7.ベースの身体造り
幸い、ゆっくり食事改革を進めたおかげで下痢などの胃腸の不調に陥ることはなかった。
食べる量はまだ少ないが、野菜果物、穀類、芋類、植物性・動物性たんぱく質をひとくちずつでも食べるようにした。
時々熱が出ることはあったが、あまり高熱にならないうちに治まり、回復が早くなった。
最初は寝たり起きたりの生活で、だんだん座っておける時間が長くなった。
爪の色も人間に近づいてきた気がする。
並行して身体のリハビリを始めることにした。
いきなり筋トレはできないので、まずはストレッチから試してみた。
「ひゃ〜〜! これは…」
ストレッチなんかしたことないリリーの身体は10歳とは思えない硬さだった。
開脚は50度が精一杯、長座体前屈は膝までしか指が届かない。
首は真横すら向けないし手指足首もギッシギシ。
少しでも伸ばそうとしたら身体がきしんで痛いので、お風呂上がりのマッサージから始め、少しずつ手足を動かす他ないようだ。
1日1日ほんの少しずつ関節可動域を広げていき、柔軟性を取り戻すよう頑張った。
食事とストレッチで血色はだいぶ良くなったがまだまだ手足は細く頼りない。
すぐに疲れてしまう。
次はとうとう筋力&体力回復ね。
いきなり立ってのスクワットや踵上げはできないから、ベッドで寝たまま足や腕を上げたり下ろしたり、首しか上がらないけど腹筋の構えで頭を持ち上げたりした。
ウフフ… 筋肉にキテる気がする…!!
久々の筋肉痛の予感すら楽しみに、ひたすら手足を動かした。
翌日。
「うっ…!」
突然、食べたら吐き気がするようになった。せっかく食べられるようになった魚や肉類を受け付けず、冷たい果物をやっとの思いで飲み込むのが精一杯。
「お嬢様、少し食べられるようになったからといって、急に運動をしてはいけません。多分、身体がついていっていないのですよ」
熱まで出始めた私の身体を、ジニアが心配そうに拭いてくれる。
楽しみだった筋肉痛が、刃のように全身を突き刺し、頭が割れるように痛む。全身が滾るように熱くて息もできないほど苦しい。
確かに急に無理をしすぎたみたい…
10年間の臥床生活、甘くみていたわ…