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第七話:記憶

ーーーー世界の構築完了ーーーー

泉愛華アクセスーーーー90%・・・100・・・%

システム起動ーーーー間もなく覚醒します・・・


小鳥の可愛らしいさえずりが耳に響く。

朝の優しい日差しが愛華を包む。


「ん・・・・?」


目を覚まし周囲を見渡した。

自分の部屋・・・?だけどなんか違和感が・・・


ガバッと勢いよく起き上がるとそこは知っているようで知らない場所だった。


《泉愛華様、おはようございます。》


室内に響き渡る元気な女性の声。


《この度は幸せの世界に移住いただきまして誠にありがとうございます!》


その言葉で愛華は全てを思い出した。


《現在時刻は早朝5時36分となっております。これよりほんの少しだけお付き合いください。》


愛華は眠い目をこすりながら固まる。

「寝起きに重要っぽい話持ってこられるのちょっと厳しいかも・・・。」


《まずはこの世界の王・・・カイナ様との契約書はこの部屋の金庫に入っております》

「カイナ・・・様・・・?」

《不用意な持ち出しにはご注意ください、万一紛失等をなさいますとこの世界での永住権を失うことになります。》

「こわ・・・そうなったらどうなるんですか?」

《永遠の闇の中に取り込まれることになるやも知れません・・・。》


あまりの恐怖で眠気も吹き飛ぶ。


《続きまして・・・泉愛華様、旧望月愛華様の記憶についてのお取り扱いについてお尋ねします》


「はぁ・・・。」


《これまでの旧地球で過ごした11年間の記憶を全て消し去ることができますーーーー

 尚、一度消してしまいますとその時点で記憶が消滅するため

中止及び再生は不可能になりますのでご注意ください。

 全ての記憶を消して0からこの世界を楽しみたいなら消すのもありです、

もしくは過去記憶を背負ったまま違いを楽しむのもまた醍醐味・・・・》


そこまで言ったところで警告音が激しく鳴り響いた。


目の前には赤く ※DANGER 重要な選択です という文字が浮かんでいる。


《とても重要な選択です、一度アラームは消えますが時間制限等はありません、ゆっくり考えてください。》


「記憶か・・・望月家・・・学校での記憶・・・」


振り返れば振り返るほど愛華にロクな記憶はない。

先ほどの説明にもあったように全て消して0から楽しんでしまうのも良いのでは・・・?

愛華の中で様々な葛藤が生まれる。


そういえばそうこうしている間に時間は過ぎていくものなのだろうか?

時計を探す愛華。


《チュートリアルの途中なので現在時は止まっております、ご安心ください。》


まるで全てを見透かすように愛華を先導するナビゲーター

だが時が止まっているなら安心、愛華はしっかり考えることにした。


それからどれほど考えただろうか?

ようやく答えが出た。


「私、記憶を引き継ぎます。」


《・・・最終確認です、一度選択をしてしまうと取り消せません。よろしいですね?》


「はいっ!!」


《記憶の引き継ぎを完了しました》


「これでよかった・・・辛かったけどそれでもやっぱり・・・・それがあってこその今だから・・・

 何もかもを忘れてこの世界で生きるなんて・・・やっぱ無理だよね・・・。」


《チュートリアルが完了しました、それではこれより止まっていた時が動き出します。

 あとはあなたの自由・・・どうかこの世界を楽しんでください・・・!》


ナビゲーターは消えた。


部屋に取り残された愛華は一旦寝間着から私服に着替えることに。

「丸っきり違う家とか街にしても混乱するだけだしある程度元の街とか部屋に近づけておいてよかった・・・。」


そう、愛華は世界の構成自体はあまり変更を行っていなかった。

重要視したのは人々の心。皆に優しさを求めた。


数分後、しっかりと着替えた愛華は部屋を出ていつものモーニングルーティンへ・・・。


最初は厳四郎への挨拶、望月家のスタートはこれだ。


建物や部屋に大きな変化はない、よってその部屋の扉の重さもプレッシャーもそのままだ。


コンコン・・・

二回ノックをすると聞きなれた声が返ってくる。

「どうぞ・・・」


扉を開け深々と頭を下げる愛華。

「おじい様おはようございます。本日も学校に行って参ります・・・。」


いつも通りの挨拶、通常なら「ああ・・・精一杯励みなさい」程度の返答だ、変化は・・・?

愛華の心臓は期待からバクバクと跳ね上がる。


「おはよう愛華、元気かな?おじいちゃんもお仕事頑張るからのお・・・!」


にこにこと笑顔を向け腕をぐるぐると回す厳四郎。

愛華も自然とパーっと笑顔になった。


「(これだああああああああああ!!)」


その後元気いっぱいに厳四郎の部屋を出ると廊下で両親とすれ違う。


「おはよう愛華今日も元気だねえ、もう学校へ行くのかい?」

「笑顔がとっても素敵よ愛華、いつもあなたは私たちの宝だわ!」


ずっとずっとこんな世界があったらと望んでいた世界がそこにあった・・・。

愛華の目から暖かい光の粒がこぼれた・・・。

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