21.家庭教師がやってきた
「・・・」
リリーは何と答えるのが正解か分からず、ただ視線を彷徨わせた。
「最近のお嬢様の様子を拝見していますと、だいぶお元気になられた様子。
これまでは机に向かってのお勉強などとても難しいご体調でしたが、お誕生日も迎えられたことですし、そろそろ良いタイミングなのではないかと思いまして」
た、確かに…
11歳といえば、日本でいう小学校5年生くらいよね。
それなのにまだ1回も勉強していないって、私かなりヤバいんじゃ…
地頭は18歳だから国語、算数は多分大丈夫として、この世界の勉強って何を習うんだろう…
貴族だからマナーとか経営学とか?でもまだ私は11歳だし…
ふむ…
「そうですね、私は元気になりましたので、ちゃんとお勉強も頑張りたいと思います!」
「そうですか、そうですか! お嬢様のそのお気持ち、大変嬉しく思います。早速旦那様にご相談して、家庭教師の選定を致しましょう!」
ロータスはとても嬉しそうだ。
くぅぅ…
トレーニングを考えたり身体を鍛える時間が減ってしまったよぅ…!
善は急げなのか、3日後には家庭教師の先生が挨拶に来られた。
「はじめまして。この度、リリーお嬢様の家庭教師を拝命しました、ベルンシュタイン・アンバー・マルグリットと申します。このようなご依頼を頂きまして、誠に光栄に思っております。精一杯勤めさせて頂きますので、どうぞ宜しくお願い致します」
マルグリット様は60歳くらいで、少しふくよかな体形だからか優しそうに見え、リリーはちょっと安心した。
某アルプスの女の子の家庭教師みたいな人が来たらどうしようかと思っていたからだ。
マルグリット様は伯爵夫人なので、公爵家より2つ下の爵位になる。
公爵家の一人娘の家庭教師を頼まれるということは、とても栄誉あることなのだそうだ。
「マルグリット伯爵夫人、こちらこそ、幼少より病がちで、教養も何もない私ですが、これから頑張りますので、ご指導宜しくお願い致します」
私はカーテシーをしながらご挨拶をした。
「まぁ!なんて綺麗なカーテシーかしら!!マナーを誰にも習わずに、こんなに綺麗なご挨拶ができるご令嬢はいらっしゃいませんよ!
これなら他のお勉強も、すぐに身につけられるに違いありません」
マルグリット伯爵夫人はものすごく驚いた様子でそう褒めながら、熱っぽい瞳でリリーを見つめた。
あまり張り切らずにボチボチ頑張ってもらいたいなー… とリリーは思った。




