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242.カルトン共和国を救う方法④

妙な沈黙の後で、王女は言った。


「まぁ、宜しいわ。発案者が誰か、気になる所ではあるけど、それよりもうひとつ確認したいことがあるから。

リリーの婚姻は、解消して頂けるのよね?」


「それは、勿論にございます。即刻、取り下げをさせて頂きます」


「そうですか。それは確実に、お願いしますわね」



王女は念押しをしてから起こしていた背を再びソファに埋め、ゆったりと足を組み替えた。

ベルヒはそこで、聞いておかなければならないことを思い出した。



「それに伴いまして…  

アングール王女様には、ペトラーの首を望まれないと仰せでしたが、彼の処罰に関しては、いかがお考えでしょうか… 」


これについては、5人で話しても結論が出なかったのだ。

リリー様は婚姻解消だけで構わないと言っていたが、流石に無罪放免とはいかない。

ガバル元帥は間違いなく処刑を望むだろうし、自分も元々そう考えていたが、本当にそれで良いか分からなくなっていたのだ。


自国で考えろと言われてしまうかもしれなかったが、それでも王女の考えを聞いてみたかった。



「そうね…  彼には、働いてもらうのが良いと思うわ」


予想に反し、王女はサラッと答えた。


「今回決めたことを全て実現させるのは、かなり大変よ。そのためには少なくとも、熱意と人望、財力がいるわ。あと、それなりの位も。

彼には幸い、その辺りが備わっていそうだし、ヤル気もあるようだから適任じゃないかしら。

国にお金が無い分、かなり身銭を切ることにはなるけど、それが罰だと思って身を粉にして働いてもらうのが良いと思います」



「な… なるほど… 」


確かに、発案者であるリリーは隣国の令嬢であり、多分この国に長く留まることはできない。共和国民でこの件を主導する人が必要だ。それには、ペトラー以外に適任者はいないように思えた。



ベルヒは、目の前の少女が口にする的確な分析と無駄の無い采配に感服させられていた。それと同時に、たった数時間の関わりだが、同じような人種がいたことも思い出した。



「… アングール王女様とリリー様はご友人と伺っておりましたが、お二人はよく似ていらっしゃいますね」


つい口に出してしまった。



「あら、リリーをご存知なの? そうなんです。あんなに気の合う同年代の人は、初めてですわ」


ベルヒは慌てたが、王女はさして気にした様子もなく、うっとりした表情で続ける。


「そもそも武芸を嗜む同性の人が少ないのですが、初めて手合わせをした時に息がピッタリ合って…

しかも、その後に起きた問題の解決と影になる部分のフォローまで手抜かりなく手腕を振るわれ、とても素晴らしかったのですわ。

彼女は私の大切な人なのです。


似ていると言われたら、嬉しいですね」



昨日向けられた底冷えのするような笑みでなく、花が綻ぶように笑う王女を見て、ベルヒはやっと、肩の力を抜くことができた。



王女からは、今後1年間は1ヶ月毎に進捗の視察に来ること、きちんと約束が履行されていなければ即刻戦端を開くことを伝えられた。

つまり、執行猶予1年という感じだ。



ベルヒは今度も、クッカと入れ替わって隊に戻った。

「待たせたな」

隊員にも言葉を掛け、晴れやかな気持ちで馬を駆り、岐路を急いだ。



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