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カエルの子  作者: おしぼり
15/34

新種

「何なのよコレ」


 端末からはトーカさんの、今までに聞いたことのないような驚きとショックを纏った声が聞こえてくる。


「どうしたんですか? トーカさん?」

『こっちへ来るな。今すぐ引き返して、タッド』

「何があったんだトーカ!」


 アイラさんの叫び声に応えるようにトーカさんから映像が送られてくる。

 

「これは、、、」


 そこには多くの機体の残骸と、それに群がるエムズたちの姿があった。


「これはいったいどういうことだ?」

「おそらく正規隊の機体だね。全滅したってことか」


 アイラさんにエリカさんが答える。


「なんで正規隊が? そうそうやられる連中でもないでしょ? それに見えている範囲にいるのはワームと少数のゴブリンくらい」

「そうね。でも正規隊はやられた。ということは何かあるってことよ。いい? トーカ。アンタも早く戻ってきなさい。何があるかわからないわ。危険よ」

『そうね。でも、もう見つかったみたい』


 トーカさんはライフルを狙撃タイプに切り替えると、狙いを澄まして撃ち始める。

 ここからではエムズに当たっているのかどうかがわからない。

 

『大丈夫だ。このくらいの数なら1人でも何とかなる。みんなは今のうちに逃げなさい』

「トーカさん!」

「タッド。言うとおりにしよう。今の私たちに出来ることはない」

「くっ、わかりました」


 ギャラクシオがあれば。そうすれば俺もトーカさんと戦えるのに。いや、逆に邪魔になるのか。

 そんなことを考えながら船体を後退させていく。


『うん。射撃精度もいい。問題なく戦えるよエリカ』

「そうか。それならよかった」

『これなら何とかなりそ』


 そこでトーカさんとの通信が途絶え、送られてきていた映像も消える。


「えっ? 何?」

「今調べるわ」

 

 エリカさんが端末を操作し始める。


「通信エリア外に出たのか?」

「いやまだそんなには、、、」


 俺はアイラさんの問いに答える。


「トーカの機体の信号も受信しなくなった」

「そんな、、、じゃあトーカさんは、、、」

「でも、これはトーカがやられたってわけではないみたいだ。これは何かのジャミング?」

「ジャミング? いったい誰が何のために?」

「知らないよそんなこと」


 俺は若干、アイラさんに怒られた感じになる。


「どうしましょう。迎えに行きますか?」

「行ってどうするんだ。さっき言っただろ。私たちに出来ることはないって。待つしかないよ」

「、、、はい」


 それからどのくらいの時間が経っただろう。

 先程まで俺のことをイジってきていたアイラさんもさすがに無言だった。

 エリカさんが、何をしているのか端末を操作する音だけがブリッジに響く。

 そして宇宙空間が映されたモニターだけを眺めながら一時間ほどが過ぎた。


『もういいわよ。迎えに来て』

「トーカさん?」

「無事だったのか!」


 突然のトーカさんの通信に俺とアイラさんは喜び抱きしめあう。


『もう燃料も弾薬も空っぽ。私もクタクタで一歩も動けないわ』

「わかりました。今すぐ向かいます」

「タッド。座標はこれ。ここに向かって」

「はい」


 エリカさんはトーカさんの機体から発せられた信号を調べ座標を割り出す。

俺はその座標を入力しそこへと向かう。


「しかしよく無事だったな。全部倒したのか?」

『なんとかね。そして原因もわかったわ』

「ほぉ、それは興味深いね。いったい何があったんだい?」

『エリカ、喜びな。原因はコイツ、新種だ』


 トーカさんのカメラに映し出されたのは見慣れないエムズだった。

 

「人型に鳥の羽?」

「ハーピィか」

「エリカさん何ですそれ?」

「神話上の生き物さ。手足が鳥の人間の化け物みたいなやつ。歌を唄い人を惑わすって言われている。そいつが犯人ってことは?」

『コイツ、口から謎の音波のようなものを出して通信エラーを起こすんだ』

「なるほどね。正規隊の機体は、今はすべて基地からの遠隔操縦になっている。それで動かなくなったところをワームやゴブリンにやられたのか」

『そういうこと。直接機体を動かしてる私には関係なかったわ。通信機は使えなかったけどね』

「じゃあひょっとして、最近大量のゴブリンに襲われることが多かったのって」

『おそらくコイツの仕業ね。コイツのせいで正規隊が全滅。ほとんどエムズが倒されないまま放置されていたのね』


 そうか。前の会社で俺たちがやられたのもこのせいだったのか。


「でもなんで正規隊はそれを知らせてくれないんですか?」

「おそらく市民の混乱を避けるためだろ。もしかしたら正規隊自身まだハーピィのことをわかっていない可能性がある。エムズ討伐に向かった正規隊が全滅。しかもその原因もわかっていないってことを公表したら、みんな不安になって街中が大変なことになるだろ?」

「確かにそうですね、アイラさん」


 じゃあ前の会社のみんなが死んだのも俺が死にかけたのも、トーカさんが機械の身体になったのも全部政府が隠蔽していたせいなのか。そう思うとかなり複雑な気持ちだ。


「でもこれでハーピィってのを倒せたので、平和になったってことですよね?」

『何言ってんの。1体とは限らないでしょ』

「そうだ。早くそのハーピィを解析して対抗策を練らないと。トーカ? もちろんハーピィの死骸の状態は大丈夫だろうね?」

『あー、うん。たぶん、、、』

「ダメそうだね」


 エリカさんはため息をついた。


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