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196.秋の実り⑤

それからしばらく経ち、季節は冬に差し掛かっていた。



王国は、パレット王国からの食料支援により、この冬をなんとか持ち堪えられる算段がついた。

お礼には、チーズやバターなどの乳製品を安価で交易することになっている。



リリーは先週届いて領主に配給されたさつまいもを使って、スイートポテトを作っていた。


さつまいもを蒸して潰し、細かな網で裏ごしをする。

それに新鮮な朝採れ卵と牛乳、フレッシュバター、きび砂糖を入れてよく混ぜる。


それを長丸くまるめ、さつまいもの皮を器にして盛り、卵黄を塗って黒ごまをちょっと乗せた。


今は第3陣を作っていて、第2陣は今丁度焼き上がった所だ。第1陣はほど良く冷めている。



第3陣をオーブンに入れると、完成したスイートポテトをいくつか持って屋敷の皆の元に届けた。

屋敷じゅうに甘い匂いが漂って、うすうすお裾分けを期待していた皆は喜んで受け取った。




「おいしー!! 甘くてコクがあって…

これが、芋…!?」


芋といえばじゃがいもなクルール王国において、甘い芋のお菓子は予想外だったようだ。

総じて好評だった。



スイートポテトの他にもベイジルとジニアに手伝ってもらって大学芋や蒸しパン、焼き芋、芋羊羹、さつまいもプリン等を大量に作った。



午前中には全て完成し、庭に出したテーブルに所狭しと並べたり詰んだりして飾りつけた。




※  ※  ※




「美味しい!!」

「フワッフワ!!」

「甘〜い!!」



ディアマン公爵家で開かれたサツマイモガーデンパーティーには、たくさんの人が訪れていた。


平民も貴族も招待し、さつまいもを楽しんでもらうための催しだ。

各料理のテーブルにはレシピを印刷した紙を置いていて、自由に持ち帰ることができる。



各家庭にさつまいもを配給されたものの、いまひとつ使い方が分からないという街の声を聞いて開催されたパーティーだった。


さつまいもの素朴な甘みと魅力に、パーティーに訪れた人々は驚き、賞賛をし、帰ってぜひ料理をしてみると喜ばれていた。 


皆が喜ぶ顔を見ながら、次々と料理の補充をしているリリーはひとまずほっとしながら、成功を喜んでいた。




「やぁ、盛況だね」


後ろから声を掛けられて振り返ると、エルム王子とオリバー様が歩いてきていた。

王子にはこの催しについて事前に伝えていたので、様子を見に来たようだ。



「あら、エルム王子」


リリーの声に会場が大きくざわめく。

王族と平民が同じ空間にいることなんて、ほとんど無いのだ。王子を見たことすらない領民はどうして良いか困惑し、手が止まっている。



「皆、気にしないで。今日はリリーの友達として、手料理を味わいに来たんだ。皆も秋のめぐみを存分に楽しんでほしい」


そうニッコリ笑えば、



「「「キャーーー!!」」」



金髪翠眼のイケメン王子の柔らかな微笑みに、多くの少女はハートを撃ち抜かれたようだった。



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