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81 .兵士達のトレーニング⑧

「お嬢様には…  大変失礼な態度をお取りしてしまい、申し訳ありませんでした。


以前よりアシュトンから手のつけられない暴れん坊だと聞いていたので、ただのワガママなご令嬢だと思い込んでおりました… 」



アシュトン後で呼び出しだわ。



「公爵様がお忙しく、お嬢様のそのようなご性格をご存知ないのであれば、家臣として自分がお諌めしなければと、そのように考えてしまいました。」



諌めるにしては、ディスりすぎだった気がするけど。



「ですが、先程の身のこなし、仰られている内容は、どちらも予想を覆しておりました。


天地無用で柔軟性に富んだ、あのような立ち回りは、これまで見たことがありません…

本当に、驚きました。



まだ、私は厳しいトレーニングは戦と兵士のために必要だと思っておりますが、確かに欠けていることや、配慮すべき点があることは、理解しております。



私も学ばねばならないことがたくさんあるようです。

この上はリリーお嬢様にご指導頂き、新しいトレーニング、鍛錬の方法を確立していきたいと思います。」



ロカ隊長は深々と頭を下げた。


トレーニング内容について全権をくれるって言ってたけど、協同検討になったようね。

それはそれで良いわ。

私は基本、ここにいないのだし、考え方だけ分かってくれたら、これからが改善されるはずだもの。




リリーはうなずき、「ご理解頂けて良かったです」と言い、そのままペルルに向き直った。



「ペルルさん、貴方は身体の線が細く、小柄ですが、それは欠点ではありません。先程お話していたように、長所を生かした働きが必ずできるようになりますよ」

と伝える。



しかし、


「リリーお嬢様… こ、こんな僕に温かいお言葉をありがとうございます。

ですが、僕は、体力も筋肉も無い上に、お恥ずかしながら頭も良い方でなくて… 」

最後の方は消え入りそうな声で答えた。



「あぁ! 先程隊長にお話したのはただの例ですわ。

戦いは筋肉だけじゃできないということを伝えたかったのですけれど、言葉が足りませんでしたね」

リリーは苦笑して、



「私が使ったこの木刀、ペルルさんが作られたのではなくて?」

リリーが選んだ細長い木刀を差し出しながら聞いた。



ペルルはじっと見つめて、

「確かに、以前僕が作ったものです。 でも、何で分かったのですか?」

と目を丸くして聞き返す。



「握った時にすぐに分かりました。最初貴方の木刀をお借りした時の握り心地と、一緒だったのですもの。

貴方の作った木刀は、握り手の部分が少しだけ掘彫ってあり、指が馴染みやすくなっていますね。

だから、強い力で握りこまなくても手からスッポ抜けず、適度に緩めて持てるから肩に変な力が入りません。


また、この木自体も丈夫なのによくしなり、私と相性がとても良かったです。

こんな素材を見つけたのも、すごいと思います」


リリーに褒められ、少し顔を赤くしながら、



「僕の家は木こりをしていました。小さい頃から父について森に入り、いろんな木を切る所を見たり、端切れで工作をしていたので、木を彫ったり削ったりするのが得意で…


父は去年死んでしまって、僕はこの通り体も細くて体力がないなら木が切れなくて、母さんが病気でお金が必要になって…

それで、身体を鍛えながらお金を稼げたらと思って、こちらにお世話になることにしたんです」



「そうでしたのね。 それは大変だったでしょうね…

でも、武具の製作の腕は、兵団にとって大変重要なものです。

握りやすい木刀、剣の製作、また、その器用さがあれば、馬車や騎馬隊で使う器具類の破損をいち早く修理できることもあるでしょう。

身体を鍛えるより、誰にもできない仕事が、ペルルさんにはあると思いますわ」



リリーに言われてペルルはビックリした様子だった。

そして、 


「僕実は、もう兵団にいるのは無理かなと思っていました。足手まといになるばかりで…

でも、父さんと一緒にやってきたこの手を生かして誰かの役に立てるのなら、すごく嬉しいです… 

僕、頑張ります」

と、目に涙をためてしっかりした声で言った。


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