224.異文化交流②
父様的には不覚にも、貰った剣の質が本当に良く、砦の兵士達にとても重宝された。
また、強度が高いので、太さや厚さを半分にしても欠けたり折れたりしないことが分かり、最近では剣でなく加工前の原材料(鉄鉱石)で輸入をすることが増えた。
これを製鉄所で鉄にし、ペルル達が剣に打っている。
純粋に重さが半分になるから軽くて丈夫とあって、大変評判が良い。
噂を聞きつけた他の領地や軍から、譲渡の打診が来るぐらい有名になってしまった。
「ハイ! 今回のぶん!」
「どーもどーも!ありがとよ!」
今も、ペトラーは共和国から運んできた鉄鉱石を兵士に渡し、代金を受け取っている。このお金でまた、肉や小麦を買うのだろう。
「ちょっと一杯やっていかないか?」
「いいねぇ」
境遇への同情と、また彼元来の人懐こさもあり、いつの間にか砦の兵士達とも打ち解けていた。
お酒も強いらしく、飲み明かして帰ることもあったが、潰れたことはなかった。
今日は飲むようだったので、リリーは砦にペトラーを残して公爵邸に戻った。
※ ※ ※
「リリー様… 本当にこのまま、ペトラー様と結婚なさるおつもりですか…?」
ある晩、寝る前のホットミルクを持ってきたジニアが、ポツリと聞いた。
ペトラーは共和国と公爵家を行き来しながら、案外上手く立ち回れていた。家が鉱山産業兼商家という所もあって、兵士のくせに商売上手だ。相手に得をさせながら、自分が損をしない絶妙なラインを上手く探ることができる。
そんな所は、リリーも見ていて勉強になった。
父様の目が厳しいからか、リリーがまだ幼いからか、ペトラーと恋愛的な雰囲気になったことがない。
どちらかといえば、"親戚の陽気なお兄ちゃん"という立場がピッタリな気がする。
向こうも同じ気持ちなのか父様が怖いのか、2人きりにすらなったことなかった。
「そうねぇ… このままだと書類通りに結婚するしかないけど… 」
リリーの頭に、エルム王子のことがふっとよぎった。
解決する方法を必ず見つけると言っていたが、あれから2ヶ月が経っても彼からの音沙汰はなかった。
今どうしているんだろう。
「考えてみたら、食糧支援も目処が立ったし、共和国は鉄の輸出で外貨も得られるようになったのだから、この関係さえ続けると約束したら、結婚しなくても良いんじゃないのかしら」
「なるほど確かに! さすがお嬢様!!」
「そうよね!? 明日早速言ってみましょう!!」
急に湧いた名案でその後は2人でキャーキャー言いながら盛り上がり、「難しく考えていたけど、案外簡単に解決するかもしれない」とウキウキした気持ちで眠りについた。
… 基本リリーも、楽天脳です。




