灯火
宇宙に浮かぶ星々を眺める。
輸送船のコックピットも基本的にはギャラクシオと同じ全面モニターだ。違うのはシートが2つ並んでいることくらいか。
艦橋と聞くと艦の正面や上部などにあり、巨大な窓ガラスから外を見られるイメージだが、複数台のカメラから映し出された映像をモニターに表示できるため、そんな目立つところに配置する必要がない。
ギャラクシオのコックピット同様、安全な中心部に配置されている。
操作もギャラクシオに近く、空間上に表示された電子モニター類から操作できるため、すぐに覚えることが出来た。
そんな空間に浮かぶモニターの1つ、黒い背景にトーカとだけ表示されたものから音声が聞こえる。
『連中がきた。火を入れる』
「了解です」
彼女が話すと、トーカの文字が少し発光して話していることを示す。
トーカさんのところに来て、やっていることは一緒だ。正規隊が撃ち漏らしたエムズの撃破。
ただ前の会社は、そういう会社として登録されていたので正規隊の作戦行動なんかの情報が、すべてではないのだろうけれどある程度は送られてきていたようだ。そこで指定された宙域に移動して連中が来るのを待っていた。
トーカさんは個人でそれをやっているが、会社として登録しているわけではないのでそういう情報は送られてこない。
だがそれをどこからともなくキャッチしてそこに赴いていた。
彼女に聞いたが「とある筋からの情報」としか教えてはくれなかった。
『的が見えた。数はワームが5。少ないわね。これより作戦行動に移る』
「了解です。ご武運を」
トーカさんとの通信時のモニターに彼女の顔も表示するのはどうかという話をしたのだが、恥ずかしい、気が散る、必要性を感じないという理由から却下された。
彼女が真剣な顔で戦っている姿はカッコイイので出来れば見てみたいと思ったのだが、彼女にその気はないようだった。
『数が増えた。これはゴブリンか?』
「トーカさん? 大丈夫ですか?」
『あぁ、問題ない。数が少ない。それにワームの数が少なかったので弾も油も残っている』
「了解しました。気をつけて下さいね」
少しイヤな予感がしたがおそらく大丈夫だろう。
俺が多くのゴブリンにやられそうになった時、たった1人ですべて倒して俺を助けてくれたんだ。少々のことで負けるトーカさんじゃない。
しかし本当に最近、ゴブリンの数が増えてきている気がする。
何が起こっているのだろう。
しかし、エムズの襲来は俺が生まれる前からの話で、しかも徐々にではあるが年々数が増えてきているという話だ。
俺が生まれる前と比較してもその数は倍近いと聞く。
またエムズ側に何か変化があるのかもしれない。
『作戦終了。すべて倒したわ。他に敵影なし。あとはよろしく』
「了解です。向かいます」
船を前進させる。
向こうからトーカさんの機体が戻ってきた。
船を停止させると、俺はポッドに移動し船の外へと出た。
「あれ、トーカさん? ダメージ受けてますか?」
『ちょっと不意を突かれただけよ。問題ないわ』
「そうですか。ゆっくり休んでくださいね。あとは俺がやっときますんで」
そういうと俺は手早くエムズの死骸回収を始める。
前の会社の時とは違い、トーカさんはエムズの倒し方も綺麗である。無駄がない。
少ない手数で確実に仕留めている。
なので回収も楽だ。
大きな部分に関してはそのまま回収する。
あとは細かい部分だが、エリカさんが先日くれたリストの情報は頭に叩き込んでいる。それを目安に選別していく。
彼女のくれたリストには、価値の高い部位と低い部位が書かれていたのでそれを下に回収していく。
それにより大幅に効率が上がった気がする。
「ふう。今日はこんなもんかな。トーカさん戻ります」
返事はなかった。
もしかしたらもうすでに寝ているのかもしれない。
あと輸送船の中には簡易のシャワー室もある。シャワーを浴びていて聞こえていない可能性もある。
俺は気にせず、船へと戻った。
遠隔でハッチを開き船の中へと戻る。
トーカさんの機体が見える。
あれ? コックピットのハッチが開いていない?
トーカさんはいつも機体のハッチを開きっぱなしにする。
閉じてるなんて珍しい。
俺はエムズの残骸の入ったコンテナを置くと回収ポッドから降りる。
そしてトーカさんの機体ハミングバードへと近づく。
ハッチを外の開閉スイッチを操作して開く。
「トーカさん!?」
そこには今だにシートに座るトーカさんの姿があった。
俺は近づき彼女のヘルメットと自分のヘルメットを接触させる。
彼女の荒い息が聞こえてくる。
「どうしたんですか? トーカさん!」
「タッドか。大丈夫よ。ちょっとやられただけ。処置はしたから」
「そんな、、、」
なんで異変に気付かなかったんだ。
異変にさえ気づいていれば、エムズの回収なんてやらずにすぐに船をガーデンに戻して医者に見てもらうとかできたのに。
トーカさんもなんで言ってくれなかったんだ。
すべてが悔やまれる。
「とにかく部屋に行きましょう。医療キットがあります。ちゃんと見ましょう」
「そうね。でも、ちょっとしんどいかも。少し休ませて」
「トーカさん? トーカさん!」
俺の腕の中でトーカさんは動かなくなっていった。




