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カエルの子  作者: おしぼり
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加工品

「アイラさんとは仲良いんですか?」

「そう見える? 仕事上の付き合いよ」

「へぇ」


 こちらに顔も向けず目も閉じたまま答えるトーカに、それ以上話を続けられなかった。

 行き先は、トーカさんがトラックに入力してくれていた。ほぼ自動で動くため、俺はほとんどやることがない。

 なんなら俺が要らないまである。

 

 結局俺はトーカさんの下で働かせてもらうことになった。

 といっても機体はトーカさんの1体しかないので、俺はほとんどやることがない。

 そこでトーカさんは安物の作業ポッドを買ってくれた。

 輸送船に乗り、エムズの出そうな宙域に出向くとトーカさんがそれを狩る。俺はそれが終わるまで輸送船の中で待機、終わったらポッドで出ていってエムズの死骸で金になりそうな物を回収するといった感じだ。

 トーカさん一人だと、機体のエネルギー残量の関係もありあまり回収できないが、俺が加わったことで回収量もかなり増えたと思う。

 トーカさんも心なしか喜んでいるような気がした。これで少しでも力になれれば追い出されることもない。

 部屋は前のところを引き払って、トーカさんの家の物置部屋に布団を敷いて寝ている。

 はやく部屋を見つけて出て行けと言われている。

 しかしトーカさんの住んでいるマンションは高いし、近場で安い集合住宅を探しているがなかなか見つからない。時間がかかりそうではある。

 別にトーカさんから離れたくないからわざと探してないわけではない。断じてない、つもりだ。

 あとトーカさんは俺にタッドというあだ名を付けてくれた。

 かつて水中工作員のことをフロッグマンと呼ぶことがあり、人類が宇宙に進出した時も宇宙の海に潜るという意味で、人型兵器のパイロットをフロッグマンと呼ぶ人もいたそうだ。そして、かつて新米の水中工作員のことをフロッグマンの子供という意味でタッドポールと呼ぶ習慣があり、そこから未熟者という意味で俺はタッドと名付けられた。

 かなり不名誉なあだ名だが仕方ない。ボンとどっこいどっこいだ。

 はやく一人前のパイロットになれるよう頑張るしかない。まずは機体を手に入れるところからだ。

 ちなみにトーカさんの機体は隣国AM社のハミングバードという機体だ。トーカさんの話では、ギャラクシオより小回りが利いてパワーがあるらしい。耐久性や不具合が多少多いらしいが、そこは改良と日々のメンテナンスで対応しているらしい。

 

 そんなことを考えていたら、目的地に到着したようだ。

 工場? お店? 無骨な建物の横にジャンク品のような物が積まれている。


「トーカさん、着きましたよ」

「あぁ」


 眠っていたようだ。

 眠気まなこをこすりながらトラックを降りる。

 俺もそれに続いて降りる。


「ようトーカ。待ってたぜ」


 サングラスを掛けたイカツ目のおじさんが現れる。彼が店主だろうか。


「積荷を頼む」

「おう」


 グラサンはそう言うと、端末を操作し始める。するとトラックは勝手に動き建物の横に積荷を下ろした。

 センサーによる自動制御だ。

 

「今日は多いな」

「新入りが入ってな」


 トーカさんが俺を指差す。それに合わせて俺は慌てて頭を下げる。


「こいつの分も稼がないといけない」

「あのトーカが。珍しいね。まぁ頑張んな兄ちゃん。あと、あいつならいつもみたいに奥にいるぜ」

「わかった。いくよタッド」

「あっ、はい」


 今日は挨拶回りのような感じなのか。

 俺たちの乗ってきたトラックが自動で駐車スペースに移動するのを横目で見ながら建物の中へと入っていく。

 

「あらトーカちゃんこんにちは」

「どうも」


 椅子に座って編み物をしている女性がいた。先ほどのグラサンの奥さんだろうか。こんな金属の匂いしかしない場所に明らかに場違いな雰囲気を漂わせるおっとりした感じだ。

 

「あの子なら奥よ」

「失礼します」


 そう言って彼女の横を通り過ぎる。俺も軽く会釈してトーカさんに続いた。

 建物を抜け裏に出る。そして先程より一回り小さい建物へと入る。


「よう先生。元気してるか?」

「トーカか。久しぶりだな。あんまり顔を見せないから死んだと思ってたぞ」

「あんまりってそうでもないだろ。数日だよ」

「そっか。部屋にこもりっぱなしだからな」


 何か作業中の背中はこちらを振り向く。

 それは作業服を着た短髪メガネの少女だった。

 髪は自分で切っているのか毛先が揃っていないように見える。部屋も散らかっていてかなりずぼらな性格なのかもしれない。

 作業服は、サイズが合っていなかったのか袖や裾を縫い直した跡が見えるが、かなり綺麗に直されているので、もしかしたらそれは先ほどの女性が繕ったのかもしれない。


「珍しいな。男連れか」


 みんなにそれを言われる。やはりトーカさんが誰かといるというのが相当めずらしいようだ。


「先日話した奴だよ」

「あーあの子か。結局面倒見ることにしたんだな」

「まぁ成り行きでね」

「ところで今日の成果はどうだ? 珍しいのあったか?」

「いや、いつもどおりだ。ワームだけ」

「そうか。この間のゴブリンはなかなか面白かったがな」

「そうは言ってもゴブリンも、もう市場にはちょこちょこ出回ってるだろ?」

「まぁな。だが美味しいところは政府が抑えちまうからな。トーカが持ってきてくれた物には、結構珍しいのもあったぞ?」

「そうなのか。よくわからないけど。とりあえず片っ端から持って帰ってくるし」

「だからだよ。もっと状態を気にして倒してくれないと」

「無茶言うなよ。こっちは命をかけてやりあってるんだ」

「まぁ無理にとは言わないけどね。トーカに死なれたらそれこそ新しい素材を得る機会が減る」

「そんなに珍しいのが欲しいなら、こいつに言ってくれ。一応、今は回収担当だ」

「そうか。なら後でリストを渡す。もちろん珍しいのがあれば高値で買い取るよ」

「彼女は?」

「あんたも前の会社にいた時はエムズの死骸を業者に売ってただろ? 普通は、その業者はその後研究機関なんかに売って研究されたりするけど、エリカは1人でそれをやってるんだ」

「そ。日用品からアクセサリーまでなんでもござれよ。ちなみにトーカの機体にも私が作ったパーツが使われてるよ」

「へーそうなんですか」


 エムズの死骸から作ったアクセサリーって欲しがる人いるのかなと疑問に思いながら答える。


「ところでトーカ、エムズの様子はどうだ?」

「今のところはいつもどおりね。この間のゴブリン集団が異常だったみたい」

「そうか。私も話を聞いた後すこし調べてみたが、あんなのは他所の宙域では確認されていないようだな。メディアも軽くしか触れてないところを見ると、政府が情報を抑えている可能性もあるけど」

「政府もまだ何もわかってないってだけでしょ。そんな状態で情報だけ出しても世間を混乱させるだけだし」

「まぁそうかもな。まぁまた面白い情報が入ったら連絡するよ。そっちも珍しい素材が入ったら頼むよ」

「それはこいつに言ってくれ」

「おう、よろしくな」

「はっはい」


 俺より年上なのだろうか。どう見ても年下に見える少女に俺は深々と頭を下げた。


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