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240.カルトン共和国を救う方法②

次に、東の森を見せて貰った。


「本当に立派ですね…」




森は、横枝が少なく、幹がまっすぐ空に伸びた背の高い木が生い茂っていた。

ジブリのような、というより、杉の原生林のタイプの直立した木々が密集している。

木の太さはあまり太くはないが、木の間隔が近すぎる。これは確かに、伐採したら隣の木に倒れかかったり衝突して方向が変わったりして事故が起きそうね…


しかも聞いた通り、樹液がベタベタしている…

伐採して山を畑にするのは、本当に難しそうだ。


リリーは木の肌に触れ、ふと地面を見た。



「!」



枯れて落ちた葉が地面に重なっていたが、それを拾って驚いた。

指を広げた手のような大きな葉、その形は、海外旅行土産で見たことのある形だったのだ。

その国の国旗にもなっている葉っぱと瓜二つの形。

確かあの国も基本寒かった。



まさか、この木って…




リリーは先程樹液に触ってベタベタしている指を、恐る恐る舐めてみた。



「リ、リリー様!?」 


突然カブトムシになったリリーを、ジェイバーが慌てて止めに入る。

そりゃ、知らない国で知らない植物の樹液を主人が舐めだしたら、間違いなく止めるだろう。


ベルヒ大将も明らかに引いている。


しかし、そこでタイムアウト。


「リリー様、もう戻らなくては、約束の時間に間に合いません」



ベルヒ大将に言われ、急いで馬車に戻る。

本当はもう少し樹液を集めたかったのだが、どうやらそんな時間は無いらしい。


馬に頑張って貰って、何とか要塞に戻った。






※  ※  ※




要塞に戻ると、リリー達が最初に通された部屋に、既にガバル元帥はいなかった。

荒れた部屋の中には、ムリマ補佐官とヴノ大佐が置き物のように座っていた。

その様子は、燃え尽きたボクシングチャンピオンの最期のようだった。



「あの…」


リリーが声を掛けると、ビクッと肩を震わせてムリマ補佐官が顔を上げる。



「あ、あぁ、リリー様。先程は失礼致しました」


急に時計が動き出したように眼鏡を直して居住まいを正した。

ベルヒ大将、ヴノ大佐、ジェイバーでテーブルを囲む。



「ガバル様は…」


「ガバル様は、爆発攻撃に耐えられそうな自宅の地下要塞に向かわれました。それでも最後かもしれないと、たくさんの食べ物やお酒を運ばせている所です」



要は、自分だけ逃げたということだ。

戦争が始まれば、真っ先に被害を被る国民を助ける手立てをしないまま戦線を離れるなんて… リリーは怒りどころか、むしろ呆れに近い感情を持った。



ムリマ補佐官は続けて言った。


「交渉は勝手に… いえ、我々に任せる、と。そうご指示を頂きました」



「分かりました。 でも、それはむしろ好都合ね」


変にそれダメあれダメと横槍を入れられるよりは、任された(放ったらかしなだけだが)方が有り難い。



補佐官あなたには、何か案がありますか?」


リリーに聞かれて、ムリマ補佐官はバツの悪い顔をする。


「いえ… お恥ずかしながら、何も。まず何から手をつけて良いかすら分かりません。


ただ… 先程、クルール王国より追加の書簡が届きました。

これに書かれていることは、助けになることだと思います」




ムリマ補佐官が広げた書簡に書いてある内容を読んで、リリーは大きく頷いた。


「確かに、これでしたら、だいぶ早く解決に近づけますわ!」



書簡に書かれていた内容は、リリーには提供が難しいものだった。

これと今日の視察で得た情報を掛け合わせたら、何とかなるかもしれない。

それにしても… エルム王子、ちゃんと隣国を大切に考えてくれていたのだわ…。


リリーはもう一度書簡を読み直して唸った。

こんな支援、見返りの見込めない投資みたいなものだ。しかもかなり大規模だから、省や議会や領主への合意をとりつけ、王様から許可を得るのはかなり大変だったと容易に想像できる。

王子、本当にありがとうございます…!


リリーは王子に感謝の念を送りながら、4人にリリーの考えを説明した。




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