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カエルの子  作者: おしぼり
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遠出

 俺たちはまた宇宙の海へとやって来ていた。

 だがいつものガーデンの近くではない。

 遠く離れた場所。

 もしそこに火星があるのであればきっと火星があったであろう場所。

 というのも今火星はここからだと太陽の反対側にある。

 そのくらい遠くまでやってきたということだ。

 なぜ俺たちがこんなところにまでやってきたのかと言うと、それはエリカさんの仮説によるものだった。

 その話は数日前、トーカさんのいる格納庫で話し合われた。


~格納庫~

 

「エムズは一箇所からやって来ている」


 エリカさんのそんな一言から話は始まった。


「それはどういうことですか?」

「そんなことはないだろ? 奴らは地球のありとあらゆる方向から攻めて来ている。まるで地球が囲まれているかのように」


 俺の疑問にアイラさんが続ける。

 そしてそれにエリカさんは疑問で返してきた。


「ならなぜ奴らは一斉に攻めてこない? この星を取り囲んでいるのであれば、一斉に攻めて来る方が効率がいいだろ? こちらの兵力も分散できる。まあ実際には人類にまとまりなどなかったから意味ないがね」

「それは、でも最近は結構攻めてくるスパンが短いですよ?」

「そこがミソなんだよ」

「ミソ?」

「なぜ奴らは約50年もの時間をかけてちょっとづつやってきていたのか。この星のあらゆる方面からやってくるのか」

「勿体ぶらずにはやく言えよ」

「わかったよ。この仮説は、エムズがやってきていた初期の段階で言っている人もいたんだがね。奴らは一箇所からやって来ている。きっと基地なのか工場なのか、そういうのがあるんだろう。そこからエムズたちは地球に向けてやって来ている。ただ地球は自転、公転しているんだよ。常に位置を変え、地球自体も回っている。なので一箇所からやって来ていてもまるであらゆる方向から来ているように見えるってことだ」

「なるほどな。タッド、お前その場でちょっと回ってみろ」

「えっ? アイラさん急になんですか?」

「いいから」


 俺は言われたとおりにその場でクルクルと回る。

 そんな俺にアイラさんは手元にあったあらゆるものを軽くポンポンと投げつけてくる。

 

「痛いですよ。何するんですか」

「なるほどな。当たる位置が違うということか」

「そう。そして最近その間隔が狭まってきた理由は、その基地ないしは工場がこの星に近づいてきているということだ」

「距離が近くなったからエムズの侵攻の間隔も早くなったということですか?」

「そういうことだな」

「じゃあその基地だか工場だかを潰せばエムズはもうやってこないってことか?」

「そういうこと」

「じゃあさっそくぶっ潰しに行こうぜ」

「できるわけないだろ? 敵の本拠地だぞ? どれだけの戦力があるのかわからん。そんな場所に我々だけで向かうのは自殺行為だよ」

「じゃあどうするんですか?」

「星川に連絡をとったよ」

「あぁあの正規の胡散臭いオッサンか」

「情報局の人でしたっけ?」

「そう。確か正規宇宙防衛隊情報本部情報部部長だったかな。かなり興味を持ってくれたけどね。だが正規隊では調査出来ないってことだった」

「なんでだよ。戦争が終わるんだろ? 調べるべきだろ?」


 アイラさんが声を荒げるがエリカさんはそれをまあまあと制する。


「そこで、私たちに調べて来いと言ってきた」

「調べてこいって、さっき自殺行為だって言ってたじゃないか」

「そうそれをお役人はやれと言ってきたんだよ。我々民間人にな」

「無茶苦茶ですね」

「しかしそうでもない。作戦内容は簡単。私がエムズの基地があると思われる場所に、我々で向かい調査するだけ。もしエムズの基地を発見出来れば多額の報酬を約束してくれた。もちろん発見するだけで戦わずに逃げ帰ってくればいい」

「なるほどな。でもどうやっていくんだよ。今の装備だけで行くのか?」

「そこで正規隊の保有する長距離航行に耐えうる戦闘艦を1隻貸してもらえることになった。旧型艦だが偵察して帰ってくるには十分だろ。もちろん燃料と食料、ある程度の弾薬も用意してくれる」

「それで私たちだけで行けってか」

「大型艦だからな。いくら艦のシステムをオートにしたところで我々だけでは心もとない。エムズの基地に近づけばエムズと接触する回数も増えるだろうしな。そこでヒカリやアリスにも協力を頼もうと思う。ヒカリの会社の社員がいれば人手も足りるだろうし、あの二人が居ればある程度の戦力にはなる」

「どうしますか、トーカさん?」

『、、、まぁいいんじゃない?』


 その一言により話はまとまった。


~ブリッジ~


 この長距離航行艦にはグリフィン号という名が名付けられた。

 トーカさん率いる俺たち、株式会社野いちごのメンバー、そしてアリスさん。バラバラの俺たちが長期間滞在する艦ということで、当初、色々な動物が混ざり合った神話上の生物であるキメラから名前を取ってキメラ号と名付けようとエリカさんが言い出したが、そのキメラのイラストを見たヒカリさんが可愛くないと猛反対し、トーカさんが提案した同じく神話上の生物で鳥と獅子のキメラであるグリフォンから名前を取ることになった。

 ここに至るまで、幾度の戦闘が繰り広げられたがトーカさんヒカリさんアリスさんの前では敵ではなかった。

 またエリカさんの提案で迂回ルートを取ることでエムズとの接触を減らし、わりとすんなりと目的地へとやってきた。


「やっと見つけた。おそらくこれだな」

「ホント?」


 エリカさんの声にヒカリさんが反応する。

 そしてみんなが集まってくる。


「大勢でこっちに来るな。今映像を出す」


 ブリッジの中央に巨大なウィンドウが出現し何かが見える。

 しかし暗い宇宙空間で黒い何かがあるようにしか見えない。


「これがエムズの基地なんですか?」

「おそらくな」

「なんか細長いわね。もっと要塞っぽいのを想像していたけど」

「これ何かに似てる。物語にでてくるドラゴン、とか」

「そうだなアリス。その例えがしっくりくるかも」

「ドラゴンってことはこいつもエムズなのか? 基地じゃないのかよ」

「いやおそらくこいつが基地だ」

「ドラゴンの形をした基地ってことですか?」

「そういうこと」

「なんか弱っちそうだな。私たちだけで倒せるんじゃないか?」

「何を言っているんだアイラ。宇宙空間にあるからわかりづらいけど、全長100Kmあるからな」

「100キロ? ガーデンより全然デカイじゃん」

「そう。こんなものが地球圏にやってきたらガーデンの1つや2つは一瞬で破壊されるだろうな」

「こんなのが外宇宙からゆっくり地球に向かってきていたってことですか?」

「そういうことになる」


 俺の質問にエリカさんが答えると、ブリッジの中は静まりかえってしまう。

 そこでトーカさんの声がスピーカーから聞こえた。艦の格納庫にいたトーカさんも俺たちのやり取りを見ていたのだろう。


『とにかく私たちの目的は完了したわ。この情報を持ち帰ろう』

「はい、そうですね。今回の作戦の目的はあくまでもエムズ基地の発見ですから」


 そしてグリフィン号は急速反転し、その進路を地球へと向けた。


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