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66.歌の基礎トレーニング①

「君の歌がどのようなものか分かった。

一般的な同年代の子より、かなり上手な部類に入ると思う。

音程はとれているし、声量もある」


「ありがとうございます」



「その上で、より王城の晩餐会に相応しく歌えるようになりたいというのであれば、僕はまず基本に戻って基礎練習からすべきだと思う」



リリーの歌い方は、耳で聞いてそれを再現しているだけだ。

綺麗に聴かせるためにどう発声したら良いかとか、身体の下地作りなどは全く分かっていない。

 

体操で、基礎トレーニングが重要性は充分理解している。

やはり、声楽でも土台造りから始まるのね!

リリーは俄然燃えてきた。



「はい先生! 宜しくお願いします!!」



アズールはやる気まんまんなリリーを見て、

ちょっと歌が上手い子はだいたい、『私は基礎はできているから、それよりもっと上級の内容を教えてちょうだい』とか言って基本を疎かにする子が多いのに、やっぱりこの子は変わってるなぁと思った。



「まずは柔軟性をみてみよう。

良い声を響かせるなら、最低限、首回りと肩甲骨、胸郭の柔らかさが必要だ」



...




「なっ…! 君の身体はどうなっているんだ…!?」


柔軟性において、多分この国にリリー以上の柔らかさを持つ者はいない。

肩は外れてるんじゃって思うほど柔らかくしなるし、首と背中をゆっくり反らしていけば、イナバウアーの姿勢が難なくできる。


リリーはアズール先生があまりに驚くので、ちょっと調子に乗って、その場で勢いをつけてフィギュアスケートのチューリップスピンを高速回転で回ってみせた。



「おねぇちゃんすごいすごーい!!」

「どうなってるのその足!?」


見たことのない身体の動きに、その場は騒然となった。



気を取り直して。

「じゅ…柔軟性は問題ないようだね。。

次は口の周りの筋肉の柔らかさをみてみよう。」

と言って、手鏡を渡した。


「この鏡をみながら、あっかんべーをしてごらん」


言われてリリーは躊躇いなく舌を出す。


これにも驚いた。貴族は恥ずかしがって出来ないと思っていたからだ。



リリーの桜色の舌は小さく、あまり下まではのばせなかった。


「舌は筋肉の塊だ。縮んでいたら、滑舌に影響する。

家や小さいホールで歌うのなら問題はないが、王城の貴賓ホールはかなり広くて大きいと聞く。

そこで歌う歌詞が聴衆にきちんと届くには、より綺麗な発音、滑舌が必要だ。

そのためには舌の柔軟性はとても大切なんだよ」



このことは、いつも役者に口をすっぱくして言っていることだ。

何と言ってるか分からない役者に、観客は感情移入ができない。



リリーは全身の関節や筋肉はかなり柔らかいが、舌まで気を配ったことがないので、なるほど!と思いうなずいた。



「舌を思いっきり出して数秒キープするのを、上、右、下、左、前と順番に行ってみよう」



ふむふむ。

リリーは鏡を見ながら一生懸命舌を伸ばす。


「今のが舌のストレッチで、次は舌の運動だ。

今度は口を閉じて舌を口の中でぐるっと回してみて。

上唇の裏や頬、下唇の裏を、なぞるような感じだよ」



ふむふむ。

ぐる…ぐる…ぐる…


結構疲れるな…  

あと、ずっと鏡の中の自分の顔が面白すぎる…

(笑える雰囲気ではない)



「次は顎とほっぺたの柔軟性と体操だ。

ウとアを繰り返すのだけれど、大袈裟な程しっかりギュッと口をすぼめて"ウ”を、しっかり大きく口を開けて"ア”を発音すること。

口を開けるときは、アが縦だけ開いてOオーの形にならないよう、頬の筋肉で口を横(耳の方)に引きつけるよう意識してみてほしい」




ふむふむ。 



ア、ウ、ア、ウ、ア、ウ、ア、ウ、ア、ウ…




「今日は今した内容を、まずは自主トレーニングでしっかりできるように練習してきて下さい」

アズール先生はそう言うと、劇団員の指導に戻っていった。



リリーは言いつけを守ってひたすら頑張り…




翌日、生まれて初めて、顔の筋肉痛を味わった。



これは嚥下の体操でもあるので、口の機能を上げるにはオススメの運動です。

あと、あっかんべーが万国共通なのかは不明です…

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― 新着の感想 ―
[一言] 本気の合唱部はヌルい運動部よりハードだしね あと吹奏楽 体育祭の部活対抗競技でガチでやってる運動部の次くらいに来てた
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