。
生まれてから死ぬ直前まで、食べて寝て食べて寝る。
肥満になる程食べても怒られず、難しいしつけも勉強も義務も無い。
思う存分食べて食べて食べて、病気や怪我をする前に生を終わる。
これのどこが、気の毒だと?
一生が短すぎる? ご心配なく。
俺ら、この養豚を3回から5回は繰り返してますから。
前世で受けたトラウマ〈飢えや恐怖〉
そのトラウマが解消されるまで、養豚を繰り返す。
思う存分怠惰な生活をして、心と身体の飢えが満たされた所で初めて、
養豚とは別の生を探すんだ。
生を終わるのも、言わば突然死の様なモノだ。
痛みも苦しみも無い。
人だって、突然死を願うだろう?ピンピンコロリ がいいなって。
毎日怠惰な生活を送れて、最後は安寧な突然死。
ただちょっと、一生の期間が短いだけ。
ね?野生動物の魂から見たら、養豚はゴールデンシートに見えないかい?
但し、同じ養豚の器でも、経営者で随分と環境は違ってくる。
機械と同じようにしか生産家畜を見られない人の下では、ストレスが増える。
逆に、快適な住環境、精一杯の食糧、目一杯の愛情を注いでご覧よ。
俺達、良い肉になるぜ♪
いつも俺達に、愛情一杯注いでくれる兄さん達、ありがとな!!
別れの時が来ても、そのまま淡々と受け入れれば良いんだ。
悲しみで心を抉るな。魂に贖罪の刃を立てるな。
俺達は養豚の器に、自ら望んで熱望して入ってきた。
別れの時は、ただの、次のステージに進むゲートを潜るだけだ。
そこに、恐怖も悲しみも無い。
ぶっちゃけ、次は何になろうかなぁー?位にしか考えてない。
今、生きてる俺達に、目一杯の愛情を注いでくれるだけで良い。
俺達は〈大事に育ててくれて、ありがとな!!〉と、
心の中で手を振って、次のステージに旅立っていく。
直ぐ、養豚に戻ってくるけどな!
覚えておくといい。
養豚は、野生動物のゴールデンシートなんだ。