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51.SIDE ジェイバー③

ジェイバーは悔しさに拳を握りしめていた。

あんまり強く握りこむから、手のひらに爪の跡がくっきりついてしまっている。



しかしジェイバーは、アシュトンへの悔しさに震えていたのではない。

"お嬢様の護衛騎士”を馬鹿にしているアシュトンに、『俺は自分の意思でお嬢様の護衛をしている!』と言い切れなかったことが悔しかったのだ。





ジェイバーは小さい頃から、ルーフス子爵家を継ぐつもりで父の後をついて回り、仕事を覚えた。


先の侵略戦争でディアマン公爵に領民を救われてからは、父を説得し、子爵家を出てディアマン公爵家の私兵団に入団、努力の末に団長代理まで務めることができた。


そして今は、恩あるディアマン公爵の娘様ならと、令嬢の護衛も謹んでお受けした。


ジェイバーはいつだって、自分の道は自分で切り開き、取捨選択をしてきた。

自分の人生を人のせいにするつもりはない。



だから、どんなに馬鹿にされても、揶揄られても、自信をもち、堂々としていれば良いのだ。

自分は今の仕事に満足していると、答えたら良かった。



しかし、それができなかった。

黙り込んでしまった自分自身に一番驚いたのもまた、ジェイバーだったのだ。





まだ幼いのに誕生日に建物ぜいたくなものをねだる金銭感覚や、欲張りな性格。


本当はいつも元気に過ごしているのに、王子とのお茶会でだけは病弱なフリをするあざとさ。


王子との観劇は厳戒態勢だったが、そのまま騎士や兵士をぞろぞろ連れて買い物(しかもリボン程度の)をする神経。


完成した舞踏ホールの更衣室に、休むためのマットレスを2枚も運び込ませ、日によっては半日以上出てこない。

ゴロゴロ怠惰に過ごしているであろう生活を良しとする性根。



どこをとってもジェイバーとは合わないのだ。

11歳という幼さを差し引いても、どうしても受け入れられない。


お嬢様の良い所なんて、最近、歌を歌うのを初めて聴いて少し驚いたことぐらいだ。



つまり、ジェイバーはまだ、リリーに"自身が身を賭して守る価値”を見いだせていないのだ。

主君を誇れずに、心からの護衛はできない。

だから、護衛騎士であることに自信を持てないでいる。



そのことを突きつけられた気がして、自分のふがいなさ、覚悟の足りなさが情けなくてたまらなかった。




ジェイバーが何も言えなくなっていると、どこから聞いていたのか、お嬢様が飛び出してきた。

会話を聞かれていたと知ったアシュトンは真っ青になっている。


ジェイバーも、反論しなかった自分への気まずさからうつむいていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 仕えるに相応しいと思えない相手だとそうなるよね 君君たらずといえども臣臣たらざるべからず などという言葉もあるけどね 何れにしても見誤ってはいるのだけども
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