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カエルの子  作者: おしぼり
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ワーム

 真っ暗な宇宙空間に光が飛ぶ。

 連続するそれらは、空間を切り裂き奴らへと吸い込まれていく。

 ワームと呼ばれるそれらは、ぱっと見はイモムシのようだが、全長は5メートルほどあり表面は戦車の装甲のように硬い。

 しかし動きは遅く、恰好の的だ。

 攻撃性はあるので放置しておくと危険だが、攻撃方法もまとわりついて噛む、消化液を出すくらいしかないので、こちらの機動性を活かして翻弄しながら弾丸を撃ち込めば怖くはない。

 ワームはエムズの中でも一番弱い種類とされている。

 そんなワームは、隊長や先輩たちが乗る『ギャラクシオ』の敵ではない。

 エムズには従来兵器ではほとんど対抗出来なかった。唯一効果があったのが核兵器くらいである。

 そこで各国は急いでエムズに対抗できる兵器開発を始めた。もちろんそこで最初にエムズに有効な対抗兵器を作ることが出来れば大きな利益を得られると、各軍需企業は考えただろう。

 そこで生まれたのが人が乗って戦う、全高約6メートルほどの人型兵器である。

 その有用性が認められると、我が国最大手となるトヨモト重工も社を上げて人型兵器の開発を行う。

 我が国は昔から、他国が開発した物の類似品を作るのが上手である。

 そして生まれたのがこの『ギャラクシオ』だ。

 それはすぐに正規宇宙防衛隊に配備され多くの戦果を上げた。

 しかしそんなギャラクシオも今では化石扱いされている。

 俺たちの乗っているギャラクシオは軍の払い下げ品である。

 しかし、それでもワーム相手なら十分に戦えるが。


『何やってんだ、ボン! もう終わっちまったぞ』


「すみません」


 俺はまたボソッと返事をする。

 ボンとは俺のことだ。ボンクラのボン、育ちの良いボンボンのボン、どうせすぐにやられてBonと爆発して死ぬだろうという意味のボン。どれが本当かはわからないが、全部本当なのだろう。

 ちなみに俺の家柄は良くはない。ただ育ちの良い家の子供みたいに行儀が良い、つまり大人しいからそれをバカにして言っているのだ。

 大人しいといっても、彼らに何か反論でもしようものならこぶしが飛んでくるので、大人しくしておくしかないというのが本当のところだ。

 今、通信してきたのが号田さん。この隊で一番気性の荒い人だ。


『さぁお前ら、ワームどもも片付いたし帰るぞ。今日もきっちり取れるもんは取っとけよ』

『りょーかい。おいボン! お前が一番働いてないんだから、お前が一番回収して戻って来いよ』

「はい、わかってます」


 回収とはワームの死骸のことだ。奴らの身体は地球にはない未知の物質で作られている。そのため、持って帰って売ればいくらかの金にはなるのだ。

 といってもエムズが地球圏にやってきてからはや半世紀。その未知の物質により科学もかなり進歩したが、それと同時にエムズの死骸の価値もかなり下がってはいた。

 隊長と号田さんは、ある程度回収するとさっさと帰ってしまう。

 俺も回収用のネットを広げると、そこに四散したワームの殻を詰め込んでいく。


『大丈夫か? 俺も手伝うよ』


 1機のギャラクシオが近づいてくる。

 同じ隊員の早瀬さんだ。早瀬さんはとても優しく、いつも俺のことを気にかけてくれる。

 ギャラクシオの操縦も上手だし、俺に丁寧に操縦法を教えてくれたのも早瀬さんである。

 早瀬さんがいなければ俺はとっくに死んでいただろう。


「いつもすみません、早瀬さん。ありがとうございます」

『いいよ、腹減ったろう。さっさと終わらせて帰って何か食いに行こう』

「はい」


 そうして俺たちは、ネットに詰め込めるだけ詰め込むと、輸送機へと戻った。


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