159.誕生日パーティ前①
王城に着き、滞在する部屋に案内される。
持ってきたたくさんの荷物を整理してから、コンサートホールに向かった。
そこでは、あいも変わらず王立オーケストラの皆が練習を行っていた。
「リリーさん」
顔を出すと、オークリーさん(バイオリン奏者でコンマスの)が声をかけてくれる。
「誕生日パーティでは、今度こそリリーさんの歌が聴けるから楽しみだよ。
せっかくあんなに練習したんだものね」
ふふふと笑いながら、リリーの頭をポンポンした。
「音合わせは、明日だ。
喉の調子を整えておくように」
ぶっきらぼうながら、気遣いの声掛けをしてくれたのはノーテさんだ。
王立オーケストラは、立食中のバックミュージックや、ダンスタイムの時の演奏、リリーの歌唱披露の伴奏と、またもや大忙しなのだ。
2人とも、すぐに持ち場に戻って練習に加わった。
「明日は宜しくお願いします!」
リリーは他の奏者の皆にも笑顔で挨拶をし、ホールから出た。
そのまま王城内を歩いてエルム王子の執務室に向かう。
会うのが難しければ、オリバー様に無事に王城入りをしていることを伝えて欲しいと言ったが、結局王子は出てきた。
「リリー! 長旅お疲れ様! 体調は大丈夫?
ドレスは気に入ってくれた??」
やはり王子といえど誕生日は楽しみなのか、テンション高めのお出迎えだ。
「はい。素敵なドレスを、ありがとうございました。
裾の繊細なレースが、とても可愛いです」
リリーがお礼を言うと、王子も嬉しそうに破顔した。
その日の夜は晩餐に誘われた。
王様から、『トゥシュカ公子にリリーちゃんをとられてしまうか心配した』だの、王妃様から『女性があのような剣技をするのは危ないから、今後は控えなさい』だの助言を頂き、若干居心地が悪かった。
しかし、クレム王子(9歳)から、『(劇が)すごく楽しかったよ。リリーすごいねぇ』と可愛く褒められれば、頑張ったカイがあったものよと嬉しく思った。
「誕生日はパーティには、大陸の王族を招待している。
ラピス公国はもちろん、パレット王国の方も参加予定になっているんだ。
ラピス公国は誰が来るのか知らないが、パレット王国は王女が参加予定だそうだ。
カルトン共和国にも招待状は出したが、何も音沙汰がないので、多分不参加だと思う」
王子が、招待客のリストをみながら説明してくれる。
へー。
公国は誰が来るんだろ?
案外、マティータ大公直々にだったりして…
パレット王国は、四国でいう所の高知県に位置する国だ。
クルール王国より南側で暖かく、気候は穏やからしい。
同じ王政の国でありながら、パレット王国は女王制だそうだ。
まだ国外の友達はいないため、もしかしたら、王女と友達になれるかも?などと少し期待をした。




