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善人アプリ騒動記  作者: 美祢林太郎
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1-7 善人アプリの開発

1-7 善人アプリの開発

 「ねえ、少しぼくたちの仕事手伝ってくれない。別にやばい仕事じゃないんだ。女の子を見て、善人かどうかを百点満点で点数をつけて欲しいんだ。いや、いや、本当に怪しくないんだったら。

おれたち、これまでに誰も作ったことがない善人アプリというものを作ろうとしているんだ。協力してくれない」

 「いま暇だからいいわよ。それでどうしたらいいの」

 「えっ、さすが90点。ノリがいいな」

 「ちょっと見て。この善人アプリであの娘を測定すると善人度が87点なんだけど、きみは何点だと思う。100点満点だよ」

 「あの娘、意地が悪いと思うから40点くらいかな」

 「えっ、厳しくないの。あの美人だよ」

 「善人かどうかを測っているんでしょ。美人、関係ないじゃん。だから男は騙されるのよ。女なら誰が見ても彼女は50点以下ね。ちなみに平均は何点にしているの」

 「70点にしているんだ。では、あの女性は」

 「85点をつけてもいいんじゃない」

 「前の子と同じような美人にしか見えないけどな。いったいどこが違うんだよ」

 「この人はしつけがいいと思うわよ」

 「ここで、しつけという古風な単語が出るのかよ。それが出てきたら、おれたち0点だぜ」

 「一瞬でしつけまでわかるの? そんなばかな。それにこれはしつけを測定するアプリじゃないんだけど」

 「ああ、そうよね。しつけじゃないわよね。でも、親の教育がしっかりしていたら良い人に育つと思うわ。しつけと言ったから、誤解を与えたのね。とにかく彼女は良い子よ」

 「あくまで、顔つきだからね。身振り手振りや、全体から醸し出される雰囲気じゃないんだから。雰囲気は測れないからね。そこはわかってよ」

 「そうね。どうしても全体の雰囲気に惑わされてしまうわね。顔だけの写真で判定した方がいいと思うわ。どこかで座って写真を見ながらできないかしら。女性の写真のストックはあるの?」

 「あるよ」

 「じゃ、そこのスタバでどう」

 「いいわよ」


 「男バージョンはできてるの」

 「これこれ」

 「少し使わせて見てよ。これあなたたち二人で作ったの」

 「う、うん。まあ。おれがアイデア出して、こいつが設計したんだけど。こいつプログラミングの天才だから。

そんなに店の中の客を写さないでよ。やばいよ」

 「だいたいわかったわ。やっぱり、男と女では、異性に対するイメージが違うのね。互いに騙されるわけよ」

 「でも、それでいいんじゃないですか」

 「うん、それでいいのよね。世の中そんなに困っていないんだから。じゃあ、女性版に私の意見を反映する?」

 「是非ともお願いしたいね。その方が面白いと思うし」

 「じゃあ、始めましょう。彼女は70点、次も70点、次は50点」

 「アプリも50点だし、おれも50点でいいと思うよ」

 「では、この美人さんは30点でどう」

 「そんなに悪い人なの」

 「相当底意地が悪いと思うよ。彼女は小・中・高といじめる方だったわね」

 「そうなの。じゃ、30点にしておこう」

 「このかわいい子は40点」

 「やっぱり男は美人やかわいい子に弱いね。アプリは78点。アプリも騙されているね」

 「70点、70点、70点、70点、70点、70点、70点、70点、70点、70点、70点」

 「ちょっと待ってよ。いくらなんでも70点が続きすぎじゃない。もっとしっかり見てよ」

 「平均点が70なんでしょ。人間なんてそんなに違いがないわよ。私としては、人間はみんな10点にしたいくらいなんだけど、平均は70点なんでしょ。70点にした人はアプリの点を採用すればいいんじゃないの」

 「そうだけど」

 「この子は95点」

 「えっ、どれどれ。彼女、すっげえ美人じゃないの。こんな美人に95点もあげていいの。これまでの最高得点だよ」

 「私だって、美人やかわいい子を妬んで点をつけているわけじゃないのよ。いや、少し妬んでいるかな。でも、この子は良い子だよ。心根の綺麗な子だよ。いまも、きっと」

 「もしかしてきみの知り合いなの」

 「いや、いや、そうじゃないけど」

 「まあ、いいか。美人がみんな低い点だったら、男たちは利用しなくなるからね。こんな子もいないとね」

 「美人は、子供の頃から親や周囲にちやほやされるから、性格が歪んでくるのよ」

 「じゃあ、この子は」

 「ちやほやしてくれる親がいなかったんじゃないの」

 「不幸な生い立ちなの? 不幸な生い立ちだと性格が歪んで育ちそうに思うんだけど」

 「統計的にはね。でも、結局は自分次第なのよ。統計的、ということに逃げてはいけないのよ。マジョリティに隠れることは恥ずかしいことよ。人間は個人として気高く生きなければね。たとえ善人であってもね。

おっと、もう少しだから早くやってしまいましょう。こんなアプリが人の運命を左右するわけないんだから。あら、失礼。けなしているわけじゃないのよ」

 「いや、別にけなされたっていいんだ。ただ面白いアプリを作ろうとしているだけなんだから。再開しよう」

 「70、70、70、70、55、85、70、70、45、60、70、70、70、70、70、70・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「ごくろうさん。これで終了。きみがつけてくれた点数を参考にして完成させるよ」

 「男バージョンと女バージョンを分けるの」

 「分けないよ。そんな厳密なもんじゃない。おおざっぱだからいいんじゃないか」

「これ、きっと大ヒットするわよ。くだらなさがいけてるもの」

 「そうだろう。くだらないだろう。人に点数つけるなんて本来やっちゃあいけないことなんだ。だけど、だけど、みんな点数つけたがっているし、点数つけられたがっているんだ」

 「早く完成させてよ。みんながどのようにして遊ぶのか見てみたいわ」

 「そんなに急がせないでよ。とりあえず、手伝ってもらったお礼に食事をごちそうするよ。近くに美味しい餃子を食べさせる店があるんだ」

 「えっ、これだけ手伝わせておいて餃子なんだ。それじゃ、女の子にもてないわよ。フランス料理に連れて行ってよ」

 「それはこのアプリがヒットしてからね。アプリがヒットしたら、フレンチでもイタリアンでもどこにでも連れていってあげるよ。でも、そこの餃子の味は抜群だぜ。餃子は嫌いかい」

 「好き、好き」

 「じゃあ、行こう。大ヒットの前祝だ」


                                         つづく

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