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197.秋の実り⑥

「美味しい… これがあの、ゴツゴツした芋からできるなんて信じられない」


王子は目を丸くしながらさつまいもスイーツを楽しむ。

特に大学芋がお気に入りだ。


「この、飴がらめの甘いカリカリした所が堪らないね」



砂糖も、元来高級品だが、こちらもパレット王国からの交易でだいぶ手の届きやすい価格になったのだ。

ただ、精製された上白糖でなく、きび砂糖だ。

その雑味も何とも言えない優しい味わいになっている。




王子が気兼ねなくお菓子達をパクついている姿を見て、領民や他の貴族も安心してさつまいもの続きを楽しむことができた。





※  ※  ※



「いや〜、疲れましたね」


夕方、マリーが片付けをしながら背伸びをした。


「思った以上にたくさんの方が来てくれたわね」


リリーも満足そうに微笑み、テーブルクロスを回収する。


「皆で色々食べるのって楽しいわよね。砦の皆は、国境警備があるから来られなかったけど、今度差し入れに行こうかしら」


「絶対喜びますよ! ねぇ?」


マリーに問われ、ジェイバーが頷く。

ただ、その顔が若干強張っている気がした。



「ジェイバー? 疲れたの?」


あまり接客が得意でないジェイバーだ。

たくさんの来客の相手が大変だったのだろうか。



「いえ」


ジェイバーは首を振り、それ以上何も言わなかった。

ただ、嫌な予感がするのだ。

根拠がないのに不安がらせるわけにいかないのでリリーには話さなかったが、漠然とした胸騒ぎが、黒く心に燻っていた。







その2日後。



余った材料でさつまいもスイーツを再びこしらえたリリーは、宣言通り北の砦に届けに行くことにした。


「リリー、もう行ける?」



かねてから、王国きっての腕利き集団であるディアマン公爵家私兵の訓練場を見学したいと言っていた王子もついてくることになり、朝、公爵家に訪ねてきた。


リリーと王子は勿論馬車旅だが、ジェイバーとオリバー様は馬で並走する。


「行ってきまぁす」



今回はリリーのゲットしたゴムで作った緩衝剤を備えた特製馬車の初めての走行だった。

いつもよりお尻が痛くならない、快適な旅になりそうだ。

甘い匂いのする焼き立てスイーツをありったけ籠につめて、幸せの馬車は走り出した。


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