第六話:旅立ち
しばらく闇の中を上下左右も分からないまま愛華は歩いた。
どういう訳か自称妖精も「ここから先は君が好きなように生きなさい」と言い残し消えた。
「(やっぱり・・・騙されたの・・・?)」
不安になりながらも歩く、自分の選んだ道を信じるしかなかった。
それからどれほど歩いただろうか?
気が付くと突如闇の中で目の前に輝く文字が現れた。
《ようこそ!幸せの世界へ!ここからは僕、ハルオが案内するよ!》
「は・・・?ハルオ・・・?」
目の前に現れたのは小太りのおじさんのような人、見た目50代ぐらいだろうか?
でもどこか何となく鋭い眼光、体系が厳四郎に似ていた。
《まずはプレイヤーネームを決めてね!》
その瞬間、手元にはパソコンのキーボードのようなものが現れる。
「これで打つのかな・・・パソコンあんまり得意じゃないから・・・出来るかな・・・?」
ハルオが自分の周りをくるくると飛び回っている中愛華は覚束ない手でゆっくりとタイピングを。
この時愛華は望月の名を捨てるかとも考えていた。
「どうしよう・・・でもこの名前が私を苦しめてきたんだよね・・・・。」
そこでやはり名前を変更することにした。
「でもどうしよう何も思いつかない・・・。」
思い付く名前を必死に考える。
「鈴木・・・高橋・・・佐々木・・・ううーーーーん!」
考えれば考えるほど深みにハマる。
「あ!そうだ・・・お父様やお母さまから隠れて読んでた漫画のあの子の名前・・・!」
愛華はゆっくり朝比奈愛華と打ち込んだ。
すると・・・?
《このプレイヤーネームは既に使われています》
「ダメかぁ・・・じゃあこれなら・・・?」
次は胡桃愛華と打ち込む
《このプレイヤーネームは既に使われています》
「またダメかあ・・・」
負けじと思い付く名前を打ち込む
佐倉愛華
《このプレイヤーネームは既に使われています》
「もーーーーーーーーーー!」
早乙女愛華
《このプレイヤーネームは・・・以下同文》
どうやら愛華は自分の名前は気に入っているようだ。
そうして何度も何度も繰り返し結局落ち着いた名前は 泉愛華であった。
ようやく名前も決まり、次へと進む。
《泉愛華!ここからは君の理想の家族を作っていくよ!》
「理想の・・・家族・・・。」
ふとこれまでの人生を思い出した愛華は泣きそうになる。
その後、家族を決め友人を決め住んでいる場所、家・・・生きることに関わることをたくさん決めていった。
最後に決めたのは自分の顔や身長体重等の体系的な質問だった。
「よし、これで全部終わりかな?」
画面には《COMPLETE!これから泉愛華はこの世界の住人!幸せな生活を楽しんでね!》
それから程なくして謎の音楽と共に
《Now Loading・・・世界を構成しています、しばらくお待ちください。》
それからしばらく待っていると・・・視界は自然と暗くなっていった・・・。