103.晩餐会①
リリーの席は重鎮の子女席だった。
つまり、今日出席している重鎮を親に持つ子供達の席だ。
だから、ローズ侯爵令嬢、シエル公爵令嬢と同席だった。
他に2人知らない子が一緒だったが、知り合いが同じテーブルというだけでだいぶ違う。
「久しぶりだね」
シエル公爵令嬢は、今日もドレスでなく騎士服で、涼し気な目元が乙女心を掴んで離さず、やはりあちこちから黄色い声が聞こえた。
「今日は歌を披露するのだってね。また君の歌を聴けるのは楽しみだよ」
「伴奏をするのが私じゃないのが残念ですが、応援していますよ」
シエル様もローズ様もガッツポーズでそう言って下さるので、やはり嬉しくて気合が入った。
参加者が席に着くと、ファンファーレが鳴り、晩餐会の開始の合図が響き渡る。
オーケストラの演奏もボリュームを上げ、王族の入場を待った。
最初に会場へ足を進めたのは、多分王様だ。
エルム王子に雰囲気は似ているが、あまり背は高くなく、目はくりくりしていて、鼻の下にthe王様という感じのヒゲが生えた優しそうな方だった。
その次に会場に入ったのは、王妃様だ(と思う)。
王妃様はスラッと細身で背が高く、イブニングのマーメイドドレスが超絶似合う美人さんだった。
多分、エルム王子は、母親似かもしれないと思った。
その後に、エルム王子、弟のクレム王子が続いて入場した。
エルム王子は、リリーに気付くとニコッと笑いかけたが、自分に向けての笑顔と勘違いした少女達まではにかむことになった。
王族の方々は席の前に立ったが座らない。
待っていると、先程とはまた違うファンファーレが鳴り、ラピス公国の方々が入場された。
「ラピス公国第2公子、トゥシュカ様」
「ラピス公国第3公子、ピンゼル様」
「ラピス公国外務大臣、カポル様」
…
次々に入場され紹介を受け、皆会釈をする。
リリーの席からは少し遠いのと、会場が薄暗いので、公子の顔まではしっかり見ることはできなかった。
「皆の者。今宵はお集まり頂きありがとう。
我が隣国であるラピス公国の皆様が、今日からしばらく我が国に滞在されることになった。
今日はその、初めての夜を記念して晩餐会を開くことになった。
充分ではないが簡単な食事を用意したので、飲んだり食べたりしながら、今日は他国の大使達とも親睦を深め、両国の絆を深めよう。
また、今日は大変光栄なことに、公国の公子が来られている。
年の頃はまだ御若いが、大変な秀才で賢い方々と伺っている。皆もよく話し、他国の見識や文化を学ぶ良い機会にして欲しいと思う。
この交流会で、両国の関係性がより一層強くなることを願っている」
王様が開会の挨拶をした。
乾杯の合図はエルム王子だった。
皆でグラスを合わせ、乾いた喉を潤す。
乾杯が終わると、一礼して着席した。
大人はワインだが、リリー達は勿論ジュースだ。
大人達はウロウロと席を移動していて、既に情報戦の火蓋が切られたようだが、リリー達子供には関係が無いので、しばらく食に集中することにした。




