4.現状把握③
突然思い出した予期せぬ事態に、彼氏いない歴18年の私が狼狽する。
その様子をみて何を間違えたか、ジニアが
「そうでございました! アルジェント様にも、お嬢様がお覚醒めになられた旨を急ぎ連絡致しましょう!」
婚約者への連絡をとりたいものだと勘違いされ、ジニアは走って行ってしまった。
アルジェント・ヴェルデ・エルム様はこのクルール王国の第一王子である。
年齢は確かリリーの1つ上で、文武両道、顔よし性格よしの優良物件らしい。たくさんの令嬢の憧れの的、というのがリリーの記憶だった。
「王子…」
何と婚約者は王子様だった
エルム王子とやらを思い浮かべても、リリーには特別な感情は湧いてこないらしい。
本当に、親同士が決めた結婚だったようだ。良かった…
もしイチャイチャラブラブだったら、中身(?)が違うことに気づかれてしまうかもしれない。表面的な関係性なら、何とかなりそうな気がしてきた。
ちょっと安心したらお腹が空いたので、王子への連絡を頼んで帰ってきたジニアに、軽い食事をお願いした。
用意してくれたスープと少し果物を食べたら身体がほんのり温かくなり、壁づたいには自力で歩けるようになった。
汗でベトベトの身体を風呂でサッパリしたいと伝えると、メイド2人がお手伝いしますと準備をし始めたのを急いで断り、ゆっくり一人で湯船につかった。
「ふぅ… 気持ち良い… 」
私は試験前の高熱で死んじゃって違う世界に転生したのか、まだ高熱にうなされていてここは夢の中なのか分からないけど、考えるより動くほうが好きな私は、とりあえずリリーとして生活してみようと腹を括った。