静かな作戦
ヒュージが地球圏へさらに迫ってきていた。
連合艦隊は結集し、最後の作戦へと望む。
俺たちの乗るグリフィン号はそこから少し離れた場所にいた。
先日、正規隊の星川さんがやってきた。
彼は当然今回の連合艦隊によるヒュージリザード討伐作戦の概要を知っていたが、成功するとは思っていないようだった。
そこでエリカさんの助言を受けにやってきた。
彼自身、地球の命運を掛けた戦いを成功させたい、地球を守りたいという気持ちはあるのだろう。
だがエリカさんも、そこで彼女が何かを言ってどうなることでもないことはわかっているようだった。
ただでさえ各国の宇宙艦隊が結集して作られた連合艦隊。足並みを揃えるのは至難の業だ。そこへエリカさんが何か作戦を立てたところで採用されるわけないし、横槍を入れたらそれはただのジャマでしかない。
それでも何とかヒュージを倒したい。そんな思いから今回俺たちはここにやってきた。
「トーカさん本当に1人で大丈夫ですか?」
『大丈夫よ。心配いらないわ』
そう言ってグリフィン号の格納庫から出撃する。
トーカさんの胸元には巨大なカバンのようなものが付けられている。
そして背中のスラスターを切ると、今度は非常に薄い膜のようなものが展開する。
『ソーラーセイル、無事展開出来たわ』
「オーケー、確認した。あとは太陽風に乗って少しずつ加速していくはず」
エリカさんが答える。
エリカさんが立てた作戦はこうだ。
ほぼエムズの残骸を利用して作られたトーカさんの機体ならヒュージに認識されずに接近することが出来る。
そこでこっそりヒュージに近づき内部に入り、星川さんがどこから用意したのか、核爆弾を設置し内側から破壊するというものだ。
グリフィン号で近づくとバレる可能性があるので、かなり離れた場所から向かう。その時にトーカさんの機体ではエネルギーが足りないので節約のために太陽風を受けて加速するソーラーセイルを使用しようということになった。エネルギー噴射のないソーラーセイルならば更にエムズたちに気づかれる可能性は減る。
もちろん今回の作戦は、連合艦隊の作戦が失敗に終わった場合にのみ行う予定だ。
そして残念なことに、先ほど星川さんから作戦決行の旨を知らせる暗号通信が送られてきた。
「トーカさん。やっぱり俺も行きますよ。一緒連れて行って下さい」
『必要ないよ。今回は戦闘にならないようにするのが作戦。重武装は必要ないからタッドの出番もない』
「でも、こんな危険な作戦をトーカさん1人でなんて、、、」
『危険なのは今までもこれからも一緒。大丈夫、帰ってくるよ』
「絶対に帰ってこいよ。じゃないと、タッドがどうなっても知らないからな」
アイラさんは俺の首に腕を回しながらそう叫ぶ。その時、アイラさんの涙が俺の顔を濡らす。
『どんな人質だよ。わかってるアイラ、タッドをよろしく頼む。じゃあみんな、行ってくるよ』
そう言って静かに艦から離れていくトーカさんの後ろ姿を俺たちは黙って見送った。




