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168.王女と剣技の練習②

ところで、リリー父は軍務大臣で、リリー兄は騎士、シエル様の父様が近衛師団の総帥、シエル様の兄様が近衛騎士隊長だ。



いったいそれぞれはどんな関係性で、役割としてどのような構成(担当)かというと、

戦争などの有事に敵兵と最初に相対する軍務を担うのは、基本的に兵士だ。

彼らは戦術によって団編成は変わるが、基本的に4団に別れている。

訓練内容は、個々の剣術や体術、体力作り、馬を操る馬術は勿論のこと、敵兵を囲み込んだり、戦線を移動させながら誘導をスムーズにできるような演習と、野営を安全に行うための技術、寝ながらもベースの緊張を解かない練習も行う。

基本、団体で行動する。

軍務大臣であるローレンスをトップとし、団長が4名いて、この前のラピス公国使節団の送別会で同席した人は、その団長の一人だった。

兵士になるためには、体力や筋力テストさえクリアできれば、貴族でも平民でも良い。

給料も良いので、就職口としては良いし、内部は完全な実力主義だから差別は無い。



騎士は貴族が就く職業で、基本的な職務としては、警察官や警備員に近い。

街の駐在や、王城の門、国境要所の検問などは、その土地を治めている貴族の家門・家系から輩出された騎士がなることが多い。

団体行動よりは個人行動が多いので、訓練内容は馬術と個人技の習熟が中心になる。

騎士の中で、王族を護衛するのが近衛騎士であり、腕前も然ることながら、王族との応対に失礼が無いよう品格や教養も重要とされる。

この、近衛騎士団は、王様専属、王妃様専属、王子専属、の3隊に分かれている。

その3隊をまとめているのが、近衛師団総帥のシエル様父、3隊のひとつである王様専属の騎士隊長が、シエル様兄となる。



クルール王国の軍備、警護はそんな分業になっている。

ちなみに先日のラピス公国のトゥシュカ様の視察は、このシステムやそれぞれの訓練内容や設備についてのものだった。



騎士の中には、平民が交じる兵士を、野蛮だとか品が無いと軽んじる者がいるし、

兵士の中には、騎士は実力がなくても家の力で成り上がれるお坊っちゃま職業と馬鹿にする者がいて、とにかく騎士と兵士は仲が悪かった。

ただ、軍務大臣に公爵(1番偉い貴族階級)が就いたことで、表立っての諍いは減ったらしい。




というわけで、騎士の訓練場に、軍務大臣であるリリー父が来ることは、かなり異例の事態なのだ。



「リリーが王女と剣術の練習をしていると聞いて、つい見に来てしまったよ」


デレっとリリーに笑いかけた後、周囲の騎士達を視線で殺す。


それまで、かわいこちゃん達がキャッキャしながら打ち合ったり組み手をする様をほんわかしながら眺めていた騎士たちに、一気に戦慄が走った。



「今は、アングール王女に、組み手を教わっていました。アングール王女はすごいんですよ!

私、こんなに楽しいの、初めてです」

リリーがにこにこ笑いながら父様に報告する。


いつの間にかエールトベール王女とピンゼル様はいなくなっており、既に別の場所に出掛けたようだった。

彼らは、それぞれに護衛がついているし、王城の中であれば、自由に出入りできる。

おおかた、ピンゼル様がエールトベール王女を王城案内に連れ出したのだろう。

出会い方はアレだったが、年の近い2人は案外気が合うようだった。




「ほほう、そういえば、王女とリリーは同い年だったんじゃないかな。

リリーは小さい頃は家から出られなくて、友達も作れなかったから、ぜひ仲良くしてやって欲しい」


氷点下の視線から、急激に他所行きの父顔になってアングール王女に微笑みかけた。



「ええ、こちらこそ。

昨日の晩餐会で、見事な立ち回りを拝見したので、ぜひお友達になりたくて、今日はご無理を言いましたの。

私も、仲良くして頂きたいです」


アングール王女もにっこり笑ってそれに応える。



「さて、剣術の練習を見せて貰おうか。

私は、リリーが剣技をしているなんて、最近まで全く知らなかったからな」



それは、ひた隠しにしていましたから!

とは言えないので、曖昧に笑って、再び王女と向き合った。

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