黒いソファ
目を覚ますと同時に全身を激痛が襲う。
いくら頑丈なコックピットにAスーツを着ていたと言っても、あれだけ攻撃を受けていれば身体にもダメージを負っていたようだ。
顔をしかめながら起き上がると現状を確認する。
薄暗い部屋。
黒いソファに俺は寝かされていたようだ。
一応白い布のようなもが掛けられていた。わりと黄ばんでいるので使い古された物のように見える。
「起きたか?」
椅子に腰掛けていた女性がこちらに気づき声をかけてきた。
声に聞き覚えがある。
ゴブリンの群れの中から俺を救い出してくれた女性のモノだ。
「すみません。起こしましたか?」
彼女の声が少し眠たげだったので、寝起きかと思い謝る。
「いや、テレビを見ていて少しウトウトしていただけよ」
テレビを見ていたというがモニターは見当たらない。
自分用に目の前に表示していたのだろう。
「助けてくれたんですね。ありがとうございます」
「助けるつもりはなかったんだけど。けど、生きていた以上見殺しにする趣味もないし」
「そ、そうですか」
「まさかあんなにゴブリンタイプが集まっているとはね。私も驚いた」
「確かに。そうですよね。正規隊はいったい何があったのでしょうか」
「さぁね。で、アンタはあそこで何やってたの?」
あったことを話す。
思い出しただけでも悲しくなるが。
みんな死んでしまった。
早瀬さんは逃げられたのだろうか。
俺のことを自分が逃げるための囮に使った早瀬さんを、恨む気持ちと同時にどうしても心配の念が湧き上がる。
「そうか。それは災難だったね」
「ところでアナタはいったい、、、」
「そういやまだ名乗ってなかったな。私は、今はトーカで通している。アンタと同じ正規隊が撃ち漏らしたエムズを狩って暮らしている。ただアンタと違い一人でだけどね」
「個人で? そんなこと、、、」
「最近はエムズの数も少しずつ増えてきていると言われている。ただ、政府の予算は限られていて正規隊も予算が厳しいみたい。そこで、エムズを倒した時の報酬も増えてきているのよ。おかげで私のような一人でエムズ退治をしている奴も増えてきた」
「そんな話、初めて聞きました」
「ニュースとか見ないの? それに本職なんだからそういう話しもあるでしょう」
「、、、」
「なかったのか。あんまし良い職場じゃなかったのかもね。だから急な状況変化に対応出来ない」
「、、、」
「あっ、悪いわね。つい」
「いえ、大丈夫です。本当のことですから」
「まぁいい。お腹空いてるでしょう? せっかく作ったけど冷めちゃったわね。温め直してくる」
そう言って彼女は立ち上がると、テーブルの上に置いてあった皿を手に取って部屋の隅にあったキッチンへと向かう。
皿にはケチャップソースのかかったスパゲティが盛られているように見えたが、よくわからなかった。
「ありがとうございます。優しいんですねトーカさん」
「さっき言ったように、目の前で誰かに死なれると目覚めが悪いだけよ。だから、明日の朝には出て行ってね」
「、、、はい、すみません」
彼女の背中に俺はそう答えた。