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163.誕生日パーティ②

王子との挨拶回りとファーストダンスはそつなくこなし、特訓の成果を噛みしめる。

もうダンスの練習をさぼるのはやめようと心に誓いつつ、カーテシーをして観衆に応える。

リリーの後に踊ろうと、ギラギラしている令嬢群にその場を譲って、飲み物ブースに向かった。



慣れないダンスと社交にへろへろのリリーは、よく冷えたノンアルコールカクテルに手を伸ばす。


「リリー!」


と、ピンゼル様がリリーを見つけて走り寄ってきた。


「やっとリリーに会えたぁ!

僕、ちょっとダンスも練習してきたんだ、踊ろうよ」


リリーの手を引き、ホールに出ようとしている。

あぁ、私の桃色カクテル…!


内心渋々ではあったが、意外とピンゼル様とのダンスは緊張もなく楽しく踊れた。


音楽が、華やかなワルツから静かなものに変わったタイミングで輪から抜け、今度こそ飲水タイムだとしけこんだ。



「はー!! これ、美味しいねぇ!!」

ピンゼル様が気に入ったのは、子どもが大好きな定番、オレンジジュースだ。


そういえば、この世界に来て初めて飲んだな。

さわやかな甘みが、疲れをとってくれるような気がする。

ビタミン!!って感じだ。



「お気に召されましたか?」


オレンジジュースに舌鼓を打つ2人の前に現れたのは、アングール王女とエールトベール王女だった。



「はじめまして、リリー様、ピンゼル様。

私はパレット王国の、アングールと申します。


そちらは"オレンジ"という果実で、我が国から持参致しましたの」



なるほど、オレンジはまだ一般的ではないのか。


「はじめまして、アングール王女様。

ディアマン・ブロン・リリーと申します。

お会いできて光栄です。

こちらのジュースは爽やかで大変飲みやすく、美味しいですね」


リリーが素直に褒めてお礼を言えば、


「はじめまして、アングール王女様。

マティータ・ピンゼルだよ!

美味しい果物をありがとう。

ぜひ、ジュースになる前の花や実の形や大きさを見てみたいな!」


ピンゼル様も挨拶をする。


すると、アングール王女が後ろを振り返って手招きをした。

おずおずと、エールトベール王女が前に進み出る。



「昨日は、エルが失礼を致しましたでしょう?

ご迷惑をお掛けしました」


アングール王女が、後ろで小さくなっているエールトベール王女の肩をポンポンと叩いて目を伏せる。



「…?  あぁ、いえ、全然大丈夫ですよ。

むしろ、ご案内したのは王子ですし、私は何も」


リリーは両手を振って否定する。


「まぁ、王子の手まで煩わせたのね。

困った子」


困った子と言いながら、エールトベール王女の頭を撫でているアングール王女は、怒る様子は無く、とにかく優しい雰囲気だ。


「ごめんなさい、お姉様」


エールトベール王女は素直に謝り、


「そっちにも、、悪かったわね」


リリーとピンゼル様にも微妙に謝った。



そこからは、オレンジや、その他の珍しい果物について盛り上がっていると、エルム王子がやってきた。



「はぁっ… 疲れた。 次から次に、だったよ」


明らかに疲労の色を浮かべているので、レモンスカッシュを手渡す。

ああ、オレンジジュースの方が良かったかしら…



しばらく一緒に休んだが、今日のパーティの主役は王子だから、あまりゆっくりもできないらしい。

それならばと、


「アングール王女、久しぶりに踊らないかい。

君の足さばきに、ついていけるか分からないけど」

来賓をもてなすのも王子の務めだ。

王女をずっと壁の花にはしておけないので、ダンスに誘うことにした。



王子は、頷いたアングール王女の手を優しく引いて、ダンスホールにいざなっていった。

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