25.王子様とのお茶会②
「お嬢様、今日はどのドレスに致しましょうか」
ジニアはお茶とお菓子の用意をするために応接室に行くというので、今日の支度はカシアとマリーが担当してくれることになった。
「そうね〜 … これが良い気がする 」
リリーはたくさんのドレスの中から、薄いすみれ色のレースに白のヴェールを重ねたドレスを選んだ。
「まぁ、、そちらも素敵ですが、少々シンプルすぎるかもしれません。
お嬢様には、こちらのピンクのドレスもお似合いになると思いますよ」
カシアはリリーが選んだ飾り気が少ない地味なドレスより、花びらを重ねたような華やかなデザインのドレスを推しているようだ。
リリーもそのドレスは好きだし似合うと思うが、最近の健康的な生活で瑞々しくなった肌は、ピンクのドレスに包まれたらますます血色良く見えてしまう気がした。
リリーは少し考えて、
「カシア、マリー、貴方達は本当に、私みたいな病弱で教養の無い子が王子妃になれると思う?」
と聞いてみた。
リリーを溺愛しているジニアなら、間違いなく『世界一美しいリリーお嬢様は、必ず王子妃様そして王妃様となられます!』とか100%の未来予知みたいに断言するに決まっている。
だから、ジニアより客観的意見をくれそうな2人に聞いてみたかったのだ。
2人はびっくりした顔をして、同時に口を開いた。
「世界一美しいリリーお嬢様は、必ず王子妃そして王妃様になられますよ!!
美しい上に、私達のような使用人にも優しくして下さる天使のような方です。
そのようなご心配、なさらなくて大丈夫です!!」
2人はリリーの期待を大いに外れ、完全なるジニアの仲間、むしろ輪をかけた猛者だった。
メイドさん達に客観性を期待するのは無理だったようだ。
王子妃ましてや王妃になったら、絶対体操とかトレーニングを自由にさせてもらえなくなる。
偉い人とアハハウフフするだけの人生(偏見)なんて嫌だ!
リリーは最近、何とかしてこの"第一王子の婚約者”という肩書を返上できないか考えていた。
結果、『こんな病弱な女じゃ子供もたくさん望めないし、何かの病を王子にうつしたら一大事だから婚約破棄しようかな』作戦を考えた。
そのため、なるべく病弱なイメージが継続できるよう、あえて顔映りの悪い色でシンプルすぎるドレスを選んだのだ。