謎の音
ふぉあんふぉあんふぉあん・・・
不気味に響く、音。
ふぉあんふぉあんふぉあん・・・
家にいると、たまに聞こえてくる、謎の音。
ふぉあんふぉあんふぉあん・・・
何の音なんだろう?
・・・。
あ、消えた。
「ねえ、なんか変な音が、しなかった?」
新聞を読んでいる母親に聞いてみる。
「ああ…あの音はね、UFOが来てるときに聞こえるんだよ。」
そうなんだ。
「UFOが来てるときにわがまま言うと、連れていかれるよ。」
気を付けよう。
「いつ来るかわからないから、毎日ずっと静かにしてるんだよ。」
私は、ずいぶんおとなしい子供に育った。
あれからずいぶん経って、大人になった今。
ふぉあんふぉあんふぉあん・・・
自分の家の冷蔵庫が呻っている。
たぶん子供のころ聞いた重低音も、きっとこれが正体なんだろうな。
…ただの冷蔵庫の音にビビってたとか。ふっ。
あの音が響くたびに仏壇の前に座っていたのを思い出す。
ピィィイイイ――――――――ン…
あ、この音は。
「やあやあ、こんにちは、」
「久しぶり、ビー玉持ってく?」
「いいんですか?ありがとう!」
本物のUFOの来る音、知っちゃったからねえ…。
「僕彗星の欠片持ってきましたよどうぞ!」
「いいの?ありがとう!」
「いえいえ!」
ふぉあんふぉあんふぉあん・・・
「あれ、これ何の音です?」
「UFOの到着する音…じゃなくて、冷蔵庫のため息ってやつだよ!」
「冷蔵庫もお疲れなんですね。」
ふぉあんふぉあんふぉあん・・・
「毎日労ってるから大丈夫!…あ、スイカ食べる?」
「いいんですか?ごちそうになります!」
スイカに塩をふって、宇宙人と一緒に、シャクシャク…ウマ―い!
いつの間にか、冷蔵庫の唸り声も止まった。
「おいしかったです!ありがとう!!また来ていいですか?」
「またいつでもいらっしゃい、いい旅を。」
ピィィイイイ――――――――ン…
本物のUFOは、軽やかな音をたてて、飛び去って行った。
ふぉあんふぉあんふぉあん・・・
私が長年UFOだと信じ込んでいた音が、再び鳴り始めた。
…最近よく鳴るんだよね。
・・・。
あれ。
冷蔵庫の唸り声が消えた。
冷蔵庫を見に行くと、機能がすべて停止していた。
寿命だったみたい…。
私は予定外の出費になるであろう事態に、頭を悩ませた。