酒盛り2
目を覚ますと、薄暗い部屋の中に俺はいた。
ソファに横になって寝ていたようだ。
誰かがかけてくれたのか身体には薄い毛布が掛けられている。
お酒をたらふく飲んだからか頭が少し痛い。
そんな頭を押さえつつ立ち上がるとトイレに向かい用を足す。
戻るとエリカさんとアイラさんが仲良く同じ布団で寝ているのが見える。二人が同じ布団で寝るなんて普段では考えられないがこれも酒の力なのかもしれない。
アリスさんは帰れたのだろうか。
ヒカリさんはおそらく社員の人たちが連れて帰ったんだろうなと想像する。
「トーカさん。トーカさんは、、、」
なんとなくトーカさんのことが気になり格納庫の方へと向かう。
暗い格納庫の中には巨大なトーカさんが横たわっている。
俺は電気も点けずにトーカさんの方へと歩み寄りその冷たく硬い肌に触れる。
これもセクハラになるのだろうか。
そんなことをふと思う。
「なんか喉が渇いたな」
そうつぶやくと部屋へと戻ろうとする。
そこで何か物音に気が付く。
「誰かいるのか?」
ひょっとしてアリスさんやヒカリさんがまだ残っているのか?
もし誰かまだ残っていて、格納庫の中で酔いつぶれて寝ているとかだと風邪をひくかもしれない。
物音のした方へと近づく。
そこで何かが飛び出してくる。
俺は何が何やらわからず、気が付けばそれに押し倒されていた。
男だ。
俺よりも少し大きな、屈強な男。
手には何か刃物のような物が見える。
俺は必死にその腕だけを押さえ付ける、が、押し負けそうである。
「えっ、お前は!?」
男の声だ。
その瞬間に相手の力がフッと抜ける。
俺はその隙に抜け出すと距離を取る。
だんだんと目が慣れてきて相手の姿が少し見えてくる。
「アナタは、、、ひょっとして早瀬さん?」
「お前、ボンか」
その相手は早瀬さんだった。
前の会社の先輩で、いろいろ面倒を見てくれて、最後には裏切られた、あの早瀬さんだった。
「早瀬さん。どうしてここに?」
「お前こそ、なんでこんなところに、、、生きてたんだな」
「早瀬さんこそ、、、生きてたんですね。今は俺、ここでお世話になってるんです」
「そうか。そうなんだな」
「早瀬さんはいったい、、、」
「俺は、、、こういうことだよ」
早瀬さんは手に持ったナイフを見つめ、くるりと回すともう一度構え直す。
「こういうことって。わからないですよ!」
「わからないのか? 兵器泥棒だよ。こういう倉庫を見つけては忍び込んで人型を中心に盗んで売りさばいている」
「そんな、、、なんで、、、」
「なんでかな。俺でもわからん。でも、あれ以来エムズと戦うのが怖くなってしまったんだ。だがエムズと戦うことしかしてこなかった俺には他にやれることが無くてな。幸か不幸か以前あんな仕事をしていたこともあって同業のことはある程度覚えていたからな」
「じゃあかつての仲間を中心に盗みをしていたんですか?」
「仲間でもないさ。そういうもんだってわかるだろ?」
「わかりませんよ。でも、確かに当時は俺もそう思っていたのかもしれません。でも今は、今の俺にはそれはわかりません」
「そうか。仲良くやっているんだな」
「、、、はい」
「タッド? 何かあった?」
その時、アイラさんの声と共に明かりが点く。
そこで早瀬さんの顔がはっきりと見える。少しやつれているように見えた。老けたな、そんな印象だった。
そんな早瀬さんが動く。
そしてあっという間に俺の腕をつかむと後ろに回り首元にナイフを押し当てる。
「動くな」
「何だお前は」
「動くなよ」
アイラさんがこちらに駆け寄ろうとするが、その動きを止める。
「アイラさん待って下さい。早瀬さん、やめましょうこういうの」
「俺は、お前を置き去りにした時に何かが変わったんだ。俺は、俺は変わったんだ」
「早瀬さん、、、」
「おわっ!」
そこで早瀬さんの拘束が解ける。
早瀬さんは宙へと浮いていた。
「何だ!? なんで人型が動いている? 誰か乗っていたのか?」
「トーカさん!」
トーカさんが早瀬さんを掴んでいた。
『悪いが女の寝込みを襲うのはタッド一人で十分なんだ』
「えっ、タッドひょっとして。アンタもやっと男になったのか?」
「いやアイラさん違います」
何かよくわからない誤解が生まれる。
てかひょっとしてトーカさんは最初から起きていたのか?
そこでサイレンの音が聞こえる。
「警察も来たみたいだな」
エリカさんが眠たそうにあくびをしながら入ってくる。
エリカさんが警察を呼んでくれたようだ。
格納庫へと入ってきた警官たちはトーカさんに少し驚いたが、トーカさんが降ろした早瀬さんを拘束した。
早瀬さんは俺の方を見ると、何も言わずに俯き警官に連れて行かれる。
「ちょっと待ってください。早瀬さん、俺は変わったって言いましたよね? じゃあまた変われますよ。何度だって変われます。今度はいい方に変わりましょう」
早瀬さんは一瞬立ち止まり、黙ってそれを聞くとパトカーの中へと入る。そして窓越しに見えた早瀬さんの口元が動く。
「生きてて良かった」
そう言ったように俺には見えた。




