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第三十話:傍観者

長い梯子を下り、地下に辿り着くとそこはまるで今でも使われているかのように

通路の上部に置かれた燭台の火が煌々と照らし明るい一本の地下通路が広がっていた。


「おいおい随分と明るいな・・・どうなってんだ?」


三人は周囲に警戒しながらも順調に進んだ。


しばらく歩いて、減は突然座り込む。

「敵、トラップ・・・毒ガスのようなものもない・・・今のところここが一番安全な区域だな、休憩だ。」

「だけどここが誰の手によって管理されているのかも分かってない以上・・・!」

修一も愛華を背から降ろし、ゆっくりと座らせた。


「ああ、警戒を解くべきではないだろうな・・・俺と君で順番に見張りをしよう、もっともこの閉鎖空間だ、足音の一つも聞こえる筈だから敵の感知は簡単だろうけどね。どの道我々はもう限界のところだ、無理に動いても仕方ない・・・炎龍のアジトまではまだ結構あるからな。休めるところでしっかり休んでおかないと破滅が目に見えている。」


減の言葉に納得した翔一もこの地下通路での休憩を決意し身体を地面に投げ出した。


「つっかれたーー!!しかしカイナって人も無茶言うぜ・・・。こんなグループ二つまとめるのなんて本当に可能なのか!?」

「カイナというのはあくまで役職名であってあの方の名前ではないよ・・・。」

「それってどういうことだ・・・?つまり別の本当の名前があるってことか?」

「そういうこと、カイナという言葉は《神》という意味だ。そしてあの方がお前達にそれを命じたのはただの暇つぶし・・・本当に出来るなんて思ってもいないし期待もされていないよ、残念だけどね・・・。最悪死んでくれたらラッキーと思ってるかもね・・・。」


減の言葉にさすがに気を落とす。

「マジかよ・・・期待されてるとばかり思ってた・・・じゃあこれが出来たら協力者として認めてやるっていうのも・・・?」

「ないだろうね、俺の時と同じ手口だよ。あの人はただ楽しみたいだけなんだよ、人が苦しむのを見てね・・・恐らく今も・・・。」


そういった瞬間のことだった。

目の前に突然光る球体が現れたのは・・・。


【随分ないいようじゃないか・・・阿久津千紘・・・!まさかこの二人とお前が合流していようとはなあ・・・。】


光る球体は徐々に人間の形となり、カイナが姿を現した。


「やっぱり俺達の動向を探っていましたか、であれば状況は分かりますね?」


【もちろんだとも・・・まさかお前が毒牙を抜けるとは予想外だったがなあ・・・!】


「そんなことはどうでもよいのです、あなたもこの町をどうにかしたいなら力を貸してくださいよ!この町があなたの思うようになれば少しはあなたを悩ませる諸問題も解消されるのではないですか?!」


【私が手を出すのは簡単だとも・・・だがなあ・・・いや、どの道この先は・・・ならば目をもう一度貸してやろう】


カイナの気まぐれで翔一と愛華の目にまたカイナの能力が戻った。


【愛華、翔一よ・・・お前達、元の世界に帰りたくはないか?そろそろ投げ出してもいいんだぞ?】


「待ってくれ・・・帰れるのか!?この世界から元の世界に!?」

「わた・・・しは・・・。」

「おい待てどういうつもりだこの二人はこれから・・・炎龍のアジトに・・・!」


【あぁ・・・帰れるとも・・・お前達がそう望めばな・・・!】


「最初は帰れないって・・・言ってたのに・・・何で急に・・・。」


【お前達の辛そうな顔を見て思ったのだ・・・あぁ帰してやらねばなと・・・最も、帰れるのは愛華・・・お前だけだがな。】


『!?』


「俺はやっぱり帰れないか・・・そりゃ、そうか・・・。」

「どうして翔一は帰れないの・・・ですか!?」


【簡単な話だ、既に死んでいるからだ・・・死んで元の世界に戻ってどうする?亡霊化するしかないだろう?元の身体ももうないのに。】


“そうだ・・・翔一は既に事故で・・・!!”


【その点お前は生きたままこっちに来た、ただそれだけの話だ・・・だから逃げられるとすればお前だけだ・・・。】


「(翔一を残してここを去れっていうの・・・!?)」


【ま、一つの提案だ・・・考えてみたまえ・・・!

それではな、千紘、愛華・・・翔一・・・私をこれからも楽しませてくれ・・・!】


そして球体に戻った光はそのまま消えていった。


「チッ・・・聞き逃したことはあるが・・・こいつらの目が戻っただけでも儲けもんか・・・!」


「あの・・・」


横になったままの愛華が減に声をかける。


「どうしたお嬢ちゃん、まだ具合でも悪いか?」

「いえ・・・そういうわけではなくて・・・」


もじもじとした様子の愛華は精一杯の大声で言った


「これからちひろさんって呼んでもいいですか!?」

「(くっそ・・・忘れてたこいつらいたんだ堂々と俺の本名を・・・!こうなっては仕方ないか・・・)好きにしろ。」


若干照れくさそうに減・・・いや千紘は言った。


「改めてこれからよろしくお願いしますね!千紘さん!!」

「俺からもよろしく・・・千紘・・・!」

「あ、あぁ・・・よろしくな・・・!」


こうして思いがけない目の復帰と共に明かされた減の本名。

より一歩近づいた気がした二人であった。


「今日はここで休むとしよう、時間から見ても外はもう暗いだろう・・・。」

「ベッドにしては硬すぎるが・・・ま、休めないよりはいいか・・・愛華もしっかり休め、吐いて体力使ったろ。」

「うん、さっきはごめんね・・・そうする、ありがと翔一・・・。」


「そういや君らって付き合ってんの?まだ小学生ぐらいだと思うけど。」


それを聞いた瞬間二人の身体は動揺し激しく動く。


そんな訳ないじゃないですか!翔一はただの元クラスメイトでイケメンで優しくてたまにかっこよくて・・・背中を見てると安心するというか・・・わかんないんですけど


そうだ!愛華はあんなクールだったけど本当の姿は普通の女の子で笑ってたりとか寝顔とかは結構可愛かったりもして・・・実は意外と頑固で気が強かったりもして・・・でも側にいると頼りになったり安心したりして・・・なんかよくわかんねーけど


 俺にとって

       《とても大切な人ってだけです!!》

 私にとって


「(それを好きというのでは・・・?まぁ、いいけど・・・)」


そうして敵の急襲にも気を付けながらのんびり夜は更けていった・・・。



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