31.お兄様からのプレゼント①
はじめてのおでかけが無事に終わり、ひとまず屋敷の面々は安堵のため息をついた。
なにせ、旦那様がリリーを心配すぎて心配すぎて無理難題を言ったり警備に難癖をつけたり、体調の報告を頻繁にさせたりと、かなり負担をかけていたからだ。
ロータスはこの調子だと、旦那様が本邸に戻ってくる日も近いんじゃないかと思った。
リリーはさすがに疲れていて、夕食はとれなかったので果物とミルクティーだけを飲んで眠りについた。
翌朝。
「ロータス、お兄様から届いたプレゼントを見せてちょうだい」
「はいお嬢様、こちらでございます」
ロータスが持ってきたのは、細長く綺麗な箱だ。
「何が入っているのでございましょうね?」
ロータスは中身を知らないので、この不思議な箱に興味津々だ。
箱そのものが宝石でふちどられていて重く、かなり大きいので、部屋まではジェイバーが運んでくれることになった。
「私がお兄様にお願いしたものなの。ふたりだけのヒミツだから、中身は内緒よ」
リリーはわざと子供っぽく笑うと、部屋のテーブルに箱を置いてもらい、お礼を言って扉を締めた。
カコッ… 箱は蓋も重い…
「まぁ素敵…!」
中に入っていた剣を手にとる。
ウィリアムお兄様から送られたレイピアは、何の鉱石や金属で作られているのか分からないが、白銀色でとても軽い。
長さからみて、サーブルに使う時の剣だと思うが、ガルト(剣の握り手の上のお椀型)の部分に、リリーの瞳の色と同じアクアマリンが嵌めこまれていて、動きに合わせてきらきらと光る。
箱から出せば、軽いレイピアはリリーでも片手で楽に握ることができた。
箱の装飾からみても、お兄様は観賞用としてお送り下さったみたいね。
私が使うと知ったらお兄様は絶対お止めになったはずだけど、まさか病弱令嬢の私が剣を使うつもりとは思わないのだわ。
久々に剣を握って少し振ってみると、久々の感覚に百合子だった時の気持ちを思い出し、胸が高鳴った。




