124.王城への帰還
「いえいえ、僕は最後少しを手伝っただけだよ。
ここに転がっている彼らのほとんどにお仕置きしたのは、リリーさんだからね」
トゥシュカ様がいたずらっぽく笑った。
はぅっ…!!
やっぱりカッコいい!!
じゃなくて、
「ピンゼル様も、ご無事で何よりでしたわ」
再びリリーにひっついているピンゼル様の頭を撫でながら、
「心配致しましたよ」
と言った。
「ごめんなさい、リリー」
わんぱく小僧はなりを潜めて、叱られた仔猫のようになっていた。
リリーは過度に擁護?はせず、黙って背中をぽんぽんとして、手を添えた。
今回は無事だったが、今後は分からないから、危ないことは危ないと、ちゃんと知っておくべきだと思ったのだ。
悪漢の後片付け(?)はオリバー様とジェイバーが真っ最中だ。
この世界に治外法権があるのか分からないが、この悪漢達をノトスの街に引き渡すべきか、一緒に連れ帰って良いかを警備隊に交渉している。
少なくとも、護衛A、Bは王城所属の騎士だから、できれば連れて帰って背後関係を洗いたかった。
とりあえず事態は収束し、緊張の糸がほどけたリリーの笑い声が響く輪を眺めてから、エルム王子は目を閉じた。
さっき言いかけた言葉は、結局言えなかった。
本当は、何もできず婚約者に戦わせてしまった醜態を、地に額をついて謝って、盛大に落ち込んで、むしろ逃げてしまいたかった。
でも、そんなことをしてもリリーは困った顔をするだけだろう。
何のためにもならない。
そんな謝罪は、多分自己満足だ。
慰めて欲しいだけの甘えだ。
自分はこの昏い気持ちを忘れず胸に刺し置き、その上で今後を変えなければならない。
目を開けた王子は、皆の輪に加わって、何も無かったように
笑った。
※※※※※※※※※※※
王城に帰り着いた時には、さすがに夜になっていた。
今から公爵邸に帰るのは良くないと、リリーも王城に泊まることになった。
リリーと夜も朝も一緒と知ったピンゼル様のテンションは爆上がりだった。
「では、彼らのことは僕に任せて欲しい。
今回のことが何故起きたのか、きちんと調べて皆に報告する」
王城で晩御飯が終わって解散の時、王子が皆に言った。
「そうだね、それくらいは役に立ってほしいよね」
まだまだ空気の読めないピンゼル様が地雷を踏み抜き、今日はお開きとなった。




