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202/325

202.冬の異変①

帰りの馬車も、揺れが少なく快適だった。

王子は、今日学んだ色んなことをどうしても言いたいらしく、ひたすら話しっぱなしだ。


リリーは昨夜と今朝早くからのお菓子作りで大変疲れていた。

王子のマシンガントークを浴びるも、鉛のような瞼をコジ開けて、頷ずくのが精一杯だった。




※  ※  ※




「芋は、好評みたいだよ」


あれからしばらくして、各地でさつまいもフィーバーが起こった。

最初は配給されたものの使い方が分からず不人気だったが、リリーのレシピを基盤にアレンジレシピがたくさん登場し、各家庭に広がっていったようだ。


最悪、焼いたり蒸すだけで食べられるお手軽さもウケて、今は逆に人気沸騰中なのだ。


パレット王国も、豊作すぎて、自国に全部流通させたら価格が暴落する所だったさつまいもが、適正価格でクルール王国に卸せたことで難を逃れたと喜ばれた。


また、さつまいもは、割れていたり尻尾の近くの部分やあまりに小さい芋は、家畜の飼料になる。

穀類が軒並み不作で、家畜用飼料も少なかったから、これも良かった。

剥いた皮や芋の可食部分以外の所を家畜に与えると、身が柔らかく甘みが出るらしい。

牛や羊の乳の出も良くなり、一石三鳥だ。



王子とのお茶会で、それらを確認し、やっと安心できた。



「本当に良かった。

それにしても、リリーは何でも知ってるよね。あんな芋のお菓子、産地のパレット王国でも作られてないってよ? 

どこで知ったの?」


「うっ…


えぇっと… どこだったかしら…   あぁ!

私がずっと伏せっている時は、本だけがお友達でしたの。

その時読んだ、どこかの国のレシピだったと思いますわ!」



「へぇ〜! 身体がしんどい時なのに読書をしていたんだから、リリーは本当に努力家だよねぇ」



王子は心底感心した様子でニコニコ笑っている。

リリーは痛む胸をごまかしながら、話題を変えた。



「それにしても、なぜ今年は不作だったのでしょう。

特に、雨季が偏ることもなかったと思いますが…

隣のラピス公国は、うちほどではないけど、やっぱり今年は収穫量が減ったそうです」



「うーん… それなんだよねぇ…

一応、農産大臣が色々調べてはくれていているんだけど、どうやら気温が関係していそうだって。

なんでも、この国ではだいたい10年周期くらいで作物の不足の年が来ているらしく、それはいつも冬なんだ」



「確かに、今年の秋は短くて、一気に寒くなった気がするわ。冬が早いというか…

約10年周期なら、前回の不作の年は、私達はもう生まれていたわね。その時はどうやってしのいだのかしら」



「僕らも小さかったから、さすがに覚えてないけど、授業で習った時の話では、残念ながら冬を越せなかった人が多かったって…


あと、その年は、作物の不作以外に何かがあったような…」





王子が何かを思い出そうとした時、ダイニングルームの扉が激しく叩かれた。




「エルム王子!!」

「リリーお嬢様!!」


オリバー様とロータスの、初めて聞く切羽詰まった声だった。



勢いよく扉が開かれ、二人が駆け込んできた。



「「カ… カルトン共和国が突然、当国に攻めてきました!! 


これより、戦争になります!!」」




リリーは頭が真っ白になった。


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[一言] 食べ物がなければ奪う考えね。
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