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143.真相と告知③

王子がリリーを真っ直ぐ見つめて話す。


「リリーとは、小さい頃から婚約者として時を過ごし、定期的に交際をしていた。


幼少期には、本当に熱を出しやすく体調を崩しがちで、僕と会う時間も、かなり無理をして作っていることは分かっていた。


いつからだろうか、顔色が変わり、少しずつ元気になっていく君の様子に気がついた。

多分、丈夫な身体になるために、たくさん努力をしているだろうことも。



僕はそれは…


僕のためだと思っていたんだ。

その頃から、病弱な君は婚約者として相応しくないと言う貴族が多くいたから、それを知った君が、婚約者として、王子妃になるために相応しくあろうと頑張っているんだと、そう思っていた」



なんと!

リリーはビックリしながら聞いている。



「それがただの自惚れだと気づいたのは、リリーの11歳の誕生日が過ぎた頃だ。

いつものお茶会の席で、以前とは比べ物にならない健康的な顔色の君が、"自分には王子妃は難しい"、"婚約を考え直すならば受け入れる"と言い出したからだ。


だいぶ元気になりつつあるのに、病弱を理由に婚約を白紙に戻そうと言うならば、健康を取り戻そうとした理由が、僕にないのだと、気づいたんだ」



うっ…

申し訳ないけど、本当にその通り…



「焦った僕は、観劇に連れ出したり、買い物を共にしたり、プレゼントを送って君の気を惹こうとした。


その頃の僕は、正直な所、リリーに好かれたいと思ってはいたけど、父様から任されている婚約者という立場を全うすることに頭が向いていて、恋愛感情はあまり無かったと思う」



それはそうだよね。

12歳だもん。

しかも月イチしか会えない、ひ弱すぎる女子では、惚れる機会もないよね…



「今回、ラピス公国の皆様が来訪されるにあたり、リリーにはだいぶ無理をさせた。

君は晩餐会の余興を立派に果たすために、僕と観た劇団に弟子入り(?)をしてまで声楽や舞台歌唱の力を伸ばし… 熱を出して倒れる程に根を詰めた。

そんな努力家の所を、再認識してから気づいた。


自分で決めたら、とことん前向きに取りくむ意志の強さ。

頑張り屋さんな所。


少しとは言えないワガママを言う公子に、正面から向き合う包容力、優しさ。


街で突然襲われたり、予想外の事態に見舞われても、的確に状況判断をして物怖じせず立ち向かう度胸…


この数週間の間に、僕は本当に、どうしようもなくリリーに惹かれてしまったんだ」



王子は真っ直ぐ向けていた瞳をすこし反らして伏せてから、



「だが…」


悔しそうに続ける。


「対して、僕はほとんど無力だ。

ピンゼル様の真意、ご希望を汲むこともできず、禄な対応ができない。

悪漢に襲われても手足が震えて動けない役立たずだ。

剣術、体術の授業では、優秀だ優秀だと褒め称えられ続けていたのに、実践では全く役に立たなかった…」



テーブルの上の拳は震えている。



「僕には、リリーに好かれる要素は何もない。


でも、諦めたくないんだ。

僕はまだ幼かった、世界を知らなすぎたと思う。

けれど、今からでも必要な技能を身に着け、君を守れる男になると誓う。

勝手だが、それまで待って貰えないだろうか…


リリーに、惚れられるような立派な男に、きっとなってみせるから…!」



王子の、初めて見る熱を帯びた視線に射抜かれて、リリーは何も言うことができないでいる。


別に、王子のことは嫌いじゃないし、ヘタレとか思っていない。

ただ、どちらかと言うと、仲良しの友達の立ち位置なのだ。

こんな曖昧な気持ちで、一国を背負うであろう王子の婚約者を続けて良いのか、本当に分からないのだ。


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