37.体操本格始動①
翌日、マルグリット先生の授業の後にマリーを伴って体育館に来た。
秘密のクローゼットルームには、ジェイバー達が運んでくれたマットレスが並べられていた。
「お嬢様、なぜここにマットレスがあるのでしょうね?」
マリーは不思議そうにしていたが、すぐに理解することになる。
「おっ お嬢様ぁぁぁ!!!危ないです危ないです ひぁ〜〜〜〜!!」
リリーが最初にしたのは、とりあえず側転。
何回転か続けて問題なくできると分かり、一旦止まる。
よし。
試してみたかったロンダートをしてみる。
ロンダートは、両手をばんざいしてホップし、
片手を振り下ろしながら側転の構えに入って片手ずつ両手をつき、身体を捻って一度逆立ちの格好になった後、両手で地面をグンっと突き放して身体を浮かせ、両足から着地する床の技だ。
リリーは側転から捻って逆立ちまではできたが、手で床を蹴って身体を浮かせる力が足りず、マットレスに崩れ落ちた。
ばふっ!
そこでマリーが涙目で駆け寄ってきたのだ。
「ふはーっ ダメでしたわー。
ま、こんな感じですわね! このためですの。」
「何がこんな感じなんですかぁぁぁぁ」
「だから、マットレスがある意味よ。怪我をしないためにあるのよ」
「なっ…! このようなこと、旦那様やジェイバー卿はご存知なのですか?」
「もちろん内緒よ、マリー。分かるわね…?」
「おっ… お嬢様…!」
もうマリーは逃れられない。
マリーにはして欲しいことがたくさんあるのだ。
リリーが走って両手を勢いよく前につき逆立ちになる。
逆立ちから後ろに倒れる背中をマリーが両手で少し支えると、くにゃりと身体が曲がって足が床につく。
そのブリッジの姿勢から腹筋で上半身を起こすのがまだ充分にできず、マリーに押してもらって体を起こした。
手の力をつけるため、両手を床について足を壁にあて、足で壁を登るように上げていって逆立ちになり、そこから壁を蹴って身体を反らし、床についてブリッジの姿勢になる。
そこから身体を起こして立ち上がる。
それを何回も繰り返し、とうとう自分で身体を起せるようになり、前方倒立回転ができるようになった!
「あとは側転から入れればロンダートもできる…!」
「できる…! じゃないですよ! どこを目指されているんですかぁぁぁ」
マリーの声がクローゼットルームに響いた。