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カエルの子  作者: おしぼり
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酒盛り

 どうして、ひと仕事終えた後に飲む酒はこんなにも美味しいのだろう。

 本当に不思議な飲み物だと思う。

 その味自体は変わらないはずなのに、その場の雰囲気、状況、体調、誰と飲むか、何と一緒に飲むかによって変わってくる気がする。

 人もそうである。髪型や服装を少し変えるだけでまったく印象が変わるし、誰と一緒にいるかでも変わってくる。

 もちろん酒を飲んで酔っ払うと変わる人だっている。

 今まさにそういう状況である。


「ようタッド、飲みが足りないんじゃないか。そら飲め飲め」

「そうよ。もっと飲みなさい」

「は、はい」


 そう答えるのが精一杯だった。

 アイラさんは俺の肩を抱くように腕を回し頭を撫でてくる。そしていつものように大きな二つの胸を肩へと押し当ててくる。

 そして反対側には長い赤髪を後ろで束ねた可愛らしい少女。ヒカリさんだ。

 黄色いがウサギモチーフの可愛らしい機体。まぁハンマーは無骨だったが。

 無線での可愛らしい声から可愛い方なんだろうなという印象は持っていたが、本当にこんなに可愛い方だとは思わなかった。言われなければどこかのアイドルのようにも見える。

 こんな人が会社の社長で、人型兵器に乗り、巨大なハンマー振り回してエムズ相手に大立ち回りしているというのが考えづらかった。

 そしてそんな彼女がお酒に酔って、髪色に近いくらいに顔を真っ赤にして俺に絡んでくるというのも想像していなかった。


「ちょっとアイラさん。タッドにくっつきすぎよ」

「いいじゃねぇか。私たちはいつもこんな感じだよなぁ?」

「そっ、そうですかね」

「ほら。なんならお前だってくっついてもいいんだぞ? それとも自分とこの社員の方がいいか?」

「別に。私はそんなのそこまで興味ないし」


 そう言うとヒカリさんは手にあったグラスの中のお酒をグッと飲み干すと、少し照れたように俺のことを見てくる。


「じゃあ、手、握ってもいい?」

「えっ? はい、いいですけど」


 すると彼女の細い指がするっと俺の指の間に滑り込んでくる。


「意外としっかりしているのね」

「まぁ重労働ですから。荒れてるだけですよ」

「まぁコイツにこき使われてるからな」


 アイラさんの目線の先にはトーカさんがいる。

 トーカさんの返事はなかった。眠っているのか、いや関わり合いたくないだけだろう。

 ここは実は格納庫の中だ。

 モビーリア撃破を祝して飲みに行こうとアイラさんが言い出したのだが、ヒカリさんが機械の身体になったトーカさんのことをみたいと言い出して、結局ガーデンまで戻っくるとトーカさんの横にテーブルやら椅子やらを並べ、買ってきた酒とつまみで打ち上げが始まった。

 メンバーは俺、アイラさん、ヒカリさん、トーカさん、そして目の前には少女がいる。

 青髪の少女はアリスさんだ。

 身体が小さいから大きな機体に乗るんだと彼女は言っていた。その言葉からも小柄な少女をイメージはしていたが、こんなにも小柄、というより幼く見える少女が乗っていたとは思わなかった。

 こんな少女がどういう経緯でエムズと戦うことになったのか気になるところではあるが、彼女は先ほどからずっと無言でこちらを見ているだけだ。

 酔っ払った大人に呆れているのだろう。

 そんな彼女がやっと口を開く。


「まさか本当に機械の身体になってるとはね」

「そうよねアリス。なんか馬鹿にでもしてやろうと思ってきたのに、こんな姿見せられたら何も言えなくなっちゃった」


 二人もしんみりとトーカさんのことを見上げる。


「でもトーカさん。そこまで不都合はないって言ってましたよ。むしろこの身体を少し楽しんでいるようにも思えますし」

「まぁなかなか経験出来ることじゃないしね」

「ところでアリス、ちゃんと飲んでるの?」

「飲んでるよ。お茶をね。私未成年なのわかってる?」

「じゃあもっと食べなさいよ。食べないと大きくなれないわよ」

「別に大きくなりたいとも思わないし」

「大きくならないと男にモテないわよ」

「別にモテたいとも思わないし。でも、タッドはやっぱり大きい方がいいの?」

「えっ、いや。別にそういうのは考えたことないですかねぇ」

「おいタッド、大きい方がいいんだろ? 素直になれよ」

「別に大きさなんて気にしないわよね? やっぱり女は可愛さと性格よね? あと私には経済力もあるし」


 急にアイラさんとヒカリさんから責められる。

 トーカさんに助けを求めようと見上げるが、トーカさんは置物のようにウンともスンとも言わない。

 

「ずいぶんと盛り上がってるな」

「エリカさん! お帰りなさい」


 モビーリアの解析のためにヒカリさんのところの社員さんたちと宙域に残っていたエリカさんが帰ってきた。

 

「社長! ただいま戻りました!」

「むさくるしいのがこっちくんな!」


 そんなやり取りを見ながら、俺は心底助かったと思った。


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